幕間 俺の唯一 3
それから1年もしない内にお嬢が生まれ、領地では、センバの後継ぎの誕生だ祖父母のお墓に報告だ、と、お祭り騒ぎだったらしい。
お嬢が領地に凱旋したら、それこそ、お祭り騒ぎになった。
そんなお嬢だが。
俺がお嬢を見て、最初に思った事。
オレ、勝てねぇな。
生まれたばかりの赤ちゃんなのに、何故か、俺はこの子に勝てないだろうと、わかってしまった。
だから、護衛じゃなくて、遊び相手で子守り役なんだな、と思った。
まぁ、お嬢は、とんでもなく元気だった。
これに付いていくのはセイラー様や乳母じゃ無理だった。
だから俺が選ばれたんだな、と思ったから、俺の役目をきっちりこなそうと思った。
お嬢が脱走すれば捕まえて部屋に戻し、
お嬢が泣いて暴れそうになったら、ベットを壊す前に抱っこし、
お嬢が興味を持ったおもちゃをブンブン振り回し、手から離れてしまったら、当たって壁を壊す前にキャッチし、
お嬢は何故かそれがお気に召したらしく、俺をめがけて投げてくる豪速球おもちゃをキャッチしまくる、等々。
お嬢の破壊活動を毎日阻止し続けた俺を〝一緒に元気に遊んでいるな!〞と称した叔父様には、一言、物申しても良いのではないだろうか?
そんなある日、魔の森が妙に気になった。
絶対そこに行かないといけないと思った。
叔父様にも「お前の勘は大事にしろ」と言われていたので、叔父様にお嬢を預け、魔の森へ走った。
気になる方向へ向かってどんどん進むと、グリフォンが真っ黒な物体を狙っていた。
小さい時、木の上にいた俺を襲おうとした、あの時のグリフォンだ!と思った俺は、先手必勝、とグリフォンに跳び蹴りをかまし追い払い、その真っ黒な物体を助けた。
そいつを抱き上げた瞬間、あ、コイツお守り様だ、と、わかった。
何してんだよ、お守り様、グリフォンになんか負けるなよ、と思いつつ、ぐったりしていたので、抱えてお屋敷に連れて帰った。
お屋敷にいた叔父様に「今回のお守り様です。汚いので洗います」と断ってからお守り様を洗ったら、驚きの白さに。
乾かしてぐったりしてるお守り様を叔父様に見せに行ったら、そばにいたお嬢が、高速ハイハイでお守り様にタックルかましそうだったから、今のお守り様がそれを受けたら死ぬな、と思ったから、お嬢をひょいと抱き上げて、ジタバタが収まってからお守り様の隣に置いた。
そしたら1人と1匹、仲良く寝始めた。
それ以来、俺の子守り対象は1人と1匹になった。
お守り様の子守り役ってなんだよ、と思いながら、お嬢のパワフル具合も格段に上がりやがって、俺の身体能力も上がった。
でも俺はその後1年で学園に入る年齢になったから、他のお嬢の遊び相手を募集したらしい。
俺よりちょっと年下のやつらが集まってメイドやら従者やらの教育を受けながらお嬢と過ごしたらしいが、
軒並み辞退したらしい。
誰も彼も、お嬢のパワフルさに怖気づいたらしい。
だから普通に大人のメイドや護衛がついている。
結局、俺が長期休暇の時、子守りを継続、帰る度に活動範囲も量も激しさも格段に上がりやがって、俺は、年齢差のアドバンテージが保てなくなるのも時間の問題だと思った。
まぁ、悔しいから、できるだけ食らいつくが。
そんな日々も3年経ち、長期休暇でもないのに、母親から連絡があった。
なんと、お嬢にコンヤクシャができるらしい。
コンヤクシャ?
婚約者?!
あのお嬢についていける人間が見つかったのか?!
そいつ、本当に人間か?!
…天使だ、天使がいる。
なるほど、あのお嬢に人間がついていけるわけがない。
天使ならさもありん。
「貴女を生涯お守りさせて下さい!」
なるほど、彼女を守るためには、兄上殿からの信頼を得る必要があるのだな?
かつ、兄上殿も守らねば、彼女の平穏は得られないと。
なに、侯爵家の仕事だと?は?6歳で?
人手がないのか?よし、俺が働くぞ!!官吏科だな?半年で終わらせる!!
俺の人生、きっと彼女を守るためにあるんだ。
お祖父様、お祖母様、見ていて下さい。
俺は、貴殿方のような守りきれる男になりたいのです。
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