師匠の助言と、しばしの別れ
その日の夜、一人になってから、自分の基本情報を確認する事にした。
「鑑定師匠、私の基本情報の表示、お願いします」
表示された画面をスクロールしていく。
「やっぱり竜巻、グレー表示のままですわよね。
鑑定師匠に言われた竜巻をマスターするのに必要な魔力制御、まだ身についていないですものね。
ちなみに鑑定師匠、ウィンドショットが狙った方向に飛ばないのは、なぜなのかしら?」
ピコン〝勢いが足りません。あと、単純に、集中力も足りません。
的だけ見てませんよね?飛んでる鳥とか足元の石とか、気になるのは、なぜなのでしょう?〞
おおぅ、バレてーる?!
ピコン〝鑑定師匠は貴女と運命共同体ですし?貴女の成長は鑑定師匠の喜びです〞
さっさと成長しろとのお申し出ですね?明日から頑張ります。
今日新たに追加された称号の確認をしなければ。
〝最終兵器の良心〞をタップ。
最終兵器の良心
最終兵器とは、エミリオを中心としたユーディリアを守る人物達の総称。
ユーディリアを守るために暴走しがちなため、守られるユーディリア本人が手綱を握る必要がある。
そのため、ユーディリアが見捨てた瞬間、最終兵器達は最終兵器足り得る行動を取る事が予想されます。
害悪認定されたモノは徹底的に排除される事でしょう。
ユーディリアの忍耐力、道徳心にかかっています。
しかし、鑑定師匠を始め、最終兵器達もユーディリアの幸せを切に願っています。
こまめにストレス発散しましょう。
こまめにストレス発散しましょうって!!
私の心の平穏が人類の平穏?!
とりあえず、最終兵器扱いされてるのは、お兄様とシラヌイ様って事で良いですかね?
ピコン〝エミリオに追随するイチイ、そしてロアも含みます。
センバ一族は、忠誠心が特に高いので、場合によってはヤクミ一門も加わる事でしょう〞
ハジカミやミツバ達も?!
ピコン〝もちろん、鑑定師匠も含みます〞
おおぅ…お兄様に鑑定師匠が付いたら、世界征服も夢じゃない気がする。
ピコン〝出来ますが、……望みます?〞
望みません!!!!
ピコン〝そんな貴女だから、鑑定師匠は貴女達を信じます〞
師匠ーーーー!!!一生付いていきます!!!
ピコン〝運命共同体です〞
そんなシラヌイ様達とのお茶会から数日、イチイ嬢と毎日一緒に訓練して、会話出来るようになってきたと思ったら、
私達が帰る日となった。
つまり、辺境伯御一行様達も荷物をまとめたら領地に帰る事になる。
「楽しい一週間を過ごさせて貰いました。ありがとうございました」
「私も、こんなに楽しかったのは人生で初めてです。すぐにお手紙お書きしますわ!イチイ嬢もお返事くださいましね?」
イチイ嬢は、涙でぐしゃぐしゃの顔で、高速でうなずいています。
「ぱばぁ、でんじざま、ごのまま、べ、へんぎょうに、づれで、ヒィック、いぎだい"ぃ"い"ぃ"ぃ"」
そう言って、辺境伯様の胸板を、なかなかの音で叩きまくっています。
「イチイも無理な事、わかっているんでしょう?」
アカシアくんを抱いた夫人が、イチイ嬢の頭を優しく撫でます。
「でぼぅ、でも"ぉ"」
ドスッドスッっと叩く音の凄みがもう一段階上がりました。
それを受け止める辺境伯様、すごいです。お兄様、若干引き気味です。
「夏、シラヌイ様の長期休暇の時、そちらに参りますわ。その時に、淑女教育の成果を見せてくださいませね」
「ああ、そうだった。僕との婚約のために、頑張って下さるんですよね?」
お兄様と二人、にっこり笑ってイチイ嬢を励ます。
「「期待してますね?」」
「ばい、はいぃぃぃ、がんばりますぅ!!」
「ロアくんも、イチイ嬢の事、お願いしますね」「ワン!!」
「このもふもふもしばらく触り納めか」
お兄様と二人、ロアくんの毛並みを堪能します。
「「では、また夏に!」」
「ええ、待ってるわ」
「坊主達も元気でな。ちゃんとメシ食えよ」
「ぶわー、ヒィック、で、で、でんじざまぁぁ」
馬車に乗り込み、窓から笑顔で手を振ります。
「「またな」ね」「ま"だでずぅ"ぅ"」
辺境伯ご家族の姿が見えなくなると、馬車の中、お兄様とぎゅっとしました。
こうして私達は、離れることの寂しさを学びました。
でも、この時の約束は果たせなかったのです。




