緊急クエスト
昨日は丸一日かけてたっぷりと休息を取って、今日は二日ぶりの冒険者ギルド。休息とはいいつつ、いまだゴキブリの一件が頭から離れておらず、完全に休まったかと聞かれると微妙ではあるが……。
それはさておき、ギルドに到着するもアルフレッドさんをはじめ、ギルドの従業員が色々な冒険者に呼びかけて回る異様な光景が目に留まった。
「何か今日はやけに騒がしいな」
「うん、何かあったのかな?」
ギルドの入り口付近で立ち止まっていると、俺たちの存在に気がついたのかアルフレッドさんが俺たちの方にやって来た。
「おぉ、ツバサとカイルか。おはよう、丁度よかったぜ」
「おはようございます。皆さん朝からすごく忙しそうですけど、何かあったんですか?」
「あぁ。詳しいことはあとで話すが、お前たちにも頼みたいことがあるから、ギルドの闘技場に集まってくれないか?」
「は……はい、わかりました」
アルフレッドさんから感じるただならぬ気迫にノーと言えられる気もせず、俺たちは言われるがまま闘技場へ向かうことになった。
闘技場に来ると、俺たちと同じように声をかけられたと思われる冒険者の人たちが30人ほど集まっていた。パッと見たところ、ここに集まる冒険者のほとんどが15~20歳くらいで俺たちよりは年上のように見える。俺たちの後にも続々と冒険者が集まっており、程なくして50人くらいになった。
「すまん、みんな。待たせたな」
しばらくして、アルフレッドさんとその後ろから俺たちが冒険者適正テストでお世話になったマークさん、エリックさんも闘技場に現れた。アルフレッドさんたちの登場で、瞬く間にしてこの場に緊張感が張り詰める。そんな中、早速、アルフレッドさんによる状況説明が始まった。
「早速で悪いが、ちょっとばかし人手が必要なクエストが緊急で発生した。そこで今回、みんなに力を貸してほしいと思い、この場に集まってもらった」
緊急ってことは、早急に解決する必要がある問題が起きたってことだよな。――だが、それにしては、この場に集められた冒険者は俺たちも含め、経験の浅そうな若めな人が多い気がする。つまり、クエストの難易度自体はそれほど高くないってことなのかな?
集められた冒険者の傾向を色々と考える中、アルフレッドさんは淡々と話を続ける。
「さて、肝心のクエストだが、イレナルム鉱山から近くの場所にゴブリンの村が見つかった」
えっ!? イレナルム鉱山でゴブリンだって? アルフレッドさんの口から出た言葉に耳を疑いながら、カイルと顔を見合わせる。
「今、イレナルム鉱山のゴブリンって……」
「あぁ、俺にもそう聞こえたな。どういうことなんだ?」
よくわからないが、とりあえず、俺の聞き間違いではなかったようだ。
「先日、その近くの集落からゴブリンの討伐依頼が一件あった。その依頼はすでに解決しているが、そのクエストで討伐されたゴブリンは恐らく視察部隊で、今回見つかったゴブリンの一部の見立てだ。被害報告についてもまだないが、それも時間の問題だろうな」
なるほど……。たしかに、筋は通っているように思える。
「つまり、俺たちはそのゴブリンの群れを掃討するために集められた……そういうことか?」
今までの話から内容を察した冒険者の一人が、アルフレッドさんの話を遮るように言った。
「ご名答、その通りだ。敵の大半はゴブリンだが、だからと言って危険がないことの約束はできない。だから、参加を強制することもない。もし、ここまでの話を聞いた上でクエストを受けたくないヤツがいれば、退室してくれて構わん。――ただ、参加者には通常の報酬に加えて、多少だが手当を出すことは約束する」
アルフレッドさんの今の発言を機に、退室していく冒険者もちらほら見える。それについては、先日のカイルを見るに汚れ仕事な側面もあるから仕方のない話ともいえそうだ。
「聞くまでもないかもだけど……俺たちも参加でいいよね?」
「そんなの当たり前じゃねえか」
念のためにとカイルにも聞いてみるも、その答えは予想どおりで案の定なものだった。まぁ、ある意味では先日に受けたクエストの続きみたいな話でもあり、このまま辞退しても不完全燃焼になりかねないからな。俺たちもこの場に残り、退室する人たちを見届けた。




