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31 次なる魔法

 異界の書を見ていたせいで少し話がそれたが、本日の目的はあくまで白いゴーレムの像を作るのに必要な道具である。

 というわけで、レクスはそれが置かれていた場所にアナを連れて行ったわけだが…


「これがその道具ですか?」

「ああ」

「確かにこれなら、あの部品もきれいに切り取れそうですね」


 つまりプラモデル用のニッパーである。


「けどこれ、金貨…五十…枚?」

「そういうことだ。これは物を切り取るための道具という用途がはっきりしたもので、そしてこの世界の鍛冶師の技術じゃまず作れないくらい精巧な品。だから高い」


 これが、レクスがこの道具を見に来るのにあまり乗り気ではなかった理由である。


「銀貨一枚で買ったものを作るために、金貨五十枚の道具を買うのはさすがになあ。つーか、俺が今日手に入れ損ねた金と同額…とか…」


 レクスはオーガ捕獲の報酬が手に入らなかったことを思い出して、またムカついてきている。


「レ…レクスさんっ、あの像を組み立てる方法は他に何かないか考えましょう! ねっ、ねっ!」


 こうしてアナが必死にレクスをなだめようとしていると、そんな二人の様子が目に入った店主は、またアナに声をかけてきた。


「お嬢ちゃん、今度はこの妙なはさみが気になるのか? ずいぶんと高いもんにばかり目が行く嬢ちゃんだなあ。そっちのあんちゃんはいつも銀貨一枚の品しか買ってくれねえのに」


 レクスは銀貨一枚の異界の品ばかり買っていく客として、店主から覚えられていた。


「お嬢ちゃん、こんなもんをいったい何に使うつもりなんだ?」

「えっと、それは…ですね……」


 そしてアナは、この道具が白きゴーレムの像を組み立てるのに必要であることを店主に説明した。


「なるほどな。前にあんちゃんが買っていった、あの妙な部品の詰め合わせを組み立てんのに必要ってことか」

「はい、そうなんです…けど…」

「まあ、金貨五十枚はそう簡単には出せねえわな」

「さすがに持ち合わせがないです」


 アナは手持ちのお金が足りないことにかなりがっかりしているが、そんなアナの様子にレクスと店主は、あったら買う気なのか?…と、少し正気を疑っている。


 そして、こんな少女にそんな金額を使わせるのはどうかと思った店主は、アナにある提案を申し出てきた。


「お嬢ちゃん、その白いゴーレムの像を作りたいのなら、この道具…貸してやってもいいぞ」

「本当ですかっ?」

「ああ。でもこの高価な品を持っていかせるわけにはいかんから、ここで組み立てるのが条件だ。おれもその像が完成したところ、ちょっと見てみたいしな」


 この朗報により、アナはものすごくテンションが上がって大はしゃぎしている。


「レクスさん、レクスさん、レクスさん! あの白いゴーレムの像が作れますよ! 急いで帰ってあの部品を取ってきましょう!」

「わかったから少し落ち着け」




 こうして一度レクスの家に戻った二人は、あの白いゴーレムの像の部品を持って再び骨董屋へとやって来た。

 そしてあの道具を借りて、二人はこの場で白いゴーレムの像を組み立て始める。


「おお、さすがは金貨五十枚の品。これなら部品を傷めずにきれいに切り取れる」

「レクスさん、次はこの部品ですよね。ここ、同じ記号が書いてあります」

「そうだな、これとこれで…」

「わあっ、ぴったりはまりました。こんな小さな部品なのに、どれもものすごく精巧に作られてます。異世界の技術すごいですね」

「ああ。で…次は…と……」


 こうして二人の手によって組み立てられていった白いゴーレムの像は、ついに完成のときを迎える。


「レ…レクスさん、本物…ですよ。本物の白いゴーレムです」

「いや、これはただの像だから本物じゃない」

「そう…ですね。これはただの像だから本物ではないですよね。……でも、本当に本物がここにあるのかと思っちゃうくらい、素晴らしい出来です。光の剣も、この透明な部品で完全に再現されてますし。ああっ……」


 アナは完成した白いゴーレムの像を見てうっとりとしている。

 そしてレクスは、この白いゴーレムの像に持たせるための装備が、光の剣以外にもいくつかあることが気になった。


 盾はわかるが、その他にも何だかよく分からないものが二つ。

 そこでアナならこの二つについても何か知っているのではないかと思い、レクスは尋ねた。


「なあアナ」

「何ですか?」

「この持ち手のある筒みたいのは何だ?」

「その筒からは爆発するものが放たれるみたいです。つまり火属性の力ですね」

「そうか…。じゃあもう一つの、こっちの妙な形のは何だ?」

「これは光の矢を放つためのものです」

「光の矢?」

「はい」


 次なる魔法は……光の矢。

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