未訪の街 セントロ
俺は空間をゲートのようにこじ開け、アイテムボックスと空間を繋ぐ。そして、無造作に積まれた荷物をせっせと運んでアイテムボックスに収納していく。この魔法があるが故、運搬クエストへの適正は他の人よりもあると思うが、それでもアイテムボックスと荷物の間を何度も往復する必要はあるといった細かな手間まではなくせない。
そんなこんなでアイテムボックスと荷物の間を二往復ほどしたところで、それを見ていたカイルとリオンが動き出した。
「俺たちが荷物をお前のところに集めるから、ツバサはそこにいろ! リオン行くぞ」
「あぁ、カイルに言われなくともやってやる!」
カイルとリオンの働きにより、無造作に積まれていた荷物は次々と俺のそばに積まれ、それを俺はアイテムボックスに収納していく。気がつくと、無造作に積まれた荷物はすべて俺のそばに集まっていた。
「これで全部っぽいね。二人ともありがと」
「これくらい、気にすんなって」
「そうだな、今回のクエストはツバサの力があってのことだからな」
俺たち3人の連携により、俺たちの出発前に必要な準備はあっという間に終わった。こういうところは、さすがパーティといったところか。
「荷物を運ぶ準備は整いましたけど、出発はいつ頃にしますか?」
「あら、思ってたよりも早いね。僕の出発準備がまだ残ってるから、悪いけどもう少し待っててもらえるかな?」
俺たちの出発準備が終わった旨を伝えると、ルーカスさんの準備が終わっておらずでしばしの待ち時間となった。まぁ、俺たち冒険者がクエストを受注するタイミングは依頼側ではどうしようもないことだし、それを思うとこんな即日で準備が済ませられるだけでもすごい話だ。
やがて、出発の準備が整ったルーカスさんとともにスカイバードに乗り込み、セントロを目指して飛び立った。
◇
「ここがセントロかぁ……」
スカイバードから降りると、早くも街の子どもたちと思われる活気に満ち溢れた声が俺の耳に届いた。いても立ってもいられずスカイバード乗り場の外に出てみると、ポロッサと比べると長閑な街並みが目の前に広がる。そのまま辺りを見回すと、すぐ隣が遊べる広場となっており、血気盛んに遊ぶショタたちの姿があった。
「いやぁ、男の子たちが元気に遊んでいる姿はいつ見ても癒されるなぁ……」
「うんうん、ホントだな。こんな光景、ポロッサじゃあ見れないもんな」
あれっ? 俺、無意識ののうちに心の声が口から漏れていた? 近くから聞こえた相槌に驚いて隣に目をやると、俺と同じく広場を眺めるリオンの姿があった。
俺とリオンの二人が広場で遊ぶショタに見惚れていると、後ろからルーカスさんに声をかけられた。
「どうかな? この街はポロッサに比べると田舎くさいと思うかもしれないけど、そんなに悪くないと思わない?」
「えっ……あ、はい。こういった落ち着いた雰囲気の街も好きですよ」
まさか、ショタたちの姿に見惚れていたなどと言えるはずもなく、俺は咄嗟に無難な返答をする。俺は嘘偽りを言ったわけでは決してないが、カイルは疑うような目で俺のことを見ていた。
とりあえず、下手に墓穴を掘ってしまう前にクエストの話に戻すことにしよう。
「ところでルーカスさん、預かっている荷物はどちらまで運べば……?」
「あ、そうだったね。それじゃ、ここからそう遠くない場所にあるから僕についてきて」
俺の一声をきっかけにルーカスさんが歩きはじめ、俺たちもその後ろをついて歩きはじめた。
スカイバード乗り場の周辺は、まだ街の中心部だからかちらほらとお店もあったが、そこから離れるにつれて住宅の割合が増えてきた。たしかに、ルーカスさんが言うようにポロッサほど栄えてこそいないが、それでも生活に必要なものは十分に揃えられるだけの環境はしっかり整っているように見える。
「さ、着いたよ! 何も用意はできないけど、遠慮なく入っちゃって」
少し歩いたところで目的地に到着した。案内された先にある建物は、そこかしこにある二階建ての住居だった。
早速、中にお邪魔すると、内装は汚れ一つなく綺麗で新築であることに間違いなさそう。荷物の詳細までは聞いていなかったが、恐らくは生前でいうところの引っ越し代行に相当する依頼だったのだろう。
まぁ、そんなことはさておき、早いところ最後の仕事を始めるとしよう。
「早速ですが、運んできた荷物はどこに置きましょうか?」
「うーん、そうだね……。とりあえず、そこの壁際にでも積んでおいてくれるかな」
「わかりました」
ルーカスさんに荷物の置き場所を訊ねると、悩む素振りを見せながら一辺の壁に向かって指をさした。その後、俺は再びアイテムボックスを開けてルーカスさんの荷物を取り出すと、それをカイルとリオンの二人がせっせと壁際に積みはじめた。
案の定、それほど時間はかからずに運んできた荷物を壁際に積み終わり、今回の運搬クエストも終わりを迎えた。




