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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第1部 第4章 3国同盟・アヴニール国家連合 結成 編
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60話 飛行船遊覧飛行と巨大地下網建設

 アゼスヴィクラム暦735年12月31日17時、ロランは『エミリア、アレックス、ステフ(ステファ二ー)、アリス、ベン、エマ』とともに、邸から500m離れた地点に建設した整備施設に保管している飛行船『エルミオンヌ』に乗り込んでいた。


 「ロラン君、こんなに大きいのに浮かんでるだね…すごい!」

 「ステフ、この飛行船の全長は100mでゴンドラは45m、客席は20席で客席とは別に壁と床に強化ガラスを使用したラウンジを用意しているからラウンジからだと自分が空を飛んでいるような景色を見れるよ……」

 

 ロランは、全員が席に座りシートベルトをしたことを確認すると、テレパスで『バルトス、マルコ、クロス、フェネク』達にハンドリングラインを引っ張り、飛行船を整備施設から搬出(はんしゅつ)するようメッセージを送る。


 飛行船が整備施設から搬出される間、操縦席のルディスとエクロプスは昇降舵(しょうこうだ)と方向舵ならびにプロペラと補助スラスターの作動確認を行っていた。


 『このテレパスは【理力眼】を使用しバルトスから取得した能力だがとても便利だ……今日のようなミション以外の日に使用すると余計にそう感じてしまう……』


と考えているとルディスが離陸許可を得るため黒猫に向かって話しだした。


 「バロネットブロアー始動、プロペラ始動…We will be taking off shortly OK?(まもなく離陸するけど問題ない?)」


しばらくすると、外で飛行船のハンドリングラインを引っ張っている『バルトス、マルコ、クロス、フェネク』達から


 「「「「Cleared for Takeoff(離陸を許可する)」」」」


という許可を得ることが出来た為ルディスとエクロプスはプロペラと昇降舵の角度を操作し飛行船を上昇させていく。


 ルディスとバルトス達の英語でのやり取りは、王国の言語である【エルド語】では離着陸時の臨場感を得る事ができないという理由でロランが覚えさせていた。


 時刻はちょうど日の入であり、客席の窓から赤と橙に染まった空とアルクトゥルスの赤い光に照らされた雲による幻想的な光景を見ることができた。


 エミリアとアレックス達は客席のシートベルトを外しソファーから立ち上がると、側面と床の大部分が強化ガラスのラウンジに移動し、設置している長方形の長ソファーに座り、美しい夕焼けの光景に心を奪われていた…


 「「「ロラン」」」「「ロラン君」」「ロラン様」

 「「「「「…すごく綺麗だよ。素敵な光景だよ…」」」」」


 「皆、喜んでくれて良かった。今年は色々あって皆と過ごす時間が短くなってしまったけど、年越しを一緒に過ごせてすごく嬉しいよ…」

 「それと王都の上空を一周したら花火を打ち上げるから…期待して…」


 「ロラン、花火って?」


 「エミリア、『花火』というのは空をキャンバスに黒色火薬を使用して色取りどりの輝く花を描いたものだと思っていて…」


10分ほどすると飛行船は王都中心部の上空を通過した。


 王都の夜景は【100万ドルの夜景】にはほど遠かったが少ない蛍が光っているようでそれはそれで皆の心を和ま(なごま)せた。


 ロランは万一に備えジェルドとミネルバを搭乗させていた。


 飛行船が王都中心部を通過するまさにその時ジェルドが重厚な低い声で話し始めた。


 「今宵(こよい)はようこそお越しくださいました。これよりスタイナー家の執事である私『ジェルド』とメイド長である『ミネルバ』より"ささやかなプレゼント"をお送りします……」


 話が終わるとジェルドは魔法鞄からバイオリンをミネルバはギターを取り出し"ボサノヴァとジャズ"に似た音楽を演奏し始めた。


 『ジェルドの左手は義手なのに……この演奏から微塵も感じ取れない……』

 『それにミネルバが奏でるギターの音色も素晴らしい……2人共ありがとう……』


と思っていると不意にアリスが耳元で話しかけてきた。


 「ねぇ……ぼっとしてないでロラン君。ロラン君の執事やメイド長さん……」

 「それに飛行船を操縦している2名の使用人の方も素敵な方達ばかりで羨ましいです……」


 「アリスもそう思う…僕もそう思うよ…」


すると前方で「ヒュ――ドン…」という花火の音が鳴る。


 皆がその音の方向に振り向くとそこには"綺麗な橙の菊"や"赤い牡丹"の形をした花火が次々と現れる。


 「「「「「わー…綺麗だ…」」」」


 誰もが興奮しながら花火に見惚れている。


 ロランはそんな皆を観ながら『皆の笑顔を守っていきたい』と強く想うのであった。


 皆との楽しい遊覧クルーズから2日後、年が明け新年を迎える。


 ロランは皆をリビングに呼びだすとテーブルの上に徐ろに(おもむろに)計画書を広げ、


 「今年から諜報手段、輸送手段、通信手段を本格始動させたいと思っている!」


と話し始める。


 「先ずツュマ……山岳警備隊900名は数キロ離れた地点にいる人物の焦りや不安といった感情を嗅覚で判断できるようになったかな?」


 「はい、現時点で汗に含まれる微量の物質から潜伏している者の感情、性別、ある程度の年齢までを嗅覚で感じ取ることが可能です。」

 

 「さすがだ……拳銃の他に新たにミスリル製の【セスタス】を支給する……これで獣化した際ダガーを握りながらでも最大限に拳の破壊力を生かせるようになる……訓練して慣れさせてほしい……」

 

 「はっ、畏まりした……」


 「リプシフター……河川警備隊600名のうちから60名を王都を流れるセレネー川とエポーナ川<本流>の警備に当たらせてほしい……」


 「畏まりました。潜水艦の監視は240名で足りますので問題ありません……リーダーとしてサラスをつけます……」


 「頼んだよ。魚雷と小型高速船は1ヶ月後に支給する……それまで『ホワイトヴィル湖』と邸との往復となるが我慢して欲しい…」


 「……いえ、我慢なんてとんでもない。私は不満など感じた事はございませんから……」


 「次に、諜報手段は階層化させ安全性と効率化を図る……」


 「LVSISメンバーが潜入し情報収集を図るケースは有事が差し迫ってきた場合に限定する。」


 「平素の情報収集は各商会の諜報部隊からの情報提供を活用する……」


 「安全性と効率化から、フェネクは『メッサッリア共和国、トロイト連邦共和国、パルム公国、クリシュナ帝国』の4ヶ国を棲み処(すみか)にしている野鳥を使役し空から監視と情報収集を行い…」


 「バルトスは4ヶ国を棲み処としている犬、猫、ネズミを使役し地上から監視と情報収集を行う事とする……」


 「エクロプスは同盟国に建設予定である王国の大使館を拠点とし各国の軍事施設と行政府施設に通じる地下通路を建造、エクロプスの同族が振動を解析する事により地下から情報収集を行う事とする……エクロプス問題ないかな?」


 「問題ありません。情報を収集するだけなら土竜(もぐら)の精霊に行わせても宜しいでしょうか?」


 「問題はない……寧ろ(むしろ)それができるならそうして欲しい。」


 「また、王国内の主要人物に対してはクロスの使い魔である『影に潜む魔物』を潜伏させ情報収集を行う事とする……」


 「なお、定期連絡や緊急連絡などの通信手段はテレパス送信で行うがテレパスが使用できないものにはマルコの使い魔である黒猫を渡す……」


 「黒猫に付けている鈴が光り音が鳴った後に受信したテレパスの内容を聞ことができ黒猫に頼めば声をテレパスで送信してくれる」


 「後で必要な数をマルコに言って連れて行くように……ただし(えさ)はきちんとあげる事と大切に扱う事は必須事項である……」


 「「「「「「「はっ。」」」」」」」

 

 「さらに情報収集に特化したルディスにはLVSISメンバーに代わり日常的に情報収集する部隊の創設を担ってもらう……」


 「30人ほど諜報に特化した能力者をスカウトし諜報員として訓練した後同盟国や敵国に潜伏させ情報収集に当たらせてほしい……問題ないかな?」


 「…問題ありません…」


この時、ほんの少しだがルディスが微笑んだ表情したのでロランは内心『ほっ』とした。


 「さて、ここからは輸送・移動手段の話となるが、現時点より格段に多数の者を輸送し輸送時間を短縮する為エクロプスとその一族に地下300mの位置に巨大な地下通路を建設してもらう……」


一瞬、エクロプスの顔が曇るロランはそのまま話を続ける。


 「フォルテア王国の面積は約637,500平方㎞で、最北端から最南端まで850km、最西端から最東端まで750㎞なので距離としては縦に850㎞、横750㎞、高さ10m、幅40mの地下通路を建設して欲しい……」


 「先ずは邸からホワイトヴィル湖まで410㎞だがどれくらいの期間で可能かな?」


 「200人で1日5kmですから82日はかかるかと思います……」


 「約3ヶ月か分かった。で工法はどうやって行う。」


 「先ず300mから310mの地点に直径5㎞の円柱の空間を作成した後、302m、304m、306m、308m、310mの地点から各40人ずつが一斉に固有魔法である『掘削(ボーレン)』を使用し水平に高さ1.8m、幅1mの穴を空けて行きます…」


 「5㎞ほど掘削が完了した時点でスタート地点に戻り、各層の間にある天井を落盤させ、落盤した岩や土砂を固有魔法である『壁面(ヴァント)』を使用して掘削した通路の壁としていく工法です…」


 「分かった…工期が遅れても問題ないので1㎞毎に空気を取り入れる穴を6箇所設置して欲しい…」

 

 「了解しました。ではロラン様、2m、4m、6m、8mのはしごを40本ずつ用意いただけますか?」


 「了解した。あと必要なものは直ぐに渡せるように準備しておくので後で教えてくれ…」


 「バルトス、マルコは配下の魔人達に地下通路に幅1435㎜のレールを設置しレールを設置した床面から高さ5mの地点に……この特殊形状の魔力導線を吊るす吊架線(ちょうかせん)を5.4m間隔で設置できるよう100m毎に支柱を設置し電車線を通すよう指示してくれ……」


 「それと魔力導線を吊るすハンガーは10m毎に吊架線に設置するように頼んだよ……」


 「「承知しました…」」


 「クロス、フェネクは配下の魔人達に地下通路の内側に上下水道管を設置するよう指示して欲しい……」


 「それと2㎞毎に20名が使用できるトイレと100名が3日過ごせる毛布、飲料水と保存食を格納できる倉庫を設置するように頼んだよ……」


 「「承知しました…」」

 

 「エクロプス、地下通路が10㎞ほど掘削するまではすまないが歩きで移動してほしい。それ以後はこの図面に示している『魔道列車』を使用して現場と邸の間を移動してもらう……」


 「それと、この地下通路は他国が魔法以外の兵器である『生物・化学・核』を使用した場合のシェルターとしても使用する……ルミール、地下通路に設置する換気口の構造を一緒に考えてもらえるかな?」

 

 「龍神様、喜んでお受けします……」


 「アルジュは、ルディスの配下となる諜報員のスカウトを手伝ってもらいたい……いいかな?」

 

 「はい、ダーリン!」


 「ジェルドには新設予定の歩兵部隊200名の指揮を兼務してもらう……ミネルバには狙撃部隊50名の指揮官になってもらうことを考えている。」


ジェルドとミネルバは表情を強ばらせロランの指示に耳を傾ける。


 「ジェルドは、先ず狙撃部隊50名のスカウトをミネルバと共に行ってもらいたい……いいかな?」


 「畏まりました。」


 「オム・マーラには千里眼の能力をより発揮できるよう……今後、実験に協力してもらう……宜しく頼む」


 「承知しました。」


 「ロベルト・バイン・アンガスタ。君をアリーチェの護衛部隊『|BLOOD Squallブラッドスコール』の指揮官に任命する……アリーチェの命を狙った者をヴァルハラに送る許可を与える……」


 「それと、これはダークエルフの魔力を制御するバングルだ…これで精神が安定化するだろう…頼むよ」


 「我が君(わがきみ)の御命令とあらば、この命をかけて姫をお守りいたします……」


 「ポル爺、ラン爺、アリーチェ、ピロメラは今まで通り僕を支えてください……」


 「ホルホル…仕方ないお子ちゃまだ…ホルホル」「しょうがあるまい」「「承知しました。」」


 ロランは来るべき時の備えを指示し終えると、皆と食事をし束の間の休息を満喫する。


 これより1ヶ月後、『フォルテア王国、メッサッリア共和国、トロイト連邦共和国、パルム公国』の4ヶ国により、この世界で初となる国際的な連合『アヴニール国家連合』が組織され世界の国々に対し高らかに宣言が行われた。


 その同時刻、薄暗い地下で左足を鎖で繋がれ左目だけを空け全身を包帯で巻かれた女性が切に願っていた……


 『あぁ…、誰か私を御救い下さい……』


この者もまたロランと深く係わる人物となるのだった……

次回は・・・『61話 仮面の聖女』です。

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