表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

33/35

揺らぐ気持ち

「おっちゃん、串焼き三本!」


「あいよ、串焼き三本で900ティルだ!」


 露店のおじさんも働いている。


 冒険者が魔石を売って生計を立てているのと同様に、おじさんは串焼きを売って生計を立てている。


 だから新たなお客さんが現れれば、僕達のことは置いて相手をするのは当然のことだ。


 当然だけど、今の僕とティファを二人だけにしないでほしい。


 デートという言葉が何度も頭の中に現れ、埋め尽くしていき、それに連動するように心臓の音がうるさくなる。


 あぁ静まれ、僕の心臓!


 と、心の中で騒いでいる僕とは対照的に落ち着いているティファはその場でくるんとターン。


 僕と向かい合うかたちになると、ティファは片方の手に持った串焼きを差し出してくる。


「はい、どうぞ。シフォンの分です」


「あ、ありがとう……!」


 動揺を悟られないように心を落ち着かせ、串焼きを受け取る。


 再び並んで歩く僕達は、更に露店通りを進んでいく。


「はむ、んっ、美味しいですねシフォン」


「う、うん! そうだね!」


 味なんて分かんないよ……。


 串焼きを食べるティファの隣で僕も同じようにする。


 久しぶりの肉だというのに、味どころが食感すらもう良く分からなくなっていた。


 原因は分かっている。


 今も頭の中に居座る言葉、デートだ。


 それを考えているだけでポンコツになってしまうし、顔も熱くなってくる。


 けど、意識しているのって僕だけなんだよね。


 ティファは特に気にする様子も無く、美味しそうに食べているし。


 何でかな……。


 異性として全く相手にされていないような気持ちになってくる……。


「はぁ……」


 だからか、ついついため息が出てしまう。


「……シフォン。串焼きのお兄さんが言っていたデートって何ですか?」


 そんな感じで、一人で勝手に落ち込んでいたからか、ティファの言葉を良く聞いていなかった。


 僕は慌てて聞き返す。


「え? 何かなティファ、もう一度言って?」


「デートって何ですか?」


「……デート?」


「はい。デートです」


「今、聞くの?」


「今、聞きます」


「……すぐに聞かれなかったから興味ないと思ってたよ」


「興味が無い訳ではありません。串焼きを美味しく食べていましたから聞くのを忘れていただけです」


「それって食べることに夢中になっていたってことだよね」


「……意地悪な言い方です。シフォンは優しい人だと思っていたのに……」


「僕も男の子だからね。これくらい笑って許してよ」


「どういう理由で許せば良いのか分かりません。ですからさっきの質問に答えてくれたのなら許します。ではシフォン、デートって何ですか?」


「……僕も良く分からないけど、たぶん気になる人と色々なものを共有することだと思うよ。例えば時間とか、例えば感情とか。そういうものを共にして相手を深く知っていくためにするのがデートだと思う」


「……そう、ですか。それなら私とシフォンもデートしてますね。串焼きのお兄さんの言う通りです」


 そう言ってティファは微笑み、彼女の綺麗なパープルカラーの瞳は真っ直ぐに僕だけを映していた。


 ティファの顔が少し赤くなっていたのは僕の気のせいか。


 確かめる余裕も無く、顔が熱くなる。


 心臓が更にうるさくなる。


 だって、何とも思っていない相手にデートなんていう言葉は使わないと思うから。


 だから、僕はもうティファに見とれていた。


 ずっとそうだ。


 君と出会った時から目を離せずにいる。


 異性として全く相手にされていないと思っていた君からそんなことを言われると、色々なものが揺らいでしまいそうになるよ。


 僕は、ティファのことが──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ