あっという間に1年ですわ
1年、怒涛のように過ぎて行きました。
お兄様は領地の仕事に追われ、
私はお兄様の補佐を学び、
チィちゃんはホネマントから力加減を教わり
ライ様とセリは本当に半年で学びを終わらせて領地へ戻ってきてくれて
新年のお祝いにとセイラー夫人が領地を訪れてくれて、帰りはチィちゃんを強制連行し
アスビル商会の若旦那様を伯父様とお呼びする仲になり、お兄様はわりと長く話し込み
春が来て庭で薬草を植え始め
王都からの報告書に頭を抱える中、義妹だけは頑張って学んでいる、というのが王都の使用人達の唯一の慰めである、
そんな現状の中。
8歳を迎えた私達。
お兄様が深刻な顔をしています。
「お兄様、どうしましたの?」
「ディ、ちょっとマズイかもしれない」
「え?何がですの?」
「春が過ぎ、夏になろうとしているのに、気温があまり上がってない気がする。
冷夏かもしれない」
「え?小麦とかが育ちにくいかも?」
「うん。それに我が領地はそこまで蓄えが多くない」
「まだ安いですわよね?買っておきますか?」
「うん。アスビル商会の伯父様に数ヶ月は援助ではなく、小麦の備蓄分を頼もうと思う。
ちょっと不便かもしれないけど、大丈夫?」
「はい、お洋服も全然着れますし、なんだったら、リメイクしますわ。アクセサリー類も売ります?」
「いや、まだいい。もし、冷夏だけじゃなく、他にもあった時のために取っておいて。
ごめんね、本当はもっとディを飾りたいんだけど。ディの物に手をつけるのは最終手段だ」
「私そこまでアクセサリーに執着していないので、大丈夫ですわ。
それよりも、お兄様が忙しすぎてお身体壊さないかの方が心配ですわ」
「ディが優しすぎるーーー」
「お兄様ーーー」
二人でぎゅーっとしますわ。
ああ、安心しますわ。大きくなっても続けてくださいませ、お兄様。
そしてこの年の夏、去年と同様チィちゃんがやって来た後、お兄様の予想通り、あまり気温が上がらず、作物の育ちもあまり良くない中、徐々に小麦の値段が上がっていきました。
「ねぇ、お兄様、小麦以外に主食になりえる安いもの、ないんですの?」
「ああ、芋とか?」
「お米はないですか?お米は!?」
「イチイ?」
「古古米とかやっすいですよね?!」
「ココマイ?」
「新しく作物が取れたものを備蓄に回して、備蓄してた物を放出して、とキチンと循環させてる領地があれば、その放出された備蓄が前の年やもっと前の物なので、安いんですわ」
「うーん、センバ商会やアスビル商会に聞いてみよう。
僕たちはその商会に頼ってばっかりだよね、いつか恩返ししないとね」
「「はい!」」
そこにホネマントがやって来ました。
「おい、エミリオ今年こそは領地を巡れ。
天候が悪い時、領主が顔を見せて話を聞いてやれ。不満が募れば瘴気は溜まりやすいぞ」
「ああ、それもあったかぁ」
「双子でこんな子供が可愛く頑張ってます、なら領民もなら自分達も頑張らないと、ってなってくれないかしら?」
「大人なにしてんだよ、って余計に怒りを溜めないかな?」
「「はぁ、まず、やってみないとね」ですわ」
お兄様と不甲斐ない大人の尻拭いに回りますわ。
ふと思ったのですが。
これ、本来の物語だったら、センバやアスビルの援助もなく、
チィちゃんやライ様なんかの助力もなく、
お兄様一人でやってましたの?
…そりゃ、心を病んで当然でしょうに。




