まだ見ぬ街を目指して
アルフレッドさんとの話も終わり、次に受けるクエストを決めるべくクエストボードのもとにやって来た。
「ところで、俺たちはいつもどおりクエストをこなす日々に戻ろうかと思ってるんだけど――、リオンは何か予定とかある?」
リオンとは元々、緊急クエストを受ける上で行動をともにしていた関係だ。俺やカイルとも気は合っていたと思うが、その緊急クエストが終わった以上、行動をともにする理由はなくなったともいえる。
「いや、予定は特にないな」
「そっか――だったらさぁ、もう少し俺たちと一緒に行動しない? ――って言っても、冒険のつもりで行ったことのない場所のクエストを受けるだけだけど。カイルもいいよね?」
「そうだな、俺も構わないぜ」
「え、俺なんかがツバサたちのチームに加わってホントにいいのか? ツバサやカイルがいいっていうなら、もう少しよろしく頼むな!」
思い切ってリオンを誘ってみると、リオンは俺が訊く前から決めていたと言わんばかりの早さで即決した。出会いがあれば別れもあるとはいうが、どうやら、まだそのときではなかったようだ。
「こちらこそ、改めてよろしくね。――それじゃ、早速だけど、リオンはポロッサ以外の街って行ったことはある?」
「俺か? もちろん、俺は生まれも育ちもポロッサで、他の街には行ったことなんてないぜ!」
俺がリオンに訊ねると、リオンはふふんと鼻を鳴らしながら自慢げに答えた。
つまり、俺やカイルも含めて、ポロッサ以外の街を詳しく人はいないというわけだ。もっとも、俺の生前の話を引き合いに出せるなら、いくらでも他の街に行ったことがあるとも言えたんだけどな……。
――だが、返ってそれがちょうどよいのかもしれない。図らずも冒険者ランクが上がったことで、俺たちが受けられるクエストの幅も広がった。
「とりあえず、次に受けるクエストをみんなで探そっか」
俺がそう言うと、次に受ける無難なクエストを各々で探しはじめた。
◇
「お? このクエストとかどうだ? ツバサの手にかかれば楽勝じゃね?」
色々と並ぶクエストを眺めていると、これから受けるクエストの候補を見つけたリオンが声を上げた。
「どれだ? ――うぉ! たしかにツバサなら余裕で達成できそうだ。間違いないな」
真っ先にカイルが駆け寄っていくと次の瞬間、カイルもリオンと同じような反応を示した。――一体、どんなクエストなんだ?
「どんなクエスト? 俺にも見せて?」
俺もリオンたちのもとに駆け寄ってそのクエストを見せてもらうと、セントロと呼ばれる街まで荷物を運ぶ旨が書かれていた。――なるほどね。とりあえず、俺なら楽勝と言っていた意味が一瞬でわかった。
要は俺が使うアイテムボックスに荷物を収納してしまえば、あとは単にセントロまで移動するだけでクエストは終わり……といったところだろう。俺自身もこのクエストには何の異論もないが、何かものすごく利用されている感が否めないな……。
俺たちは早速、受付に行ってクエスト受注の処理を済ませて依頼主のもとへと向かった。
◇
「ルーカスは僕だけど……依頼を受けてくれた冒険者ってのは、君たちのことかい? 運んでほしい荷物は結構あるんだけど、君たちだけでホントに大丈夫?」
「俺たちがガキだからって、あんまり俺たちを見くびらない方がいいぜ?」
依頼主であるルーカスさんは俺たちを見ると、開口一番で心配を漏らした。まぁ、ルーカスさんからしてみたら年端もいかないガキが3人だけなのだから、無理もない話ではあるが。
リオンが即座にそれを一蹴したが、こんなことで揉め事になるのも御免なので、俺は話しを逸らすつもりでクエストの話を進める。
「はい、大丈夫だと思いますよ。それで――、セントロまで運びたいという荷物はどちらに?」
「それならこっちにまとめてあるよ。ついてきて」
荷物の詳細について訊ねると、俺たちは荷物が置かれた保管庫まで案内された。
「運んでほしい荷物はこれらね。荷物を運ぶ手段は君たちに任せるけど、この量だから馬車か何かは必要だよね? 馬車を手配するにも予約がいるだろうし、今日のところは日程を決めるだけになると思ってるけどどう?」
案内された先には、箱詰めされた荷物がずらーっと並んでいる。とはいえ、呆れ返るほどバカみたいな量ってわけでもなく、見た感じだとアイテムボックスで即日対応も十分にできると思う。ただ、これは逆に急すぎる話でルーカスさんの予定が問題ないこと前提の話だが。
「これで全部ですか? ――これくらいの量であれば今日中にでも運べると思いますが、どうしましょうか?」
「何だって!? これくらいって、結構な量だよ!? 一体、どうやって運ぶつもりなの?」
俺がスケジュールを問うと、ルーカスさんはすごく驚いた顔になって方法を訊いてきた。たしかに、俺が予定している運搬方法もわからないままじゃ、信用もできないか。
「僕、アイテムボックスっていう空間魔法が使えるので、荷物はそれに収納してセントロまではスカイバードでの移動を考えてました」
「なるほどね、空間魔法が使えるのか。それは願ったり叶ったりの話だし、むしろこちらからお願いしたい。君たちがいいなら、今すぐにでもスカイバードを手配するよ?」
「はい、お願いします」
俺は空間魔法を使えることを明かすと、ルーカスさんは考える間もなく頭を下げた。
これなら、今日中にセントロ入りするだけでなく、少し街で遊ぶ時間すら作れそうなまである。そうと決まったら早速、俺はここに置かれた荷物の収納に取りかかり始めた。




