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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第3部 第2章 繭の中の世界 編
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115話 砂漠の蠍と赤き霧 (1)

※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

 第九代 光武帝の命により末弟の赤狼王が7万の兵を連れ首都【世選楼】を発ったという情報は、静止軌道に位置する光学衛星【ミュー】とレーダー衛星【オメガ】、"オム・マーラ"率いる千里眼部隊Argosによって瞬時に画像情報として取得され、全部隊の脳波通信インプラントに送信された。


 東夏殷帝国軍の進軍速度から"パリス砂漠"に到着するまでの日数は5日と予測された。


 ロランはアークが計画した戦略シュミレーション通り早期にトラップを仕掛け防衛ラインを構築するため、RedMistのアインスであるアーク・ヴィン・マクベスを現地戦闘司令官に任命し第1級臨戦態勢を執るよう全軍に脳波通信インプラント使用し通告する。


 アークは、スティオンとバークスに部隊を連れ"エルミオンヌ"型高速飛行船で敵地に先行潜入しトラップを仕掛け防衛ラインを構築するよう命じた。


 スティオンは隊員達に高速飛行船20機の操縦を指示するとバークス率いる狙撃部隊と共に前線へと向かった。


 『…パリス砂漠は初めての戦地となる…』


 『…気温、空気密度、風の流れなど調査し蓄積すべき情報が山ほどあるな…』


と考えながら目を瞑り意識を集中させることで脳内に弾道計算インターフェースを表示させ、イメージにより数値を入力することで射程8㎞における弾道計算を行うのだった。


 RedBullet(レッドバレット)の全隊員は"発展型脳波通信インプラント"を側頭葉に埋め込み、脳内にデジタル照準と射程距離、風、気温等の情報が表示され、狙撃銃に設置しているスコープと組み合わせることで、狙撃精度向上が図られていた。


 スティオンはエルミオンヌ型高速飛行船が目的地上空に到着すると底なし沼(ボトムレススワンプ)を封じ込めた魔導圧力感知型発動装置を散布するよう指示を出す。


 散布された魔導圧力感知型発動装置には楓の種についている"翼果(よくか)"に似せた形状の翼が取り付けられ、回転しながら地表に降下し地表に接すると地中10㎝まで埋まり存在を隠した。


スティンはその後飛行船を降下ポイントに移動させバークスに降下するよう促した。


 「……降下ポイントに到着したバークス部下と共に降下してくれ…」


 バークスは左手の親指を立て返事をする。


 「……了解した。これより飛行船より降下し射撃ポイントで潜伏する…」


と言うとゴーグルをしウイングスーツを着込みパラシュートを背負うと部下と共に降下していった。


 RedBulletの中でも選抜した精鋭100名の隊員達は時速300㎞以上で空中を滑走し狙撃ポイントに近づくとパラシュートを使用し迅速に地上に着地する。


 バークスは隊員達に迅速にパラシュートを片付けウイングスーツを脱ぎ、戦闘服Ⅱ型で周囲に溶け込むよう指示すると、土属性魔法で地表の砂を固め、その時を待った。


 アークは、別動隊として特殊工作部隊"蜘蛛"と"蝙蝠"をロラン邸からパリス砂漠と西クリシュナ帝国の国境まで完成していた地下の魔導列車を使用し送り込み、戦地のリアルタイム情報の取得を図った。


 蜘蛛部隊は肉眼とヘッドマウントに搭載した複数のカメラを使用し全方位の画像情報を送信し続ける。


 一方、蝙蝠部隊は集音機能を強化した脳波通信インプラントをフル活用し、遥か数十㎞先より進軍する東夏殷帝国軍の進軍速度を音から割出、正確な進軍情報を適時送信した。


 バークスはというと砂漠に潜伏しながら固有魔法を発動し蠍を顕現させると特定位置に配置した。


 「……砂漠と闇に愛されし我が眷属よ、顕現せよ…砂漠の蠍……」 


 バークスは射撃時に必要な風速、気温、空気密度といった情報を顕現させ、一定間隔で配置した蠍達の感覚毛が感知する"振動と匂い"から取得し、気象観測Laboから送信されるデータを補正していた。


 決戦の2日前、ロラン・ジェルド、ツュマ、アーク率いる本体はパリス砂漠に繋門から出現し部隊をシュミレーション通りに配置し、現地作戦本部でこれまでに収集した敵の情報を分析していた。


 2日後、赤狼王に率いられた7万の東夏殷帝国兵が20㎞先に現れる。


 赤狼王は、兵達に突撃を命じると兵達は自身に肉体強化の魔法をかけ雄叫びを上げながら突進した。


 「「「「「……強靭身体(コールジュール)……」」」」」


 アークはというと微動だにせず、敵が防衛ラインを越える瞬間を待ち続ける。


 東夏殷帝国兵が防衛ラインを超え、魔導圧力感知型発動装置地帯に入った瞬間、装置が次々に底なし沼(ボトムレススワンプ)を発動し、長さ1㎞、幅10㎞に及ぶ底なし沼を出現させた。


 突然、砂漠に出現した底なし沼に東夏殷帝国2万の前衛部隊が次々に飲み込まれていく。


 アークはこの機を逃さず高速飛行船から魔導空対地ミサイル攻撃を指示し、蝙蝠型魔物"ブラジアーロ"に搭乗する飛翼兵達には火炎槍や光槍による魔法攻撃を指示した。


 続けてアークは、副官の"パイロン"と"オッペンヘルガー"に対し魔導戦闘車や炎を纏った巨岩を射出するトカゲ型魔物"バルギル"、重装歩兵部隊による携帯型魔導迫撃砲による砲撃を指示した。


 さらにアークはスティオン率いるグリーンアイズ部隊に砂漠ごと底なし沼を凍結させ東夏殷帝国兵を固定するよう指示を出す。


 アークから指示を受けたスティオンは固有魔法を発動し砂漠ごと底なし沼を凍結する。


 「……限りない絶対零度アンリミテッド・アブソリュートゼロ……」


 続いてグリーンアイズの隊員隊は自分が使用できる魔法を発動し凍結を補助した。


 「「「……嵐の(エーリヴァーガル)……」」」


 「「「……大紅蓮(マハーパドマ)……」」」


 東夏殷帝国兵達は砂漠が一瞬で凍結するという信じられない光景を目の当たりにした。

 これだけ広大な範囲を凍結させ進軍を阻止する戦術など経験したことが無かった東夏殷帝国兵隊は戦士としての自信が崩壊しパニックに陥った。


 アークはロランに広域火炎魔法の発動依頼を行った。


 「…ロラン閣下、氷より水の方が電気抵抗が低いため広域火炎魔法で氷を溶かしていただいて宜しいでしょうか……」


 ロランは恒星の戦車(アルクトゥルスチャリオット)を使用するとアークの戦略を台無しにしてしまうと考え火属性魔法最上の魔法を発動することにした。


 「……ムスパルムヘイム……」


 発動されたムスパルムヘイムにより氷結された砂漠と底なし沼の氷はみるみる溶け、ムスパルムヘイムで発生した広範囲の高温火炎により、多くの東夏殷帝国兵がヴァルハラに旅立つのだった。

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