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異世界転移の英雄譚 ~悩み多き英雄さま~  作者: 北山 歩
第3部 第1章 神がダイスを振りすぎた世界 編
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104話  キャンパスライフ ~不可抗力の…~

※当作品の登場人物名称(対象はフルネームの完全一致および酷似した名称)、貨幣の名称と特徴、特有の魔法名称と特徴、理力眼といった特有の能力(スキル)における名称と特徴、国家・大陸名称、魔力導線の構造及び魔石と魔力導線を使用した発明品・兵器の構造等の内容ならびにテキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。

 「……コツ…コツ…コツ…」


 朝食を済ませ、左胸にスタイナー家の紋章を刺繍したブラックのジャケットとベスト、ロングパンツにホワイトのシャツの正装に身を包んだロランが扉を開き、待機していた馬車に足早に向かう。


 途中、バランスを崩してしまったため御者を務める『オッペンヘルガー・イワノフ』が心配し声を掛けてきた。


 「……ロラン様……御体大丈夫でしょうか……」


 「……大丈夫だよオッペンヘルガー……今日は朝の訓練がハードだったからね……」


というとロランは馬車に乗り込みオッペンヘルガーにカント魔法大学に向かうよう指示を出す。


 ロランは年が明けたアゼスヴィクラム暦737年から腐敗の神殿【バンシュロイア】で配下となった異世界の刀神が使用していた【一振りの刀】である雷鳴朱雀(らいめいすざく)をスタイナー家の剣術指南役とし皆の指導を行わせていた。


 雷鳴朱雀はこの世界でいうところの【剣の精霊】あるいは【剣の付喪神(つくもがみ)】といった存在であり指南の際は顎髭(あごひげ)が長い老人の姿となりスパルタで指南を行っていた。


 一息つくとロランは魔法鞄から資料を取り出し各部隊からの要求を確認する。


 「……ツュマからの要求は山岳警備隊用に追加で光学迷彩戦闘服を500着、フルタング様式の中型黒刀を1,000丁だな……」


 「……リプシフターからは河川警備隊用に浮遊機雷5,000個と携帯型魚雷3,000発に潜水艦救難艇10隻と小型警備艇20隻か……」


 「……ルディスからはSilentSpecter(サイレントスペクター)諜報員(エージェント)訓練生用としてボディアーマーとバイパーT31拳銃のセットを300セット、それと諜報員用に光学迷彩戦闘服を2,000着、暗視スコープ500個に、バイパーT31拳銃を1,000丁、弾丸200,000発…」


 『……弾丸200,000発も必要か……』


と思いながらロランは別の要求書に目を通していく。


 「……エクロプスは魔道装甲車を100台にボディアーマーとバイパーT31拳銃のセットを500セット……」


 『……大所帯になったとは言え出費がすごいな……帰ったらブリジットに小言を言われそうだ……』


と考えているとカント魔法大学の正門に到着した。


 ロランはオッペンヘルガーの労をねぎらうと邸に帰還するよう指示を出すと校舎に向かい歩き出した。


 既にカント魔法大学に入学してから1ヶ月が経過していたが、ロランは開放的な雰囲気と伝統のあるアカデミックな空気感がとても気に入っていた。


 正門から校舎までのアプローチは緩やかなカーブを描く石畳の通路であり、通路の左右には整頓された芝生が広がっている。


 芝生の上では寝転んで読書をする学生や軽食をとる学生もおり開放的な印象を与える。


 その芝生の先にはバロック様式に似た巨大で格式ある図書館が建ち並び格調高いアカデミックな雰囲気を醸し出している。


 校舎はバロック様式とロマネスク様式が混ざった様式で屋根は落ち着いた青色で統一され壁は赤レンガ、柱は白の大理石で建てられており重厚感と伝統美の調和がとれた建物であり、校舎の北側には放射状に棟が建っており、各棟には魔法学や魔天学などの専攻する科目の教室と研究室が設置されている。


 ロランは魔法学を受講するため校舎に向かい魔法学の教室に入るといつものように一番前の席に座る。


 教室の席は黒板を中心に扇状のすり鉢構造となっており黒板から見て後方ほど席が高くなっており遠くからでも黒板を見やすくしている。


 カント魔法大学の黒板は一定の魔力を込めると光る鉱物で製作されており教授達はスティックの先端に魔力を込めて文字を記述していく。


 最初のうちは大なり小なり魔力があり誰もが魔法を使用できる世界らしい黒板と思ったが、教授といえど高い魔力を持つ者は少なく素早くノートに記述しないと黒板から文字が消失してしまう欠点があった。


 ちなみにカント魔法大学においてもロランが抄紙機工場を建設し大量に紙が生産できるまでは全生徒がノートではなく羊皮紙に記録していたとのことであったが現在では貴族か豪商の子息令嬢はノートを使用していた。


 現在でも紙はまだ貴重品であったからだ。


 「……おはようございますロラン様……」


ロランに挨拶するなり横に座り腕を組んできた女性は『ジョディ・ライトナー』17歳である。


 「……やぁ…おはようジョディ……それと講義を受けるので腕を組まないでほしいんだけど…胸があたるから……」


 「……ロラン様は胸が御嫌いですか……私はわざと押し付けているのですが……」


ジョディは必ず返答に困る質問をする。


 『……嫌いな訳はない……だけど僕には……エミリアがいる……』


と思いながらロランは何とか腕をほどくとモンパーニュ教授の講義に集中する。


 『……さすがにクリスフォードだ……魔法陣一つ一つが自然現象のどの事象に作用するのか……どうすれば強化できるのか……なぜ無詠唱でも魔法を行使できるのか…よく分析されている……』


 ロランが感心するモンパーニュ教授とはクリスフォードのことであり、大学では敬意をこめてモンパーニュ教授と呼ぶことにしていた。


 講義は1コマ90分であり、科目は『魔法学』『実践魔法学』『数学』『法学』『経済学』といった必須科目の他に『応用魔法学』『魔法薬学』などがあった。


 また、変わった科目としては精神感応魔法に特化した『魔声学』『魔楽器学』や古代に封印された魔法を復元する『魔法考古学』、天体や気象と魔法との関係性を探求する『魔天学』などの科目も存在した。


 次の講義まで1コマ分の空き時間があったのでロランは近くの図書館に向かった。


 ロランは時間ができたときは大抵、図書館か礼拝堂で時間を過ごすことにしている。


 図書館には多数の蔵書が保管されており本棚の下には長テーブルと椅子が置かれ、その場で本の内容を閲覧できるようになっている。


 また、窓側の席は明るいが中央はやや暗く軽食やチャイなどの飲料を提供するカフェが図書館内にありチャイを飲みながら読書ができることからロランのお気に入りの場所でもある。


 そんな御気に入りの場所にもジョディは駆けつけてくる。


 「……もう…ロラン様…お目付け役の私を巻こうとしないでください……」


とジョディは不機嫌に文句を言い始める。


 ジョディはエミリアの友人であることは確かなのだが、ロランが大学で女性徒と浮気しないよう監視するために常に傍にいるという話はあまり信憑性がなかった。


 それに入学早々、亀の魔物である【アガメム】の甲羅に脱着式のハンドル付きポールを取り付け甲羅に乗りながらロランに抱き着いてきた変わり者であり、調子を崩されることからロランはジョディを苦手にしている。


 「……ロラン様……ロラン様…ねぇ…聞いてますか……」


 「……聞いているよ…ジョディ……」


この調子で話を続けられるので離れたいときはトイレに行き【繋門(ケイモン)】を使用し別の場所に移動することでジョディを振り切っている。


 早速、ロランはジョディをけむに巻くためトイレに向かう。


 ロランはトイレの中に入ると【繋門】を使用し校舎の中にある礼拝堂へと移動した。


 礼拝堂の正面上部と左右の窓ガラスは全てがステンドグラスで作られている。


 特に左右の窓ガラスは高さ10m幅2mの巨大なステンドグラスが片面5枚づつ設置されており、礼拝堂に入った瞬間から巨大な万華鏡の世界に迷いこんだ錯覚を植え付けるほど荘厳な景色であった。


 ロランは椅子に座り少しばかり瞑想する。


 『……ケレス商会のモリッツ会頭は苦労してきたんだろうな……』


ジョディ・ライトナーは商会連合に属するケレス商会モリッツ・ライトナーの一人娘だったからである。


 瞑想を行ったためが魔力と霊力が高まってしまいロランの全身から輝く光の粒子とテンプテーション香が放出されてしまった。


 ロランが古代遺跡で倒れた際に、ルミールは口づけにより、ディアナは胸に手を当て続けることにより、アルジュは左手を握り続ける事により魔力を供給したため、ロランは3人の魔力を体に宿してる。


 強大になり過ぎた魔力と霊力が魔力の少ない者に致命的な影響を与えないよう、ロランはレイチェルとともに【冥界の王】の能力である究極重力(アルティメット・グラビティ)を利用し魔力と霊力及び【冥界の王】の力を亜空間に保管するクリスタルバングルの開発に成功しクリスタルバングルを常に左腕につけていた。


 クリスタルバングルの効果により通常では輝く光の粒子とテンプテーション香の放出、胸の『アルクトゥルス』と『ブラドクホーン』の紋様と左手甲のヘナタトゥー紋様が浮かび上がる事を防止していたのだ。

 

 『理力眼』と『探知』が多数の女生徒が礼拝堂に向かってくることを感知した。


 『……はぁ……エミリアに合わす顔がない……』


と思いながら【繋門】を使用し次の講義である『魔天学』教室の近くにある階段下に移動した。


 時を同じくしてプロストライン帝国の皇帝『イワン・ヴィン・プロストライン・ツー・オーディン』が玉座の前にある男を呼び寄せていた…

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