パワフルの次元が違う
辺境伯のお屋敷へ向かう馬車の中、お兄様と辺境伯令嬢についてのお話をしてみる。
「お兄様、辺境伯のご令嬢については、何かご存じです?」
「ほとんど知らないんだよねぇ。ハジカミに聞いても〝パワフルです〞としか言わないし」
「そうなんです、ミツバ達に聞いても、〝当時3歳のお嬢様に、魔の森の魔獣から守られた〞とか言うし。
それこそ辺境伯様に会ったばかりの頃〝魔の森を暴れまわる俺の天使〞とか言ってませんでした?」
「言ってた~。ディ、よく覚えてたね!」
エライエライと言って私の頭を撫でるお兄様。
「んもう、はぐらかさないでくださいまし!」
「でも、そう言いながら、頭を差し出すディが、たまらなく可愛い。
まぁ、セイラー夫人が僕達に令嬢と友達になって欲しいって前から言ってたからね。
アカシア君も僕達に懐いてくれてるし?
同じセイラー夫人のお子様なら仲良くなれると思うけどねぇ」
そう、エアトル家存続の危機茶会の際、セイラー夫人のお腹にいた赤ちゃんは無事に生まれ、アカシア君と名付けられた。
セイラー夫人は私達を大層可愛がってくれて、夫人の体調も落ち着いてきたら、魔法の訓練も再開してくださったので、ちょくちょくお邪魔しているのだ。
何故まだ王都に居るのかと言うと、今日お会いする令嬢の鑑定式を王都で行うため、それまで夫人とアカシア君は王都に居て、終わったら一緒に辺境へ帰るのだという。
そして、今日、鑑定式を終えた後、身内でお祝いのパーティーを開くからとご招待頂いたのだ。
「夫人の魔法訓練ももう受けれなくなるのですね。
アカシア君のぷにぷにほっぺも触り納めかと思うと寂しくなります」
「確かに、アレは中毒性がある。
でも本来の家族の元に戻るんだし、今日は笑顔で過ごそうね」
「ハイお兄様。お兄様とは離れませんから!」
「もちろん!」お洋服がシワになってはいけないので、お兄様とは手を繋ぐだけにとどめておいた。
お屋敷に到着すると、会場へ案内された。
本当に身内だけのパーティのようだった。
夫人を見つけたので、ご挨拶に伺う。
「センバ辺境伯夫人、本日はおめでとうございます。ご令嬢にささやかですがプレゼントをお持ちしました。気に入ってくださると良いのですが…」
お兄様が挨拶をする。
「あらあら、まぁまぁ、ご丁寧にありがとう。
もうすぐ本人が皆様に挨拶するから、その後、本人に直接渡してあげて?」
「よろしいのですか?」
「ええ、今日は王都に居る身内しか呼んで居ないから。
本番は辺境に戻ってからよ。あっちには呼ぶ人が大勢いるから、その前の練習として今回開いたのよ。
ごめんなさいね、練習に付き合わせちゃって」
「とんでもない。こちらに居る間は、いくらでも僕達を使って下さい。
それ以上の恩が夫人にはありますから」
「まぁまぁ、相変わらず良くできた子達だわぁ。
子供は恩とか考えないで、〝ありがとう!〞って、おもいっきり受け取っておきなさい。
ウフフ、それだと気に病むなというなら、大人になったら助けて貰おうかしら?
あ、一応今日来ているのは、ニワトコの妹夫婦。
彼らは、センバで生産される魔獣の素材や薬草なんかの取引をする商会の会長ね。
それと、それを補佐する従兄弟夫妻。
彼らはほとんど王都に居るから、後で挨拶しましょうね。
そろそろ挨拶の時間だから、一度失礼するわね」
「お忙しい所、わざわざお時間頂戴してありがとうございました」
お兄様がそう言うと、夫人はニッコリ笑ってお兄様と私の頭を撫でてから、手を振って去っていった。
お兄様と二人、飲み物を貰って、壁側で大人しく飲んでいるとセンバ辺境伯様の声が響いた。
「本日は我が娘の鑑定式のお祝いパーティーに来てくれてありがとう!
早速だが、我が家の愛娘を紹介しよう!!
イチイ、おいで!!」
「はーーーーい!!!」
元気な声が聞こえたと思ったら、扉がバーンと開いて、なんかちっこいのが飛び出して来た!
と思ったら、ジャンプして、シャンデリアに掴まり一回転して、手を離したと思ったら空中で3回転してセンバ辺境伯様の隣にシュタッと着地した。
そう、前世の体操選手のように。
しかも、ドレスで。
私とお兄様はあんぐりと口を開けて、
扉に取り残されていた夫人は、片手を上げたまま、額に手を当て天を仰いでいた。
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