第43話 いつものご飯
葵と別れたあと、拓也とノエルは管理施設を出てホテルへ戻った。
部屋へ入ると、拓也はそのままベッドへ腰を下ろした。
「はあ……疲れた」
朝からCランクのダンジョンへ入り、戻ってからは葵と昼飯を食べて、そのまま施設の中も歩いていた。思っていたより一日が長かった。
ノエルもベッドのそばへ来ると、その場で身体を伏せる。
「今日はもう出かけなくていいか」
「うん」
しばらく二人で何もせずに休んでいると、ノエルがふいに顔を上げた。
「ご飯行こう!」
「復活したな」
「お腹すいた!」
二人でレストランへ向かい、料理を取りに行く。
並んだ料理を見ていたノエルが、薄く切られた肉の前で足を止めた。
「これもお肉?」
「ローストビーフだな」
「僕これ食べる」
拓也はローストビーフをノエルの皿へ取り、そのまま料理台を進む。ノエルはほかの料理もいくつか選んだ。
席へ戻って食べ始めると、ローストビーフにもすぐ口をつける。
「これおいしい!」
「よかったな」
食事を進め、そろそろ終わりかと思ったところで、ノエルがデザートの方を見た。
「これなに?」
「ソフトクリーム。自分で作るやつ」
「作るの?」
「やってみるか」
拓也はカップを持って機械の前に立ち、レバーを動かした。白いソフトクリームがゆっくりと巻かれていく。
最初はうまく重なっていたが、途中から少し横へ傾く。
「あ」
「曲がってる!」
「難しいな、これ」
ノエルが楽しそうに見ている横で、拓也はなんとか最後まで巻き切った。
「まあ食えればいいか」
二人で席へ戻り、できたソフトクリームを食べる。
「冷たい! おいしい!」
夕食を終えたあとは部屋で少し休み、そのまま温泉へ向かった。
身体を洗って湯船に浸かり、しばらく温まってから風呂を出る。
休憩スペースへ出たところで、ノエルが自動販売機を見つけた。
「タクヤ、飲み物ある!」
「なんか飲む?」
「飲む!」
拓也は自分の分とノエルの分を買い、近くの椅子へ座った。二人で飲みながら、しばらくそこで休む。
「冷たい!」
「温泉のあとだと余計うまいな」
「うん!」
飲み終えて部屋へ戻ると、拓也はベッドへ横になった。ノエルもすぐ同じベッドへ上がってきて、拓也が少し端へ寄ると、その横で身体を丸める。
「旅行、楽しかった?」
「楽しかった!」
「ダンジョンまで行ったけどな」
「楽しかったよ!」
「ならよかった」
ノエルは少し黙ったあと、拓也の方へ顔を向けた。
「タクヤ、旅行連れてきてくれてありがとう」
「俺もノエルに感謝してるよ。ノエルのおかげで仕事も辞められたし、こうやって平日に旅行にも来れたし」
ノエルは少しだけ嬉しそうに尻尾を動かすと、また拓也の横へ顔を伏せた。
「また旅行行こうね」
「うん。また行こう」
そのまま話しているうちに、二人とも眠った。
翌朝、ホテルを出て家へ戻った。
荷物を置き、拓也はリビングのソファへ身体を預ける。
「あー……やっぱ家いいな」
ノエルもすぐ隣へ来て、ソファのそばで身体を丸めた。
「ここもいいね」
「うん。やっぱ落ち着くな」
ノエルはそのまま拓也の足へ顎を乗せる。
しばらく二人で何もせずに過ごしていると、ノエルが顔を上げた。
「お腹すいた」
「なんか食うか」
「タクヤが作って」
「俺が?」
「うん。タクヤのご飯食べたい」
拓也は少し笑ってからソファを立った。
「じゃあ牛丼にするか」
「ぎゅうどん?」
「牛肉と玉ねぎをご飯に乗せるやつ」
「お肉?」
「お肉」
「食べる!」
冷蔵庫から牛肉と玉ねぎを取り出し、拓也はキッチンへ立った。
玉ねぎを切り、鍋で牛肉と一緒に煮る。調味料を入れて火にかけていると、カウンターの向こうにいたノエルの鼻が何度も動いた。
「いい匂い!」
「もうちょいな」
「早く食べたい」
「今作ってるって」
炊いてあったご飯を器へよそい、その上から牛肉と玉ねぎを乗せる。
二人でローテーブルへ移り、食べ始めた。
「おいしい!」
「よかった」
「タクヤのご飯、やっぱりおいしい!」
拓也も牛丼を口へ運ぶ。
旅行先で食べた料理とはまた違って、妙に落ち着く味だった。
「こういうのもいいな」
ノエルが何度か頷きながら食べる。
「家もいいね」
「俺もそう思う」
「でもまた旅行行こうね!」
「もちろん。また行こう」
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