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異世界の薄幸少女にチート霊が憑依しました  作者: バッド
3章 旅する巫女

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67話 旅のレストランは素敵です

 ドーナツを買ってもらい、お友だちにお土産ができましたとルンルンのレイちゃんです。おまけにドレスや宝石類も貰っちゃいました。辺境伯って、お金持ちなんですね。


「でも、これだけ食事にこだわりがあるのに、お菓子はないのですね、ジャンクフード的なもののことですが。ジャンクフードとは、ダンジョンで手に入るお菓子のことです」


 ポテトチップスや、チョコレートなど袋に入っている物がないのです。健康的ではありますが少し寂しいところですよ。


「そういった物はダンジョン産となります。昔から同じようなものを作ろうと試みられてはいますが、成功したとの話は聞いたことがありませんね」


「あぁ、たしかにジャンクフードを作ろうと思えば、上品なお菓子にしかなりませんか」


 添加物とか保存料とかありますしね。この世界の技術水準では製造不可能なのでしょう。まぁ、必要ないと言われればそれまでですけど、現代霊としては少し寂しいのです。イザナミちゃんがいつも戸棚に入れていたお菓子類が懐かしい。戸棚のミミックに変化して、全部食べて驚かせたものです。


「こちらです、レイ姫。ここは展望室が最高の眺めで、この領都でも一番と言われているレストランなんですよ」


 次に訪れたのは、レストランです。貴族の住む上層の少し下にある立地だけでも人気があるとわかるレストラン。外観は純和風の料亭ですので、レストランとの言い方は変じゃないでしょうか? まぁ、呼び名なんてなんでもいいんですけど。


 ここは自動ドアではなく、扉は分厚い木製の両開きの扉で、中もずいぶんと立派です。


「いらっしゃいませ。お出で頂き光栄でございます。結城レイ皇女様、檜野キオ様」


 従業員総出で待っていたらしく、揃ってお辞儀をしてお出迎えです。ここは予約一杯の料亭ではなかったでしたっけ?


 私が疑問でコテリと小首を傾げると、キオは僅かに目を泳がせてコホンと一つ咳払い。


「この時間の予約は全てキャンセルさせました。その代わりに充分な補償もしましたからご安心ください」


 ニコリと微笑むキオですが、食べ物の補償はお金では代わりにならないんです。美味しい料理が食べられなかった呪いがかかったら、特別サービスでキオを浄化させるとしますか。ここまで色々とサービスしてもらえましたからね。


 トテトテと店内を進むと、すれ違う貴族っぽい人たちが私へとちらりと見てきます。興味津々の模様。


「あれが、昨日の騒ぎをおさめてくれた皇女様

か。本当に浄化の力をお持ちなのか?」


「本当らしいですよ、上層で起きた魔物テロを防いだのは、誰もが見ているとか」


「それにこの木に住む人々は昨日の精霊ユグドラシルの力で全員身体が癒やされましたからね。魔に汚染されている者たちは、皆健康体になりましたから」


 噂話も聞こえます。もう私がやったことが広がっているとは、なんとなく意図的なものも感じますけど、ここは皇女スマイルでおててを振っておきます。


 手を振られた人たちが、ギョッとした顔になり、慌てて愛想笑いを浮かべて頭を下げます。私は庶民的な皇女だから、畏まらないでくださいね。


 展望室と言われるだけあって、ガラス張りで高所恐怖症の人は絶対に来られない場所です。


「おぉ………ここからだと、檜野スカイシティが一望できるんですね」


 雲が眼下に広がる巨木というには巨大すぎる木々が広がっています。雄大な光景はたしかに心に感動をもたらすでしょう。


 コトリコトリと料理が置かれていきます。先付けから美味しいと感じさせる見た目も美しい料理です。野菜を中心にお肉もあり、魚がないのが少し不満ですが、この土地の立地条件を考えると、仕方ありません。


 でも、美味しいので問題なし。私の礼儀作法も問題はありませんよ。皇女となる以前も、様々な美女に化けてきましたし。貴族の頂点になったりしましたし。箸の使い方もバッチリです。できるだけ汚さないようにすればいいんですよね。フォークください。


「この展望室からの眺めは最高です。レイ姫がよろしかったら、いつでもここに訪れることができます。僕とけけけけ」


「謎の鳴き声はもう良いです、キオ、それよりも聞きたいことがあります」


 またもや身体をカタカタと震わせてバグるキオですが、もう飽きました。それよりも、このスカイシティを見て疑問があります。


 コトリとフォークを置いて、少し真面目な顔になるとキオを見詰めます。何故かますますカタカタと体を震わすキオにデコピンをいれると、問いかけます。


「なぜ、この土地が狙われたのかわかりますか? なんか黒ローブの人は霧の世界と言ってましたが、それってダンジョンということですよね?」


 霧の世界と評される世界はただ一つです。この世界ではダンジョンのことを指しています。


 私が真面目な話を振ったので、バグったキオはようやく正気を取り戻します。真剣な顔になると、少し迷う素振りを見せますが、コクリと頷くと決意した顔になります。


「そのとおりだと思います。敵はこの地にダンジョンを開くつもりだったのでしょう。恐らくはラショウの街のように近いダンジョンと同じように大規模なものを」

 

「? ラショウの青森ダンジョンは大規模なのてすか? 私は他の地域のダンジョンの大きさを知らないのですが」


「えぇ、仰るとおりです。普通は一キロ範囲程度の建物がダンジョンとなっています。建物としては高層の場合もあり、迷宮と呼ぶにふさわしいところですが、それでもその程度の大きさ。ですが、ラショウのダンジョンは違います。街一つを丸ごとダンジョンにしたのではと言われてますからね。誰も最奥に辿り着いた者はいないと聞いています」


 真面目なキオはどうやら頼りになるようで、面白い情報を教えてくれました。


「なるほど。だからガーベラはスーパー型とかコンビニ型とダンジョンを評していたのですね」


 青森ダンジョンは街一つを工場にしたとかパンフにありました。それなのにスーパー型とかコンビニ型とか他のダンジョンを評するのはおかしい話だと言うことに今更気づきました。普通ならそんな狭い店舗の名前をつけることなんかありませんし。


 大阪ダンジョンとか、東京ダンジョンとか、コンクリートジャングルダンジョンとか、もっと大きなエリアを示すダンジョン名にしてもおかしくないですからね。


「だからこそ、ラショウのダンジョンが復活したことは大変な出来事です。皇帝陛下はお喜びになるでしょうし、これから冒険者たちや商人、移住希望の者たちも大挙して訪れると思います」


「むむむ、それは隠匿していたのですが、既に情報を得ていたとはキオはやりますね」


「え? ここだけの話と、皆さんが教えてくれましたが……。それにダンジョン復活記念とお土産屋が宣伝してましたけど……」


 苦笑を浮かべてキオが衝撃的な話をしてくれました。隠してって言ったのに! ここだけの話とお願いしたのに!


 プンスコ怒って、デザートをお代わりしちゃいます。このイチゴ大福をあと一ダースください。


「なので、ラショウのダンジョンは普通ではありません。この帝国でも一番のダンジョンと言えるでしょう。ですが………この檜野スカイシティでも昔は同じレベルのダンジョンが存在したと言われてるんです」


「ここにもダンジョンがあったのですか?」


「ええ、そのとおりです。昔はもっとそこら中に瘴気があり、ダンジョンも多かったらしいんですが、少しずつ瘴気は消えていき、ダンジョンは消えていったそうです。その中にこの檜野スカイシティに近い場所に大きなダンジョンがあったと聞いています」


 興味深いお話です。特に瘴気が消えていったという点ですね。多分この地の聖域レベルの生気の溢れる様子から、他に瘴気が流れ込んでいるのでしょう。その中にラショウがあるはずです。


 そう、ラショウから離れて思ったことは、この土地は豊か過ぎるということ。毎年豊作とか、ちょっと物理法則無視してます。


 世界の理的にもおかしな話なんです。さて、これはどういうことかと言うと、すぐに思い当たりました。


 誰かが理を少しだけ変えたのです。なので瘴気が薄れていき、ダンジョンを維持するエネルギーも無くなったと推測します。


「黒ローブの人はダンジョンを復活させるために、この事件を起こしたと。でも召し使いたちはそんな話に乗ったのですか。正直、あんな小物っぽい人の誘惑になりそうなほど困窮はしていなさそうでしたけど」


 上層で召し使いをしているということは、それなりに裕福な人たちだったはず。なのに、ホイホイと誘惑にのった? ありえませんね。


「僕もその点は疑問です。これから尋問してどうしてなのかを解明するつもりです」


「この地にもダンジョンがあった……。裏口はあるかもしれません」


「裏口ですか? ここにダンジョンはもはやありませんよ」


「さて、どうでしょうか。完全に消滅したのならば、あの黒ローブの人も復活させるために暗躍はしなかったでしょうし」


 恐らくは休止状態にあるんだと思います。とすれば、どこかにダンジョンへの扉があるはずなんです。


「それが本当で、いえ、レイ姫のお言葉を疑うわけではありませんが、ダンジョンがあるとなると、ますますこの街は栄えることができると思います。探して頂いてよろしいでしょうか? もちろんお礼はさせていただきます」


「はい、もちろんです。こちらの準備もありますし、少ししたら探したいと思います」


 顎に手を当てて熟考すると、キオはお願いすることにしたようで、私を見てきます。


 面白そうなので、私もその話に乗ります。他の街のダンジョンとか興味津々ですし。


「とはいえ、危険な可能性もあります。瘴気が吹き出したら大変ですしね。なので、あまりご期待なさらないようにお願いします」


「この街を危険に晒すわけにはいけませんから当然です。ではよろしくお願いいたします」


「はい。任せてください」


 微笑みながら、私は考えます。レベル四になったので、ようやくあの霊術を使えるようになりましたし、準備万端で探すとしますかね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 檜野も青森県範囲かな? いまいち距離感がわからない。
[気になる点]  なんかご馳走食べられるからって大勢の人に見られるところばかり巡ってるけど(^皿^;)この流れって着々とキオくんが既成事実を築き上げてるみたいに見えるんじゃけどなー?話に加わってないけ…
[一言] ここだけの秘密は秘密にならない法則!!
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