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43 いつか最強の魔導師

 怒っているレクスをなだめる役目を任されたアナは、急いでレクスのあとを追ったものの、アナの足ではなかなか追いつくことが出来ず、やっと追いついたときにはすでにレクスの家の前だった。


「はぁっ、はぁっ…。レ…レクスさんっ!」

「ん…なんだ、アナか。何の用だ?」


 今現在レクスの表情はかなり険しい。

 やはりローパー討伐クエストでのファイのことがかなり頭にきていると思われる。

 だからファイをフォローするような発言だけは決してしてはならない。

 それを言ったらレクスの機嫌がさらに悪くなるであろうことは、アナにも容易に想像できたからである。


 ではレクスの怒りを鎮めるためにはどうしたらいいのか?

 その方法をアナは色々と考えてみたものの、何をしたらレクスが喜ぶか…などはいまいちよく分からない。

 そこでアナはとありあえず、シオンから言われたとおりに白いゴーレムの話をすることにした。


「あ…あのっ、レクスさんは光の矢の開発、何か進展ありましたか?」

「いや、たいしたことは…」

「ですよね。わたしのほうもまだ全然…」

「ひとまず普通の光で遠くまで飛ばせるか試してみたが、なんか光が変な感じになるだけで…」

「それ見てみたいです!」

「いや、全然光の矢からは程遠い感じで、全く使い物にはならん…」

「それでも何か参考になるかもしれないので、ぜひともお願いします!」


 アナはキラキラと目を輝かせながらレクスの手を握ってそう頼み込んだ。

 そしてこの状況は、シオンが期待していたものである。


 平常時のアナは男に対しての免疫があまりないので、たとえ相手がレクスであっても、自分から積極的に触れるようなことはあまりない。

 だが白いゴーレムについて話したり研究したりしているときはテンションが上がって、レクスの手を握ったり、抱き着いているとしか思えないような行動を取ったりすることが割とよくある。


 ゆえにシオンは考えた。

 レクスをなだめるために下手にアナに何かさせようとしても、アナが照れたり緊張したりしてしまってうまくいかないだろうが、白いゴーレムの話でもさせればテンションの上がったアナは自らレクスに触れる可能性が高い。

 そしてかわいいアナに触れられれば、レクスも決して悪い気はしないはず…と。


「まあ、構わないが」

「ありがとうございます」


 実際シオンの読みはそこそこ当たっていたのか、レクスの表情から少しばかり険しさが消え、そしてレクスは割とすんなりアナの頼みを了承した。


「じゃあ始めるぞ」

「あっ、ちょっと待ってください。魔導鏡かけますので…」


 アナは魔力の流れを目でとらえるための眼鏡型の魔導具、魔導鏡を装着した。


「はい、準備はオーケーです」

「ならいくぞ」


 レクスは光の剣のときに使用している短い杖を手に構えると、それに魔力を込め、その杖の先についている魔鉱石から光を放った。


 あの白いゴーレムが使っている光の矢のように、より遠くまで光を飛ばそうとレクスが力業で無理やり光を操ろうとした結果、その光は光の剣のときよりも細く長く伸びていくだけだった。


「なるほど…。こういう感じですか」

「だから使い物にならんと言ったろ。ただ少しばかり長く伸びただけで、とてもじゃないが飛び道具といえるほどの射程じゃないし、それにこんな細さじゃあの光でやったとしても威力はいまいち…」

「確かにそれはそうですね。……でも、これはこれで何かの参考になるかもしれないので、もう少し観察させてもらっていいですか?」

「まあ、好きにしろ」

「はい!」


 その後しばらく、アナはこの細く長く伸ばした光を観察しながら、色々と記録を書き記していた。

 そして…


「ふぅっ…。とりあえず、これくらいで完了ですね」

「そうか。それで今のが何かの役に立つのか?」

「それは分かりません。何か新しい魔法を作るときの参考になるかもしれませんが、何の使い道もないかもしれません。でも神聖魔法じゃない光魔法は参考に出来る記録が少なすぎますから、いつかのためにこうして何でも記録を取っておくことは大切です」

「そうか」

「はい」


 そしてそのいつかのためというアナの言葉に、レクスは一つ気になることがあったようで、そのことについてアナに尋ねた。


「光の矢の魔法が完成したら、また次の魔法を作るのか?」

「はい、それはもちろん…ですけど…」

「じゃあ次はどんな魔法を作るんだ?」

「それがまだ何も決まっていないんですよ」

「なに?」

「あの異界の書に描かれていたもので、光魔法として再現できそうなものは、紫のゴーレムの閃光の魔法、白いゴーレムの光の剣と光の矢…くらいしかなかったので…」

「そうか……」


 白きゴーレムの書にはこれ以上参考に出来るものがないと知り、レクスは少しばかりがっかりしているようにも見える。

 だが、そんなレクスにアナは告げる。


「なのでレクスさん、光の矢が完成したら、その次はまず異界の書を探しましょう」

「他のを…か?」

「はい。この世界には光魔法の参考に出来るものが何もないですけど、きっと異世界にはまだまだたくさん、わたしたちの知らないすごい光魔法が存在しているはずです! なのでそれを見つけて、わたしたちで全部作っちゃいましょう!」

「ま、悪くはないかもな」

「ですよね。それじゃあレクスさんは、いつか世界最強の魔導師ですね」

「は?」

「閃光の魔法と光の剣だけでもあんなに強いんですから、もっといろんなゴーレムの色んな光の魔法を作り出せれば、レクスさんはあらゆるゴーレムの力を手にした最強の魔導師になっちゃいます!」


 なぜゴーレム限定なんだ?…と思うレクスであったが、異世界のゴーレムの力を再現したいという思いこそが、アナの魔法開発の原動力であることは分かりきっているため、レクスもこのことに関してはこれ以上突っ込まなかった。


「じゃあ思う存分俺を強くしてくれ」

「はい、最強にしてみせます!」


 そしてこのころには、レクスの表情からは険しさが完全に消えていた。

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