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祖父母をたずねて家出兄弟二人旅  作者: 泉 きよらか
第5章 アグリ国王都ニュシャの光と闇

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117. 授爵式

 コロナEXにて、本日より『祖父母をたずねて家出兄弟二人旅@COMIC』の連載が開始しました。ぜひお読みください!

 (本文下のリンクから、コロナEXの作品ページに遷移できます)


 また、長らく本編の更新が止まってご迷惑をお掛けしましたが、基本的にはコミカライズの配信日に本編も更新していきます。(次回更新は3月30日月曜予定)

 コミカライズとあわせて、WEB版・書籍版もお楽しみいただければ幸いです。

 勲章や羽飾りなどがあしらわれた儀礼用の制服に身を包んだ衛兵が、高らかにラッパを吹く。

 その合図で一堂に会した数百人もの人間がざっと立ち上がり、右手を胸にあて、こうべを垂れた。

 もちろん僕も立ち上がる。そうすると、二階席から一階席がさらによく見えた。


「ホ、ホ、ホ。あの真っ赤なローブを纏ったのが、すべて貴族家の当主だワイ」

「へえ。そうなんですね」


 同じく隣に立つプレーリー前子爵が、小声で耳打ちしてくれる。

 よくよく見ると真っ赤なローブを纏っているのは会場の約半数で、いずれも年配の男性ばかり。女性は同伴者……きっと当主の奥方なのだろう。


 普段は議会として使われることが多いというこの広間は最奥が黄金のひな壇になっていて、空席の玉座が二つ。

 手前は通路を挟んで向かい合うように、長椅子の座席が左右対称に何列も並ぶ。それでも足りなくて、玉座の正面通路にも長椅子がずらり。

 授爵するおじいちゃんはおばあちゃんと一緒に通路最前の席付近にいるはずだけど、たくさんの人に埋もれてしまってよくわからない。

 引退した前当主や、継承権を持つ成人しかいないという二階席もそれなりに間隔が詰まってはいるものの、一階席は比じゃない。あまりの過密ぶりに、酸素が薄そうだ。


 と、そんなことを考えていると、王笏おうしゃくを厳かに掲げた者を先頭に、国王陛下と王妃殿下がたくさんの側近を従えて、玉座脇の扉から姿を現した。粛々と列を成して進み、国王陛下と王妃殿下が玉座に腰を下ろす。

 両陛下の頭上に煌めく王冠が、ひな壇の最下段よりも長く垂れた王族のローブが、絶対王者の存在感を放っていた。

 こういうのを『カリスマ性』と呼ぶのだろうか。遠く離れた後方の二階席でも、誰に強制されるでもなくこうべを垂れてしまうような気迫に僕は呑まれる。


(この方々が、この国の国王陛下と王妃殿下……!)


 ごくりと生唾を飲み込む。

 民主主義の前世と違って、今世は君主制だ。王家や王族の下に公爵・侯爵・伯爵・子爵・男爵とピラミッド構造の貴族がいる。

 権力や権威によって統治されているのだと、いやでも肌で感じた。


「これより陞爵しょうしゃく及び授爵式を執り行う」


 右肩にもたれるように王笏を持った国王陛下が宣言すると、まるで訓練された軍隊のように一斉に着席した。


(いよいよだ……!)


 今回、陞爵や授爵をするのは十名前後らしい。

 まずは陞爵する貴族から名を呼ばれ、功績を読み上げられる。どうやら順番は、基本的に爵位順のようだ。

 陞爵は二名と数が少なく、あっさりと授爵に移る。


「ホホウ。戦がある世は、数十名にも膨れることもあるからの。平和な今の世はそもそも数が少ないワイ」

「なるほど……」


 授爵も、男爵への取り立てがほとんどだ。

 そのうち、法務官として職務を全うした功績、治癒師として慈善活動、品種の改良により一定の収穫量向上に貢献など、内政や産業面での理由が全てを占めていた。

 そして……。


「マルタン・ヴァレー」


 おじいちゃんの名前が呼ばれる。その瞬間、雑音の一切が消えてなくなったような気がした。

 真新しい赤のローブを纏ったおじいちゃんは玉座の手前に進み、流れるような仕草で跪礼きれいする。

 僕は手に汗かいた拳をギュッと握り締め、祈るような気持ちで見守った。


「これまでの産業への寄与と貢献を讃え、ヴァレー家に男爵位を授ける」

「……謹んで拝命申し上げます」


 国王陛下からおじいちゃんへ、プレーリー前子爵いわく貴族位の証明や授爵に関する委細の条件が書かれているという書状が手渡される。

 おじいちゃんは書状をうやうやしく受け取ると、ほかの授爵者たちとともに一階席の貴族たちに一礼した。


 途端に、会場を切り裂くかのように万雷の拍手が降り注ぐ。

 授爵のほまれに紅潮を隠せないものが多いなか、僕は変わらず冷静なおじいちゃんと目が合った。と、おじいちゃんはうっすらと口の端に笑みを浮かべて、一つだけ頷く。

 僕も頷き返して、遅れてやっと拍手を送った。


 ──こうして、この日ヴァレー家は晴れてアグリ国貴族の末席に加わったのだ。

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連載再開、お待ちしていました。続きを読ませていただくのが楽しみです。
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