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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第3部 第2章 繭の中の世界 編
111/147

111話 世界を侵食する機械仕掛けの兵装 (1)

※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力スキルにおける名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

 今、エミリアはロラン邸の地下にある中央戦闘指揮所で戦略ブリーフィングに参加していた。


 ロランはというと壇上で、透明な石英ガラス板のプロンプターに議題を表示させ、各隊の予算や新装備、戦闘シュミレーションについて議題を進めていた。


 「……では、本年度の予算は今、説明した通りとする……」


 「……再度、予算を確認したい場合は脳波通信インプラントを使用しRaPN上のサーバに格納している該当ファイルを参照するように……」


 RaPN(Rachel・Protocol・Network)とはレイチェルが"エアストテラ"世界で開発したネットワークである。


 ブリーフィングに参加している指揮官と分隊長達は、側頭葉下に埋め込んでいる脳波通信インプラントに意識を集中しアクセスを試みる。


 その瞬間、脳内にアクセスコードを要求する画面が表示され、イメージすることでコードを入力し、ログイン後サーバー内の該当ファイルにアクセスすると予算を確認した。


 無論、レイチェルはアクセスコードだけでなく、脳波通信インプラントの製造番号情報や生体感受性インクを用いたスマートタトゥーが取得するDNA情報などの個体識別情報も認証時に同時にチェックすることで、堅牢なセキュリティ体制を実現していた。


 ロランはブリーフィングの本題である"転送装置"の運用に議題を移そうとした際、珍しくツュマが挙手し話に割って入ってきた。


 「……今回、エミリア嬢は初めて我々のブリーフィングに参加しています……」


 「……先ずは各隊の説明をしてはいかがですか……」


 ロランは、"至高の門番"としてオブザーバー席でブリーフィングに参加している"アリーチェ・デ・クロエ"の横に座るエミリアを見ると申し訳なさように"ちょこん"と頭を下げた。


 振り返ったロランは、壇上より"すり鉢構造"の席に座わる各隊と指揮官達の紹介を始めた。


 「…先ずはRedMist(レッドミスト)LVSIS(ルブシズ)、SilentSpecter(サイレントスぺクター)の統合司令官である"ジェルド・ヴィン・マクベス"…」


 ジェルドはエミリアに対し軽く会釈をする。


 「…次は統合副司令官の"ツュマ・フォン・アマルテア・ツー・ヴィントハイデ"…」


 ツュマはというとジェルドと対照的にエミリアに対し掛け声つきで大きく手を振った。


 ロランは『…これは長くなるな…』と思いながら紹介を進めていく。


 「…左端の部隊は、アリーチェとエミリアを命をかけて護衛するBLOOD Squall(ブラッドスコール)…」


 「…部隊の指揮官はアインスである″ロベルト・バイン・アンガスタ″……」


 「…分隊長はエミリアの良く知る大鋏のバレンティナと隻腕のスプリウスだよ……」


 ロランより紹介されたロベルトはエミリアに対し冷徹な視線を送り、エミリアの後方で護衛を行うバレンティナとスプリウスは対照的に()()()()()()をとるのだった。


 ロランは左の掌で額を抑え、ため息をつきながら説明を続ける。


 「…次は諜報部隊であるSilentSpecter…」


 「…部隊の指揮官はアインスである"ルディス・フォン・グラント"…」


 「…副官はツヴァイである"ファビアン・シュナイダー"だ…」


 ルディスはエミリアに対し無表情で軽く会釈をした。


 対照的に副官のファビアンはロランやエミリアと共にリンデンス帝国に同行したこともあり、エミリアに対し左手で小刻みに手を振る。


 ロランはファビアンの行動に呆れながらも、さらに説明を続ける。


 「…次は特殊工作を主任務とする部隊LVSISだ…」


 「…部隊の指揮官はアインスであり、山岳警備隊の指揮官でもある"ツュマ"…」


 「…ツヴァイは地下工作部隊の指揮官である"エクロプス・フォン・アークボルト"…」


 「…ドライはグリーンアイズ部隊の指揮官である"スティオン"だ……」


 ツュマはエミリアに対し今度は投げキスを行い、エクロプスは軽く会釈を、スティオンは満面のスマイルを送るのだった。


 ロランはツュマのエミリアに対する投げキスに腹を立てながらもさらに説明を続ける。

 「…次は実行部隊であるRedMistだ…」


 「…部隊の指揮官はアインスでありRedMace(レッドメイス)の指揮官でもある"アーク・ヴィン・マクベス"…」


 「…副官は"パイロン"と"オッペンヘルガー"…」


 「…ツヴァイは河川警備隊の指揮官である"リプシフター・フォン・マクリール"…」


 「…ドライは現在空席であるが狙撃部隊RedBullet(レッドバレット)の指揮官として"バークス・スティンガー"を予定している…」


 アークとリプシフターはその場で立ち上るとエミリアに対し、貴族が行う会釈をした。


 ロランは新設したFortuna(フォルトゥナ)機関については今後の議題の説明で明らかとなるため、紹介は割愛するとし転送装置の運用方法に話を移した。


 「…今回のブリーフィングの本題であるレイチェルが開発に成功した転送装置の運用方法に議題を移す…」


 「…転送装置の使用であるが現時点では戦闘時と諜報潜入時に限定する…」


 「…では、レイチェル説明を頼む…」


 ロランは開発者であるレイチェルに敬意を示し転送装置の運用方法の説明を行わせた。


 レイチェルは自席から壇上に向かう途中エミリアを一瞬横目で見たが、何事もないかの如く壇上に上がり、各隊の指揮官に説明を始めた。


 「…私が"時空観測Labo"と"気象観測Labo"の責任者"レイチェル・ロンド・冷泉"です…」


 「…転移に関しては、ロラン様の"繋門"やレクトリオン様、クロス様、アルジュ様の"転移魔法"と限られた方しか使用できません…」


 「…そのため、作戦中、転移が可能であれば防ぐことが出来た犠牲が多々あります…」


レイチェルの説明にロランは顔を曇らせる。


 「…不要な犠牲を減らすため、中央戦闘指揮所の上階に21機の"転送装置"を備えた"全方位型転送ルーム"をロラン様とエクロプス様のご尽力を得て建設しました…」


レイチェルは概要説明を終えるとブレスレットの役割について説明を始めた。


 「…現在、各指揮官の皆様には両手首にブレスレットを着けていただいております…」


 「…左手首のブレスレットは、測地衛星"ラムダ"を使用し、エアストテラにおける皆様の緯度・経度を特定するためのブレスレットです…」


 測地衛星"ラムダ"とは古代文明が残したオーバーテクノロジーの産物である。


 「…一方、右手首のブレスレットは転送先の緯度・経度を特定するためのブレスレットです…」


 レイチェルは一息つくとブレスレット使用時の注意事項を説明する。


 「…注意いただきたい事は、右手首のブレスレットは必ずブレスレットを中心に半径3mの範囲内に障害物が無い平地で設置いただきたということであります…」


 「…なお、万一敵がブレスレットを取得し何らかの方法で転送装置を使用した場合を想定し、全方位型転送ルームと皆様が指定する転送先以外には転送はできない仕様としております…」


 「…そのため、中央戦闘指揮所以下の"時空観測Labo"や"気象観測Labo"、"ArgosLabo"に"医療Labo"への移動は、これまで通り超電導エレペーターもしくは非常階段で移動していただきます…」


とレイチェルは転送装置に関する運用説明を締めくくった。


 混乱する指揮官達の姿を観るに見かねた智の魔人であるクロスが転送装置の運用方法を咀嚼(そしゃく)して説明を行う。


 「…要は、転送装置と貴様らが指定する転送先での2拠点間転送ということだ…」


 「…転送先についてだが、そこが斜面や木が生い茂っていたら転送された者が負傷するだろ、だから平地を選ぶ必要があるということだ…」


 智の魔人であるクロスはレイチェルが言い忘れた事も付け加えた。


 「…貴様らや貴様らの部下が敵に捕らえられた時は、レイチェルが貴様らの右腕に施したスマートタトゥーが心拍数や脳内物質などの情報を平常時と比較する…」


 「…異常があれば強制的に転送装置に転送するようブレスレットに情報が送られる仕組みとなっているから、如何なる時も身に着けておけということだ…」


 「…何が言いたいかと言うと、敵に捕まっても勝手にヴァルハラに行くことを選択するなということだ…」


 中央戦闘指揮所にいた誰もがクロスは口が悪いが自分達の命を大切に思ってくれていると思った瞬間、クロスは皆を失望させる発言をする。


 「…我ら魔人に遥かに及ばない貴様らが兵士として任務を遂行できるまでの訓練、兵装、莫大な費用がかかっている…」

 

 「…貴様らが減れば"我が王"が無駄金を使用したことになるからな…」


 ロランは咳ばらいをするとブリーフィングが長時間になると予測できたため、30分間の休憩をはさむのだった。

・2020/06/12 誤字・脱字・文書修正

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