辺境伯御当主様 3
「笑ってしまって、ごめんなさい。
辺境伯様と先生がこんなに気安い関係だと思わなくて。
先生のことを〝テン爺〞と呼ぶのですね。
辺境伯様が先生からどう聞いているのか、僕達の希望の擦り合わせ、一旦、落ち着いて話ませんか?」
お兄様が、場の仕切り直しを提案してくれた。
「なんて良くできた子なんだと思いませんか、辺境伯様。本来なら、一番偉い貴方がするべきことを…」
先生は辺境伯様にぶつぶつ言っていたが、皆でお茶をする事にした。
辺境伯様の希望で、部屋ではなく、お庭にお茶を用意して貰った。
「こんなに良い陽気だし、さすが侯爵家、庭も整えられておって、気持ちいいではないか」
「ありがとうございます。アン達は何かあったら呼ぶから、下がってていいよ」
アン達は見えるけど話の聞こえない位置まで下がって行った。
「ああ、さっきの話だが、このテン爺は、俺の親父の友人で、俺が小さい時から怪我をしたら診てくれていたんだ。名前がナンテンだから、テン爺な。
テン爺には、頭が上がらん、って、睨むな、本当にそう思っているぞ!
さて、では、本題だ。
俺がテン爺から聞いていたのは、すごい才能のある子供達がいるが、でも親が教育に熱心ではなく、自分達で教えもせず、魔法の講師も見つからないから、何処か伝手はないものか?ということだな」
「それだけですか?」
「まぁ、聞いたのはそれだけだがな、今までテン爺が頼って来たことなど無かったからな、不思議に思って、少し、調べた」
「少し、調べた?」
「坊主は随分頭の回転が良いな?
残念なことに、少し調べただけで、ざくざく出てきたぞ、エアトル家の悪評。
俺のマイスイートハニーも言ってたが」
「「マイスイートハニー??」」
お兄様と声が揃ってしまった。
「おお!聞きたいか!俺のマイスイートハニーはな、そりゃぁもう美人で、残念だがここの庭の花達も俺のマイスイー」「辺境伯様、話が進みません、先にお二人の未来について決めましょう」「おおぅ、テン爺、圧が増したな」
「辺境伯様がおっしゃっているのは、辺境伯様の奥様です。奥様にもお話になったので?」
「俺はマイスイートハニーにはなんでも話すからな、それに社交界の噂ならマイスイートハニーに聞いた方が早いだろう?
どうする、聞きたいか?この家の評判」
お兄様と顔を見合せた後、二人でハイ、と答えた。
「俺は言葉を飾れないからな、直接的だぞ。
エアトル家現侯爵は領地から出てこないが、領地での振る舞いは傲慢で、爵位に物を言わせて横車を押すこともあるそうだ。
王都では、次期侯爵夫妻の仲は最悪、次期侯爵は愛人を伴ってパーティーに参加、嫌悪感と失笑を買い、次期侯爵夫人は高位貴族に嫌われて茶会にすら誘われないから、下位貴族のお茶会に参加してはマウント取りに勤しんでいる。
そして、子供は、夫婦仲の悪さから居ないものと思われていた。
しかし、とある高位貴族の子息が鑑定式を受けた際、エアトル家の子供が鑑定式を受けたと、しかも双子で、その魔力は膨大であったと教会から噂が漏れた。そして、その姿は、あの親よろしく傲慢で、家令に全てを押し付けて早々に立ち去った、なんて尾ひれもついてるらしいぞ」
「「えええぇ」…でも、辺境伯様、よくこんなに評判の悪い僕達に会おうと思いましたね?」
私は頭を抱えるだけだったけど、お兄様はきちんと受け答えしてくれていた。
「逆にな、こんだけ評判の悪い家のクソガキ、見てみたいと思わんか!」
ガッハッハと辺境伯様は豪快に笑った。




