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第38話 旅行二日目

 翌朝、拓也が目を覚ますと、すぐ隣でノエルがまだ眠っていた。


 昨夜は起きていると言い張っていたのに、結局そのまま寝てしまったらしい。拓也の腕の近くに白い身体を寄せたまま、規則正しく息をしている。


 拓也は少しだけその寝顔を見てから、枕元のスマートフォンを取った。


「……まだ七時半か」


 画面を見ていると、隣でノエルの耳が動いた。


「ん……」


「おはよう」


 ノエルはゆっくり目を開ける。しばらく拓也を見たあと、身体を伸ばした。


「おはよう」


「朝飯行く?」


「行く!」


 さっきまで眠そうだったのに、返事はすぐだった。


 身支度を済ませ、二人で一階のレストランへ向かう。


 朝食もバイキングだった。


「朝もいっぱいある!」


「昨日とは結構違うな」


 夜に並んでいたステーキや刺身とは違い、焼き魚や卵料理、ソーセージ、パン、サラダなどが並んでいる。拓也は和食を中心に取り、ノエルは肉や卵を見つけるたびに足を止めた。


 昨日の夜ほど何度も料理台を往復はしなかったが、それでもノエルは朝からよく食べた。拓也もご飯と味噌汁をおかわりし、最後にコーヒーを飲んでから部屋へ戻った。


「食べたな……」


「おいしかった!」


 部屋へ戻ると、拓也はそのままベッドへ横になった。


 カーテンの向こうには朝の海が見えている。テレビをつけ、しばらくニュースを眺めたあと、スマートフォンを手に取った。


「今日はちょっとゆっくりするか」


「うん」


 ノエルも最初は隣のベッドへ上がった。


 けれど長くは続かなかった。


 少しするとベッドから下り、窓の前まで行く。海を見たあとで拓也のところへ戻り、また部屋の奥へ歩いていく。


 拓也はスマートフォンから顔を上げた。


 ノエルは今度はテレビの前で止まり、しばらく画面を見る。そのまま座るかと思ったら、また立ち上がった。


「……暇?」


「ちょっと」


「もう飽きたの?」


「でももうゆっくりした」


「早いな」


 ノエルは拓也のベッドの横まで来る。


「タクヤ、遊びに行こう!」


「今から?」


「うん!」


 拓也はスマートフォンを胸の上へ置いた。


「どこ行きたい?」


 ノエルは少しも迷わなかった。


「ダンジョン!」


「……旅行に来てまで?」


「行きたい!」


 拓也は思わず笑う。


 昨日は港や灯台を回って、温泉にも入った。旅行先でわざわざダンジョンへ行くとは考えていなかったが、ノエルはもう行く気になっている。


「近くにあるかだけ見てみるか」


「ある?」


「今調べる」


 拓也は身体を起こし、スマートフォンで周辺のダンジョンを検索した。


 いくつか表示された中に、Cランクのダンジョンが一つある。ホテルから車でそれほどかからない場所だった。


「Cランクあるな」


「C!」


 ノエルがすぐ横まで来る。


「Dクリアしたから、次ここだよね?」


「そう。次はCだな」


「じゃあここ行こう!」


「ちょっと待って。先にちゃんと調べないと」


「まだ行かないの?」


「Cランク初めてだし。何出るか分かんないまま行くのはちょっと怖い」


 拓也はそのダンジョンの情報を開いた。


 出現するモンスターの一覧には、オーガとリザードマンの名前が並んでいる。オーガはDランクで何度も見たオークよりさらに大柄で、リザードマンは剣や盾を使うらしい。


「これか」


 拓也がオーガの画像を開くと、ノエルも横から画面をのぞいた。


「大きいね」


「オークより一回りどころじゃないな」


 そのまま実際の探索動画を開く。


 四人組が一体のオーガと戦っていた。大きな盾を持った男が正面で攻撃を受け、その間に左右から二人が攻撃する。少し離れたところから魔法も飛んでいた。


 拓也は途中で一度動画を戻した。


「このくらい距離取るのか」


「タクヤも?」


「俺は前に出ないけど、近づかれた時の動きは見ときたい」


 別の場面では、通路の曲がり角からリザードマンが二体続けて現れた。一体へ意識が向いたところで、もう一体が横へ回ろうとしている。


 Dランクで横道から出てきたオークに襲われた時のことを思い出す。あの時は避けられたが、今度も同じ形で来るとは限らない。


「こういう方が嫌だな」


「タクヤ、横から来ても避けられたよ」


「一回避けられたからって、毎回できるとは限らないだろ」


 拓也は動画の説明欄から攻略マップも開いた。入口から先はいくつも道が分かれ、注意点の書き込まれた場所もある。曲がり角や分岐が多いところを見ながら、さっきの動画と位置を重ねていく。


 隣で見ていたノエルは、しばらくするとベッドへ顎を乗せた。


「まだ?」


「もうちょっと。ここだけ見たら終わる」


 拓也はマップを少し動かし、入口付近の道をもう一度確認した。


「よし、行くか」


 ノエルがすぐに顔を上げる。


「行く!」


 拓也はベッドから立ち上がった。


 スーツケースから小さなリュックを取り出し、飲み物とタオルを入れる。スマートフォンの充電も確認した。


「途中でなんか食べるものも買っとくか」


「お肉?」


「昼飯な」


「お肉がいい!」


「店見てから決めよう」


 財布と認証カードも確認し、リュックを背負う。


 ノエルはもう扉の前まで行っていた。


「タクヤ、早く!」


「今行くよ」


 拓也は部屋を一度見回してからカードキーを持ち、ノエルと一緒に外へ出た。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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