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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
白き鼓動 編
146/147

146話 真夜中の訪問者

※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。


 ロランは今、エイブラハム魔法大学の魔法学研究室でチャイを飲みながら魔法学の書籍を机に山積みし読み込んでいる。


 問題解決のため休校が多いロランであったが早々(はやばや)と卒業に必要な単位を取得し、パルム公国の邸でルミールとアルジュと共に夕食を済ませた後、20時になると繋門(ケイモン)を使用し研究室へ向かう生活を送っていた。


 『木漏れ日がさす日中の教室での授業も好きだけど、この静寂の中での読書もいい』


 ロランは机のライトボールの光を淡く設定しこの静寂の雰囲気を満喫する。


 『皆は勘違いしているが僕は戦闘狂ではないし、こうして読書に時間を使うほうが好きなんだ』


 ロランはチャイを飲みながら眼鏡の位置を直すと面白そうな書籍を手に取り読み込んでいく。


 『相対魔法論か。魔法を使用した際の確定された世界に対する時間の流れの分析か』


 『筆者は誰かな』

 

 ロランは書籍の最後の項で筆者がクリスフォード・ド・モンパーニュであることを確認すると満足した表情を浮かべた。


 気晴らしに窓を開けると明りがついている研究室がちらほら確認できる。


 ロランはここ2週間、光1日(月曜日)、光3日(水曜日)、光5日(金曜日)は必ず深夜3時まで研究室で読書を行っていたので必ず明りがついている研究室を覚え不思議と親近感が湧くのだった。


 『この時間に明りがついている研究室を見ると不思議と仲間意識ができてしまうんだよな』


 『いけないな。こういう仲間意識が危険なんだ』


 『こういう仲間意識はこの世界でも社畜を生み出す原因となってしまう』


などと考えながらもロランはこの雰囲気がたまらなく好きであった。


 すると突然、いつもはしないドアを叩く音がする。


 ロランはドアを開けるとそこには一人の女性が立っていた。


 立ち話も何なのでロランは女性を研究室に招き入れるとソファに座らせチャイをふるまう。


 「夜中に驚かしてしまいましたよね。最近、明りがついていたので気になっていたのです」


 「私はナスターシャ・グランスキー、3回生で魔法気候学を研究しています。これは御裾分けです」


 ナスターシャは自己紹介を終えるとランチボックスからお皿とミートパイを取り出し、ソファの前のテーブルに置き魔法で温める。


 「僕はロラン・スタイナー、2回生です」


 ロランは学びの場では不要と思い爵位と領地名を省いた名前で自己紹介を行たのだが予想しない反応が返ってきた。


 「あなたが西クリシュナ帝国の女王を孕ませ、この前の紛争で非道の限りを尽くした悪名高いリンデフォース公爵様なんですね」


 『僕は(ちまた)ではこんな言われ方をされているのか』


 『それと僕はダーシャには何もしていない。妊娠はダーシャが僕の髪を使用し人工授精を行ったのだから』

 

 ロランが渋い表情をしていてもナスターシャはお構いなしに話を続ける。


 「ごめんなさい。リンデフォース公爵もっと冷たい表情の方だと想像していたものですから」


 「噂は全く信じられませんね。実際の公爵はこんなに誠実そうで優しそうな方なんですもの」


 ロランは目の前にいる丸い眼鏡をかけブラウンゴールドの髪を三つ編みにしソバカスが多く見た目は地味なナスターシャから何故か目を離せなくなっていた。


 するとロランは目をつむると24時間自分を監視し護衛しているルミール、アルジュ、バルトス達の使い魔に対してはテレパスで、RedArgos(レッドアルゴス)とRedSilentSpecter(レッドサイレントスペクター)部隊には脳波通信インプラントを使用した脳波通信で監視と護衛を停止するよう指示を出した。


 目をつむったロランを見ても気にせずナスターシャは自分が気になる事を尋ねてきた。

 「公爵様はいつも眼鏡をかけているのですか」


 ロランは右目の理力眼と天竜の霊力で創造した左目から周囲に強力な浄化作用を及ぼすため、その効果を打ち消すツールである眼鏡をかけていた。


 「青みがかったストレートの黒髪に瞳はブラウンなんですね。神秘的です」


 黄金郷からの帰還後、ロランの髪は自然と青みがかった黒髪となっていたが瞳については浄化作用を最も弱める光彩としていた。


 また、エアストテラの世界では黒髪は東夏殷帝国以外では極めてまれであったため、ナスターシャはロランに神秘的な印象を感じていた。


 たてつづけに話をしてくるナスターシャに押され気味のロランであったがようやく気になっていたことを話す。


 「ナスターシャ。僕の事は公爵ではなく、ロランと呼んでくれるかな」


 これから2人は時間を忘れ会話をし、会話の中でナスターシャの両親は魔法学の教師であること、代々パルム公国の者であること、真夜中まで研究している研究室に御裾分けを持っていくことが趣味であることなどが分かった。


 ロランは容姿や生い立ちはエミリアとは全く異なるものの、先入観に固執せず何も詮索しない趣味や興味があることを楽し気に話すナスターシャに深い安堵感を覚えた。


 「随分、長い時間お話してしまったわ。またねロラン」


 ナスターシャがソファから立ち上がろうとするとロランは「もう少しいいかな」と引き留め、明け方まで語り合うのだった。

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