136話 フィンレー空軍基地攻略戦(4)
※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
136話 フィンレー空軍基地攻略戦(4)
自軍が劣勢であることを基地から確認したマイロ・クレイジャスはロランが放った昆虫型スパイロボットの浸食を受けていない衛星通信タブレットを使用し本国の大統領に報告を行った。
「エリオット大統領。お久しぶりです。」
「あぁ、本当に久しぶりだ。クレイジャス中将、いや今となっては傍受は関係ないのでマイロと呼ばせてもらうよ」
マイロは今まで張りつめていた緊張の糸がほぐれたのか、表情を和らげ話を続けた。
「その時が来ました。我が手でグレゾニックを消滅させます。」
エリオットはマイロの表情から全てを悟り理由を聞かず旧友に最大の賛辞を送った。
「私の理念を理解し長きに渡り我らの正義を体現してくれた。心から感謝する…我が友よ…」
「…」
マイロは通信を終えると信号灯を使用し前線の兵士達にある兵器を使用するよう参謀に命じた。
基地の信号灯を確認した前線の兵士達は震えながら、命令された砲弾を使用した。
多くの前線の兵士はある者は父と母を、ある者は子供達を、ある者は恋人を思いながら使用すれば二度と思い人と会えなくなる砲弾を使用しなければならなかった。
『『『『『なぜ、こんな兵器を使用させるんだ…』』』』』
最初に異変を感じたのはバークスであり、感じた異変から導かれる結果を皆に脳波通信で伝えた。
""空気の密度が急速に変わり、構成成分が変化したことによる揺らぎを感じる""
""敵は生物兵器と化学兵器を使用した""
""即時に作戦を中止すべきだ。我らよりNBC対策が低いクレイスカイラー部隊はもたない""
""時間が無い。ロラン様決断してください""
バークスの進言を受けたロランはジョヴァンニに作戦中止を要請しようとした矢先、意外な人物から異議が放たれた。
""バークス。一歩遅かった。先ほど私はジョヴァンニ殿から全てを託された""
""必ず基地を殲滅させてくれと、武人としてジョヴァンニ殿と約束をかわしたのだ""
""ロラン様。私の身勝手をお許しください。そしてレイラ・クロエには決して御心を許さないように""
脳波通信を終えたアークはラファーガにまたがると残存するクレアスカイラー部隊を引連れ基地へと猛進した。
数秒後アークに続きスティオンからロランに対し脳波通信が送られた。
""ロラン様。私はアーク殿の父君であるジェルド様の参謀として長年仕えマクベス家に大恩があります""
""それとアークは私にとって弟のような存在なので放っておくことができません""
""ロラン様。バークス殿、ファビアン。『赤い薬と青い薬』を奪取しエアストテラの民を一人でも多く御救いください""
スティオンはロランの許可なくアークを追い、生物兵器と化学兵器で満ちた激戦地へと突入して行くのだった。
アークは雷魔法を発生させるガントレットを右手にはめ、敵の大隊が存在する塹壕に近づくとラファーガから飛び降り体内に存在する全ての魔力と威力を高めるため命を魔力に変換した全霊の魔力を右の拳にのせ地面に拳を叩きつけた。
「トールハンマー!」
強大な雷が地面を引裂き円弧上に拡散し目の前の敵を一掃したことを確認したアークはその場に倒れ込むのだった。
遅れてきたスティオンが倒れたアークを抱きかかた瞬間、敵狙撃兵が使用した対物ライフルの弾丸がNBC対策を施した戦闘服Ⅱ型スーツの右肩を突破り貫通した。
「これではもう生物・化学兵器に対する効果は無いに等しいな」
「まったく御前はいつも真直ぐすぎるのだよアーク。私は御前を弟のように思っていたんだぞ」
いつも冷静であったスティオンは感情を露わにしアークを抱しめ話しかけながら地面に倒れ込むのだった。
ロランはそのあり得ない、あってはならない光景を千里眼で見、バークスとファビアンはKnight RavenのAIであるエルガが敵偵察衛星を使用したハッキング画像を脳波通信インプラントで映像化し確認した。
戦場ではクレアスカイラー部隊とカークス共和国の兵士達が次々に倒れていく。
ロランは敵を過小評価し戦略を精査しなかった事、情報漏洩対策を怠った事、何より魔力が使用できない環境で判断が鈍っている事を自覚しながら作戦を推し進めた事を激しく後悔した。
だがロランに訪れる惨劇はこれだけでは済まなかった。