134話 フィンレー空軍基地攻略戦(2)
※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
「少し宜しいでしょうか。私はジョヴァンニ・コルネリウス、このクレアスカイラーで司令をしている者です…」
休憩所で寛ぐロラン達に話しかけてきた男はネイビーのベレー帽を斜めにかけベレー帽から収まらない金髪の長髪を巻いてたたみこみ、口髭と顎髭がつながるほど生やしているが手入れをし屈強な体をした眼光鋭い瞳をした男であった。
その男は秘書の役目なのか左横にレイラを座らせるとロランに対し基地防衛の無力化戦術を尋ねてきた。
「貴殿がこの拠点に来て1週間が経つが私には何もしていないように見える…」
「本当に、あと2週間でフィンレー空軍基地の防衛を無力化出来るのでしょうか…」
「むざむざ2,000名の命を失うわけにはいかないのでね…」
ロランは既に10万機の昆虫型スパイロボットをフィンレー空軍基地に向かわせ着実に破壊工作を実行させていた。
だが、ロランは既に破壊工作を実行している事を隠し事実のみをジョヴァンニに伝えた。
「ご安心くださいジョヴァンニ司令。既に手は打っております…」
ロランが使用した昆虫型スパイロボットは蜂型、蟻型、蜘蛛型等複数の昆虫タイプであたが、僅かな命令でクローズしたネットワークにコンピュータウィルスを送り込め、破壊する装置の位置を「8の字ダンス」等のダンス言語で情報共有し緻密で高次な破壊工作を行うことが出来る社会性昆虫である蜜蜂型を多用していた。
『単体で僅かなプログラムで自律制御でき、生物としての特徴機能からコロニーを形成すれば単体が保有する情報をネットワーク化しダンス言語をアルゴリズム化しコンピュータウィルスの生成や破壊工作の最適解を導き出すコンピュータにもなる…』
『この世界に昆虫型スパイロボットというツールを知られたくない…』
『知れば、この世界も静かなる戦争に足を踏み入れてしまう…』
話中ではあったがロランは少しばかり深読みをしてしまう。
するとロランとの約束を反故するばかりかロランに対し口調の端々で若輩者扱いするジョヴァンニが気に障ったバークスが話に割って入った。
「ジョヴァンニ司令。我らが基地をどう無効化するかは詮索しない約束のはず…」
「貴殿が危惧すべきは、カークス軍がやけになり化学兵器や生物兵器を使用した際の対処方法のはず。なぜなら我らより装備の性能が劣るのだから…」
「それとこれは警告だが、これ以上、主君を愚弄し素性を詮索するのは止めろ…」
バークス・スティンガーが人と蠍のキメラであるからなのか、元トロイト連邦共和国情報保安局ハイパーヴィジョン狙撃工作部隊の隊長であるからなのか、RedBulletの司令だからなのか、彼が発する言葉に美辞麗句はなく抜き身の刀のように相手を突き刺す。
バークスの発言でジョヴァンニの身に危険を感じたレイラが拳銃に手をかけるがそれ以上動けずにいた。
バークスは魔法や能力を使わずとも命を掛け生き延びてきた経験の一つ一つが彼の存在感に深みを与え、肉食動物が草食動物に対して与える絶対的恐怖をグレーの瞳を通じて、ジョヴァンニとレイラの全身に与え、筋肉を硬直させたのだった。
「バークス殿。それぐらいで勘弁してはどうですか…」
スティオン・ラリスは自分より3歳ほど年上のバークスを諫めるとフィンレー空軍基地無効化後の御互いの作戦行動について擦り合わせを行い白熱した議論が幕をあけた。
本音と建前、ファクトとブラフを交える議論にファビアンは嫌気がさし、昆虫型スパイロボットが収集した情報からいくつか潜入しやすい区画を確認するとロランに右目でウインクを飛ばし、この議論に飽きたことを伝えるのだった。
『この世界にはレイチェルちゃんが開発したRaPNネットワークがないからな…Knight Ravenの人工知能である「エルガ」ちゃんに頼んだかいがあったな…』
『それにしても静止軌道上のデータ通信衛星をハッキングし昆虫型スパイロボット達からの暗号化データを中継し脳内通信インプラントに届けてくれるとは可愛い娘だ…』
『そのうえ、超音速で鉄杭を射出し大規模破壊を行う攻撃衛星のハッキングするとは大手柄だが、これを使用しては折角の余興が台無しになってしまう…さて、ボスならどうするかな…』
ロランが同行させた次世代のリーダー達は纏まっているようで、どこまでも我が道を行く者達ばかりで、そのうえ個性が豊か過ぎであるためロランを大いに悩ませた。
『はぁ、僕を置き去りにして方向性が固まってしまった…』
『それにこの胸騒ぎは何だ…』
『何故か、一刻でも早く赤い薬と青い薬を入手し戻らなくてはいけない気がする…』
議論に上の空のロランを横目にアークは一人、レイラの行動を注意深く観察するのだった。