第24話 Dランクダンジョン攻略
日曜日の朝。
朝飯を食べ終えた拓也は、ローテーブルの上の食器をまとめながらノエルを見る。
「今日は何する?」
「今日?」
「うん。なんかしたいことある?」
ノエルは少し考えたあと、すぐに顔を上げた。
「ダンジョン行きたい!」
「やっぱりそっちか」
「Dランク、まだクリアしてないよね?」
「してないな」
「じゃあ今日クリアしよう!」
昨日は朝から特訓して、そのあとゲームセンターやおもちゃ屋へ行き、帰ってからもずっと一緒に遊んでいた。今日はどうしようかと思っていたが、拓也もDランクの続きは気になっていた。
「よし。今日は一日空いてるし、奥まで行ってみるか」
「行く!」
ノエルの尻尾がすぐに動き始めた。
前にDランクへ行った時は、入口の近くだけ回って帰ってきた。それでも五万円ほどになった。
今日は奥まで進んで、できればそのままクリアする。
拓也は前に使った小さなカバンではなく、家にあったしっかりしたリュックサックを用意した。
途中で店へ寄り、昼飯のサンドイッチと飲み物も買う。自分の分に加えてノエルの分を次々かごへ入れていると、思った以上の量になった。
「これ全部僕の?」
「全部じゃない。俺も食べる」
「いっぱいある!」
「ノエルがどれくらい食べるか分かんないから、多めにしとく」
「僕いっぱい食べるよ!」
拓也は笑いながら会計を済ませ、買ったものをリュックへ入れた。
Dランクダンジョンの管理施設へ着くと、前と同じように装備を整えた探索者たちが行き来していた。
今回は拓也も背中にリュックを背負っている。武器も防具もないので周りと比べれば相変わらず軽装だが、前よりは少しだけ探索へ来た格好になった気がした。
「今日は奥まで行こうか」
「うん!」
認証カードをかざしてゲートを通り、二人でダンジョンへ入る。
拓也はスマートフォンでマップを開いた。
前回歩いた入口付近の通路はもう分かっている。その先には、まだ長い道が何本も伸びていた。
「こっから先だな」
「早く行こう!」
二人で奥へ向かう。
しばらくすると、前方にオークが現れた。
もう初めて見た時のように、姿だけで足が止まることはない。大きな身体と太い棍棒は今でも怖いが、隣にはノエルがいる。
「えいっ」
白い冷気が走り、オークがその場で凍って砕けた。
拓也は残った魔石を拾い、リュックへ入れる。
「一個目」
「もっといるかな?」
「たぶん。今日は長いからな」
「じゃあいっぱい倒す!」
そのあとも何度かオークと出会った。
一体ならもちろん、二体一緒に出てきてもノエルがほとんど近づけさせない。拓也は戦闘が終わるたびに魔石を拾い、リュックへ入れていった。
歩いたことのない通路を進み、分かれ道ではマップを確認する。前回より奥へ来ていることが画面でも分かり、拓也も少し楽しくなってきた。
「結構来たな」
「まだ奥あるよ!」
「ほんと広いな。今日はどこまで行けるかな」
「全部!」
「クリアするつもりだから、それが一番いい」
さらに進んだところで、前方からオークが現れた。ノエルがすぐに前へ出る。
「えいっ」
オークが白く凍ったその時、横の分かれ道から重い足音がした。
「え?」
拓也が顔を向けた時には、別のオークがすぐ近くまで来ていた。太い棍棒が持ち上がる。
「タクヤ!」
ノエルの声と同時に、拓也は右脚へ魔力を集めた。考えるより先に地面を強く蹴り、横へ飛ぶように避ける。直後、さっきまで立っていた場所を棍棒が通り過ぎた。
「うわっ……!」
拓也が数歩先で止まった時には、ノエルの冷気がオークへ届いていた。大きな身体が白く凍り、そのまま砕ける。
「タクヤ、大丈夫!?」
「大丈夫」
自分の脚を見る。
心臓はかなり速くなっている。それでも、ちゃんと避けられた。
「今の、できた」
「できた!」
ノエルがすぐそばまで走ってくる。
「タクヤ、ちゃんと避けた!」
「うん。練習したやつ、そのまま使えた」
「僕が教えたからね!」
「師匠のおかげだな」
「うん!」
ノエルの尻尾が大きく揺れる。
拓也も笑ってから、床に残った魔石を拾った。
危なかったのは間違いない。それでも、前ならノエルに守ってもらうしかなかった場面で、自分で動けたのは嬉しかった。
「これなら、避けるくらいはできそうだ」
「もっと練習する?」
「またやろう。今日は先に進みたい」
「じゃあ行こう!」
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