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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
白き鼓動 編
139/147

139話 忘却とともに

※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。


 「ロラン様、ここへは戦いにそれとも交渉ですか」


 クロスの問いにロランは静かに答える。


 「勿論、交渉をするためだ。クロスも無駄な戦いは望まないだろう」


 クロスはポーカーフェイスを崩さず金色の仮面をロランに渡した。


 「ではこの仮面をつけてください。その瞳の輝きはここの者を消滅させてしまいます」


 右目の理力眼と天竜の霊力の結晶である左目からはあらゆる者を浄化させる光を強烈に放っていたからであった。


 魔力や冥界の王の闇の力を失ったロランは完全にパワーバランスを失っていた。


 「ダーリン。あまりに清浄すぎるのも毒と同じなのです。慎んでくださいね」


 ロランはアルジュに諭されながら冥界の最深部に向かっていく。


 すると前方より灰色の肌をした武装したエルフの部隊が迫ってきた。


 「止まれ。貴様たちは何処へ向かうつもりだ。」


 部隊を指揮している灰色の肌をしたエルフはラミアであった。


 だが世界が改変され自分との関係がなく記憶もないラミアに対し、ロランは冥界を統べる方に御会いし仲間を解放してもらう交渉をしにきたと丁寧に説明を行った。


 「ではなぜ、甲冑を身に纏い戦闘の準備をした状態できているのだ」


 ロランはラミアに対し、冥界では最も力を発揮できる姿でないと体を保持できないこと、この姿は正装であることを告げたがラミアが納得するはずもなく、シエルヴォルトを使用した。


 "我らを冥界を統べる方のもとへ連れていけ”

 

冥界では地上と時の流れが異なり空間の連続性にも揺らぎがあるため繋門や転移を使用せず歩行することになった。


 数時間後、眼前に禍々しい巨大な扉が見えるとロランはその扉を開けた。


 豪華であるが禍々しいオーラで満ちた部屋の最奥の玉座に一人の女性が座っている。


 「我は冥界の王の代理人たるマー二・エクス・ディアナである。何用であるか」


 ディアナを見たロランの胸中は複雑であった。


 世界が改変される前も、ロランは冥界の王の力を使用し秘かに冥界に来て霊体となっていたディアナやルミール、バルトス、マルコ、フェネクに会いに来ていた。


 だが皆の姿は大部分が欠けていた。


 なぜなら、自身の魔力と霊力に皆の魔力や霊力が混ざり込み、完全に分離することが出来ずにいたからであった。


 「我が名はロラン。私の願いは冥界に囚われているルミール、バルトス、マルコ、フェネクを解放していただきともに地上へ帰還することであります」


 ディアナはロランの願いを冷たくあしらう。


 「冥界の規則によりその願いを叶えることはできない」


 するとロランは翼を燃え上らせ、フェネクの固有魔法を出現させた。


 「レグルス(小さな王)!」


 1億℃のプラズマの火球が部屋の温度を上げていく。さらにロランはルミールの固有魔法を使用し部屋を眩き光で満たす。


 「審判の光翼」


 ラミア達が急速に弱り始めた姿を見たディアナはロランを制止した。


 「ロランよ、其方の願いを叶えることにしよう。ただし条件がある」


 ロランはディアナから提示された条件を即座に承諾する。


 玉座の後ろに隠し部屋があり、そこに鎖に繋がれ吊るされていたルミール、バルトス、マルコ、フェネクの姿があった。


 ロランはディアナに解放を要請する。


 「皆のアポリオンチェーンを外していただけますか。」


 ディアナはロランの言葉に動揺するも表情には出すことなく、皆を解放した。


 ディアナが動揺するのも当然であった。


 冥界より遥か深部に位置する奈落において存在する、あらゆる魔力と霊力を封じ込める鎖がアポリオンチェーンであり、この鎖の存在を知り、召喚できる者はディアナ本人のみであったからである。


 『この者は一体…』


 解放されたルミールの元にケルベロスに乗ったアルジュが向かい、バルトス・マルコ・フェネクの元にはクロスが向かった。


 「恋敵の貴方を助ける時が来るなんて思ってもみなかったわ」


 アルジュはルミールに褐色の手を差し伸べる。


 「私も格下の貴方に助けられる時が来るとは思ってみなかったわ」


 ルミールは続けてアルジュが聞こえるか聞こえないかギリギリの声で感謝の言葉を伝えた。


 「…ありがとう…」


 アルジュはクスッと笑うとルミールをケルベロスの背に引き上げロランの元に戻ってきた。


 クロスはというとバルトス達に相変わらずの皮肉を送っていた。


 「はぁ、嘆かわしい。」

 

 するとバルトスがクロスの皮肉を遮るように言葉を発する。


 「そういうなクロスよ。この鎖は魔力を吸い取り一切の魔法の発動を抑止してしまうのだ」


 「我らといえど憔悴するというものだ」


 クロスは口から発する皮肉とはうらはらに表情は珍しく柔らかく皆に回復魔法を施すのだった。


 皆が集まるとロランは仮面を外し皆を労った。


 「皆、本当にありがとう。会いたかったよ本当に」


 「さぁ、皆で帰ろうか」


 ルミール、バルトス、マルコ、フェネクはクロスやアルジュ同様、完全観測者の能力を保持しており世界が改変されロランが以前と変わっていることに気づいていた。


 その事実を知らないのはロランだけであり、ロランは自分の他はクロエとレイチェルしか完全観測者の能力を保持していないと思っていた。


 ロランの素顔と家族のようなロラン達の光景を見ていたディアナは気づかぬうちに涙を流し、懐かしい思いを抱くのであった。

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