亀の必殺技では通じない
「魔力が巡るのを感じて、手のひらに集めるように、集めるように…」
お兄様がつぶやきながら、目を閉じて集中している。
「さっきディがやったみたいに、手のひらから、ポン」
ぶおお~っと、お兄様の手のひらから、風が出てきた。
「「えええええ~っ?!」亀の必殺技がぁ~!」
「え?必殺技?」
驚いた顔のまま、お兄様がこっちを向く。
「なんでもありませんわ!
そんなことよりお兄様、いきなり風魔法として出てきたじゃないですか!!」
お兄様、天才すぎですわ。
1回見ただけで魔力放出が出来ただけじゃなくて、ちゃんと風が出るんですもの。
ただ、亀の必殺技で出して欲しかったという、私のささやかな願望が潰えただけですわ。
「ディの教え方が良かっただけだよ?実際見て、感じたから出来たことかな」
「それでも!見ただけで、やってのけてしまうのがお兄様ですわ。格好いいですわ!!」
「ありがとう、ディに褒められるのが一番嬉しいよ。で、鑑定師匠は次に何をすると良いって教えてくれてるの?」
「はい!あ、一応カモフラージュ教本としてお渡しした、侯爵のお祖父様の弟さんの軍事報告書、ありますか?」
「うん、これだね?ああ、ウィンドカッターやウィンドショットのこと?この方、報告書丁寧に作ってくれてるの助かるね。この方が侯爵を継げばマシな人材が侯爵だったのに」
「そうなんですの?」
「うん、今でも領地の軍事を任されてるお家だよ。エアトルの分家で伯爵家になってる。魔物の討伐とか、盗賊の取締りとかもこの家がやってくれてる。
この家と、あと、領地代官の同じく分家の伯爵家が居てくれることで、侯爵領はもってるんじゃないかな」
「え?お祖父様は、何をなさっていますの」
「さぁ?人ん家の金でふんぞり返ってるんじゃない?
さすがクズの製造元、っていつも言ってるでしょう?
だから、僕達も分家に敬遠されてるんだって」
「ええええぇ…お兄様、私達の代になったら、領地の皆様と仲良くなって、お兄様と幸せに暮らしたいです」
「仲良く無くても、侯爵とクズ両親は好き勝手に幸せそうだけどね!」
「ギスギスした中で平然と自分の要求だけ主張する、私には無理です…」
「まぁ、あまりやりたい事では無いよね。いつ、裏切られるか分かんないよね~。
アイツらそのうち寝首掻かれないかなぁ~」
「お兄様?!」
「ああ、でも、今居なくなられても困るか。せめて、僕が侯爵を継ぐ、ぐらい周知されてからじゃないと、ちょっと面倒くさいかな~」
「ではその時に、私達は排泄物達とは違いますよ~って、一緒に周知してくださいませ!
心休まる生活環境、大事!!!」
「ハハハ!確かに!ディと安心して暮らしたい!って、話が逸れてる!」
「ハッ!そうですわ!魔法の訓練してたんですわ!」
そうです!魔法として亀の必殺技を出して貰えば良いのでは?




