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16話

「ここら辺が冒険者用のあれこれですね。買取所もありますし、一番色んなものがあると思います」


 反冒険者に冒険者関連の紹介をする。この世界は冒険者が当たり前にいて、それが基準になっているのだから仕方がない。こうしたものを丸ごと変えてしまうなら、本当にすごいことだろう。


 因みにこの人は教授と呼ばれていることが多いようなので、それに倣って俺も教授と呼ぶことにした。


「飯屋もここら辺のものが人気ですね。私自身はあまり利用していないので詳しい説明は出来ませんが。他に気になることなどはありますか?」

「ふむ。デクルが危険だというのは分かったが、知性がある個体もいるのだろう?どのような考えなのだろうか」


 もちろん気になるだろう事柄だ。そういうことの研究者なんだろうし。


「正直個体によるでしょうから、何とも。ただ、すぐにとはいかないでしょうがデクルの代表と話をする機会は用意出来ると思います。間接的に説明するよりも、直接聞いたほうが良いかと思いますよ。いかがいたしますか?」

「それは興味深い。そういえば、町長が仲人という話もありましたね。是非お願いします」

「分かりました。デクルに関して言えば、仲人というのは名ばかりだと思いますけどね。話が拗れないよう一本化しているだけのようなもですし」


 仲人と言うのは、特定の種族と人間の仲介役のことだ。エルフやミルスにもそれぞれ仲人がおり、基本はその人を通して話が伝えられることになる。

 これは他種族が特定の個人以外を信頼しないために、仲介役を頼むことになるのでその役目を担う。


「では他にも何かありましたら、お気軽に役所の私のところへお尋ねください」



 ◇



「一周回ってわくわくして来たかもしれません」

「良い顔してるのにゃ」

「こういうのは悪い顔って言うんだよ」


 罠に嵌める側……罠と言って良いのか分からないが、嵌める側の心境というものだろうか。上手く行くかどうか、賭け事のように気になるかもしれない。


「少し悪い気がしたりは?」

「……します?」

「どうだろう。九割九分無理だとは思ってるけど、革新的なものっていうのはそういう風に思われるものでもあるかなと。技術的特異点?みたいな?」

「技術革新ですかね。何にせよ絶対無理ですよ。あまりにも机上論です。モンスターの行動なら私やサンケタさんの方が詳しいでしょうね」


 ちょっぴり間違った中二病出ちゃってたことに気付いて恥ずかしい。


「そんな感じなの?」

「デクルと私たちは共生していますけど、人間がみんなデクルと共生出来るわけじゃない。ですよね?」

「そりゃそう。そのせいで困ってる」

「はい。これで話は終わりです。モンスターのために合わせればそりゃ共生できますけど、限度ってものがあります。そして、これでもデクルは共生し易いモンスターです。デクルでもギリギリですし、無理な人の方が多いんですよ?」


 共生できないモンスターの方が圧倒的に多い。それでも共生しようとすればどうなるのかって話か。


「ギリギリアウトだしな」

「ギリギリかにゃ?」

「……確かに?」


 普通にアウトかもしれん。


「理論とかそういうの、あんまり関係ないことですよ。部屋に閉じこもって考えすぎた結果って感じがします」

「バッサリだねー」

「共生ではなく習性を利用したり、危険を教えるということも言ってましたけど、いずれも限度があります。それに、そこら辺ってもともとやってることですしね。みんな当たり前に知っていて実戦してる範囲すら理解してませんよあれ。最初何の話か分かりませんでしたもん」


 こちらの常識をわざわざ一から説明してたのか。そりゃこんがらがりもする。


「じゃあ実験もクソもないってことじゃん」

「ですね……って、だからこその計画だったんじゃ?」

「え、てきとーだよ?高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変な対応をしようかと」

「……いいですけどね」

「細かい事なんて考えてもね」


 どうせデクルのせいで滅茶苦茶になるんだし。

 何か本当に凄い人で成果がありそうなら恩恵にあやかれるかもって思ってたけど、そうなることはなさそうだ。



 ◇



「あの!」


 町長室で仕事をしていると、教授が何やら慌ててやって来た。


「ストップ!」

「え?」

「教授、罠があります」

「そちらの方、三カ所あるのが分かりますね?」


 頷く護衛。


「なら避けるなり破壊するなりお願いします。既にご存知だと思いますが、軽い衝撃で壊れます」

「室内にも罠があるのか……」

「この部屋にはデクルがおりますので」

「にゃ」


 シマが挨拶をし、それを軽く睨む教授一行。


「罠があるとは聞いていましたが、これほどとは思いませんでした。まともに歩くことすらできないとは」

「ステッキを購入なされては?」

「使いこなせるとは思えません。そもそも罠が多すぎて見逃しが出ます」


 見れば服に汚れがあったり、手には擦りむいた痕がある。転ばされたようだ。使えない護衛だな。


「そうですか……。それで、用件はなんでしょうか?」

「……それが用件のつもりです。何とかならないのかと思いまして」

「と、申されましても。護衛の方に守っていただく予定でしたので……。それか民間の護衛、というか冒険者に依頼されては?」

「私たちは反冒険者ですので……」


 嫌われているか。

 主張のために必要だったのかもしれないが、馬鹿な名前を付けたものだ。


「こちらを通したところで結局は同じことなので」

「ですから、職員を貸して頂けたりはしないでしょうか?市民でも慣れているために罠を避けられるそうですし」

「ええとですね……。申し訳ありませんが、そもそもこの件自体がほぼ私の独断でして。町長権限で押し通したものの、他職員からは反対の声もあり直接使える人数は限られているのです。ですので、必要ならば一般から募集する形になってしまいます。冒険者と違い心得など何もないでしょうから、正直護衛の方に頑張っていただく方が良いかと……」


 他の職員は使いたくないからね。というか何のための護衛なんだよ。地味に護衛じゃないというカミングアウトかな?


「確かに一般からの募集というのは不安が大きいですね……。分かりました」


 そうして大人しく引き下がってもらえた。



 次の日。


「あの……私たちの宿周辺に罠が多いように感じるのですが……」

「恐らく、引っ掛かったからでしょうね。悪戯好きなので、向こうとしては引っ掛かった方が楽しいのでしょうから」


 カモが来たと喜んでいることだろう。


「そういうことでしたか……」

「デクルもモンスターではありますし、研究の一環として考えてはどうでしょうか」

「そうしてみます……」


 まだ何もしてないのに折れないでね?


 そんな風に苦情をもらいつつも、日々が経過して行く。突発的に罠が増えたせいで、冒険者からも苦情が増えている。そんなときにはしっかりと、「モンスターとの共存を目指す反冒険者の方々が来てましてね?」というように説明と宣伝を欠かさない。




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