表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他の転生者と共にいざ、音楽の旅へ行きませう  作者: 皆麻 兎
エルフの里・ドワーフの村編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/45

語らい

「皆さん、道中お気をつけて」

「エルフの長にも、よろしく伝えておくれ」

「あぁ」

「お世話になりました!」


ムジカ・デラフィーネの作曲者達の出身地である村の入口で、ノルズや村長が私達を見送ってくれた。


音魔法の適性があると見なされた私とスルタンは、ここ1週間ほどはノルズより音魔法を教わっていた。音魔法(これ)は今後の旅でいくら知っていても得する術であり、旅の最終目的である“ムジカ・デラフィーネの破壊”をするためにも絶対に必要な知識だった。そのため、ザックやマリアーノにとっては少し暇な1週間だったが、私やスルタンにとってはとても有意義な時間だったのである。


「村が…」

「うむ。客人(わしら)が去った事で、再び結界魔法が発動したのじゃろう」


村の入口を出てから後ろを振り返ると、そこに村の姿形は全く残っていなかった。

再び霧だらけの森に戻った事に対して、ザックやマリアーノが呟く。


 外界から存在を隠す理由が、なんとなくわかった気がする…


私は、深い霧を見つめながらそんな事を考えていた。

村で滞在中に知った事だが、あの村は元々“音魔法の聖地”ともいえるぐらい歴史ある村らしい。そして、音楽が重要となってきているこの世界において、音魔法は誰もが会得したい技術だろう。当然術者本人に適性がないと使えない魔法だが、魔族や魔物にとっては自分達の存在が脅かされないかと気が気でないだろう。

村を襲撃して滅ぼそうとする魔族や魔物がいても、おかしくない。また、音魔法はどうやら人族発祥の魔法のため、魔族や魔物は使えないらしい。そういった希少性があるからこそ、目隠しの結界魔法を使い、普段はその所在を知られないようにしているのだろう。


「さて。道草は食ったけど、同胞からの依頼は全部終わったわ!なので…」

「“エルフの里へ向かう”…。よね、スルタン」

「えぇ。事態の報告や、今後の動き方について長と話をしなくてはいけないからね」


村から離れた辺りを機に、スルタンは女性(もと)の口調に戻っていた。


その後、私達は歩きながらエルフの里やエルフ自身に関する話をスルタンから聞いていた。

“森人”と書くエルフ達は、基本的には深い森の中に集落を持つ事が多い。エルフの里は侵入者対策として、里の近隣が迷いの森となっている。魔法を使用しているというよりは、森の精霊と交流があることで精霊達(かれら)の力を借りているようだ。


「前にも話した通り、スルタンの種族・エルフは他の人族よりも音楽の研究が進んでいるのよ。なので、“あの曲”や“名もなき楽譜”の件でも何か進展があるかもしれないわね」

「森人共に、ワシ辺りは追い出されたりはせんだろうか…」

「大丈夫よ。マリアーノの場合、転生者の彰彦がいることだしね。因みに、貴方達3人とも転生者である事を事前に長へ伝えてあるから、気を張らなくても大丈夫よ」


エルフとドワーフが種族的に仲の悪い事からマリアーノは邪険にされないか心配していたが、スルタンの台詞(ことば)から察するに問題なさそうだった。


「迷いの森…か。今回、俺達が里へ向かうにあたり、誰か迎えの奴とかいるのか?」

「えぇ。むしろ外部から客人が来る際は、必ず同胞の誰かが客人達(そのものたち)を迎えに行くという掟になっているわね」

「成程…」


エルフの里について、ザックやスルタン。そして、私による会話が続く。


その後、スルタンの故郷であるエルフの里へ向かうため、私達の旅路は続いていく。

街道等の人が通れる場所では馬車に乗せてもらったり、小さくても山を一つ越えた先にある森の中のため、2日という時間があっという間に過ぎていくのであった。


「隣、いいかしら」

「エセル」


里へ向かう道中、ある夜の事だった。


翌朝には里の使いによる迎えがくる事が決まり、その日の晩は森の中で野宿をする事となる。焚火の火は魔物除け等も兼ねて終夜誰かが見張らなくてはならないため、一定時間ごとに交代して番をしている。

今宵はスルタンが火の番を担当し、そんなスルタンの元に私が隣へ座っていた。


「…何だか、この世界に転生してから時間の過ぎる感覚がおかしくなっているわよね」

「うん、確かに」


焚火の火を囲みながら、私とスルタンは語る。

外見は違えども、中身は同じ女性なので二人きりになっても、気まずくなることはまずない。とはいえ、ここ1週間は音魔法の修行で忙しかったので、ゆっくり話す時間がとれたのは久しぶりの事だった。

当然の事ながら、火の番を担当していないザックやマリアーノは木に寄りかかったり、地面に体を伸ばしたりして眠っていたのである。


「エルフの里に着いたら、何かと忙しくなりそうだし…。せっかくだから、お互いの話をしない?」

「そうね、ちゃんとした話をしたことなかったしね」


数秒ほど沈黙が続いた後、スルタンが違う話題を切り出してきた。


 確かに、スルタン自身の事。そして、転生前(いぜん)の彼女についての話も興味あるといえばあるしね…


私は、そんな事を考えながらスルタンの意見に同調した。


最初にしてくれたのは、”本来のスルタン“の話だ。スルタンと美都紀の場合、お互いの意思疎通がとれないのは以前に聞いたが、前者の記憶を美都紀は垣間見たことがあるらしい。彼女曰く、スルタンはエルフの里で産まれたごく普通のエルフの男性だったようだ。幼少期は、両親とも仲良く幸せな家庭だったらしい。本来ならば、里を出ることなく平凡な毎日を過ごすはずだった。しかし—


「用事か何かで里の外へ出かけていた際、スルタンの両親が魔族に殺されたのよ。…しかも、彼の目の前で…」

「…っ…!!」


そう語るスルタンの瞳は、悲愴と怒りが入り混じったような()をしていた。


「当然、怒りと悲しみで我を忘れそうにもなったみたいよ。ただ、両親が亡くなった事が引き金ともなったのかしら。…急に”僧侶になる“と言い出し、周囲は彼を止めようとした」

「止めようとした…って、何故?」

「そうね、只人のエセルやザックは無縁な話なんだろうけど…」


”僧侶になる“と言い出した下りは以前に少し聞いたが、周囲が反対したという話は今回初めて聞いた内容だった。そのため、私は首を傾げながらスルタンに問いかける。


美都紀曰く、エルフは他の人族と比べると魔力量が高く、武器を扱う場合は弓矢か槍。あとは魔法使いになる者が多く僧侶という職は魔法を使うが行使する術が異なる事から、これまで僧侶になったエルフの前例がなかったらしい。


 確かに、エルフと聞くと武器だったら弓矢を連想しやすいからね…。慣例とかを重んじるエルフとしては、スルタンの考えは異端と取られたのかもしれないわね


スルタンの話に対して相槌を打ちながら、私はそのような事を考えていた。

そうして周囲の反対を押し切りつつも、スルタンは僧侶としての修行を積んで冒険者となる。その後、マリアーノと出逢い徒党(パーティー)を組んで少し経った頃、地球からの転生者・美都紀の魂が覚醒したという。


「転生前の事については、話すのは控えさせてね。仕事はしていたけど、あまり話せるような事はないからね」

「うん、私も転生前の話はなしにしておくわ」


美都紀がそう切り出した事で、彼女に関する話は終わった。


 今まで接してきて思ったのは、美都紀(かのじょ)の場合、転生前はまだ独身女性だったかんじがするしね。転生前(いぜん)の私は既婚者だったから、マウント取るような事はしたくないし…


同時に、私も転生前の話はしなくていいのだと少し安堵していたのである。


「私も、ごく普通の侯爵令嬢だったわね」


この台詞(ことば)を皮切りに、今度は私が話す側に回った。


王立の高等学院に通い、そこでザックと出逢った事。そうして、卒業してから冒険者ギルドに登録をして依頼をいくつかこなした後に、スルタンやマリアーノと会談するようになった事を話した。


「エセル…いえ、寛。エセルの身体で覚醒した直後(とき)の事を覚えてる?」

「…一応…かな」


話している最中、スルタンから思いがけない質問がやってくる。

その台詞(ことば)を聞いた時に一瞬驚いたが「そろそろ話してもいいか」と思い立ち、私は重たくなった唇を開く。



 頭…ズキズキする…


エセルの身体で(わたし)が初めて覚醒した時——高等学院内にある、図書室で地面に仰向けで倒れていた。

上段にある本を取ろうと脚立を使っていたところ、足を踏み外して落下して後頭部をぶつけたのだろう。その部位がとても痛かったのは、今でも思い出せる。

数秒ほど呆けた後、ゆっくりと身体を起こして辺りを見る。


 学校の図書室…みたいな場所…?いずれにせよ、“転生”とやらは無事に成功したみたいね…


他の転生者達とは違って事前にウルヴェルドから転生後の事を聞いていた私は、すぐに状況を理解した。同時に、この世界における“社会”と“自分の立ち位置”を理解しなくてはいけないため、少し憂鬱な気分になっていた。


「…あれ?」


声帯確認も兼ねて出した第一声は、声よりも視線の先を注目していた。


“本来のエセル”が使用していた、図書室の脚立。長く使われている校内備品なので古くて汚れもあるのは当然だが、全体を支える柱の一番下にあたる部分が折れていたのである。



「あの時は、ただ“折れたせいで地面に落ちたんだろう”と、覚醒直後だったからそれしか考えていなかったんだけど…。改めて思い出すと、何だか脚立の折れ方が変だったような…?」

「変…ね」


覚醒直後の出来事をスルタンに一通り話すと、スルタンは真剣な表情(かお)をしながら腕を組んで考え事を始めていた。

数秒ほどだけ、私達の間で沈黙が続く。しかし、それも長くは続かなかった。


「私達、お互いに転生前の“彼ら”と意思疎通が図れていないじゃない?…里へ着いたら、何か出来ることがないか里長辺りに相談してみるわ。…エセルも、ずっと何もわからないままでいるのは気持ちが悪いでしょう?」

「…そうね。私ではあまり話を聞いてもらえないだろうし、お願いするわ」

「任せて!」


スルタンの提案に対し、私はよい話だと感じたために快諾した。

この辺りで、夜の語らいは終わりを告げる。



翌朝、エルフの里より迎えの使者が到着。準備を整えた後、使者先導の元で私達はエルフの里へ向かう事になる。

昨晩、スルタンに話していた覚醒直後の状況。その真相が後日判明することになるのを、この時の私は知る由もなかった。


いかがでしたでしょうか。

新章突入。

今回はひとまず、スルタンの過去やエセルの覚醒当時等のだいぶキャラクターを掘り下げた話がメインでしたね。エセルとスルタンは外見は男と女ですが中身は同じ女性なので、「語らい」の意味も「家族や友人等が親しく話す」方の意味で使います。まずこの二人が恋愛関係に発展することは、絶対にないですしね(笑)

さて、次回はスルタンの故郷であるエルフの里での話が本格始動です。

どんな事が待ち受けているのか…お楽しみ★


ご意見・ご感想があれば、宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ