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祖父母をたずねて家出兄弟二人旅  作者: 泉 きよらか
第5章 アグリ国王都ニュシャの光と闇

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115. 救児院 3

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 僕が収納(ストレージ)から取り出したのは、ハーフカットのチーズ・葡萄・ゆで卵・ゆでじゃがいも・蒸し芋・ヤギ乳だ。

 どれもそのまま食べられるうえ、お腹にたまる。しかも、美味しくて栄養もばっちり。ストックしておいて損はない食材ばかりだ。


(思っていた以上に、溜め込んでたんだな僕……)


 育ち盛りのリュカに、いかにお腹いっぱい食べさせてあげるか。甘いおやつは心の栄養になるけれど、それだけではなくちゃんと体の栄養になるものも。

 調理人たちがリュカを甘やかすから、僕の収納(ストレージ)は見事に食事系のおやつに偏っていた。


「おいちちょ……」

「まんま!」

「じゅるり」


 救児院の子どもたちが集まってくる。指を咥え、視線はテーブルの上のおやつに釘付けだ。


「もう少し待っててね。食べやすいように切るから」


 赤ちゃんをおぶった僕とグルマンド、それにユヴィさんまで手伝ってくれて、食材を子どもの一口サイズに切っていく。

 特に、ワイン用の葡萄は前世の生食用葡萄に比べると、粒が大きく皮も厚い。なので、種を取って六分の一程度に。小さな子ばかりだから、喉に詰まらないよう注意が必要だ。

 さらに、ゆでじゃがいもと蒸し芋はフォークで粗くマッシュして、水で伸ばす。これは年少の子たち用だ。


「まあ、お二人ともなんてお上手なのかしら」

「むふふん。わたくし、調理人ですから!」

「僕も少し前まで、自炊していたので」


 グルマンドは本職なだけあって、神がかった包丁さばきだ。でも、僕だってなかなか負けていない。

 反対に、ユヴィさんは良く言えばゆっくり丁寧、悪く言えばおっかなびっくりで危なっかしかった。

 傷一つない白魚のような手を切ってしまいそうで、僕は口を挟む。


「えっと、ユヴィさん。包丁はそんなにぎゅっと握らずに、親指と人差し指は包丁の付け根に添えるくらいで。左手はこんな風に指先を曲げて、猫の手に。……そうです!」

「……わたくしでも、綺麗にお野菜が切れましたわ!」

「はじめてにしては上出来ですよ」


 ガーゼマスクの包帯で表情はわからないけれど、声色でユヴィさんが喜んでいるのがわかる。

 先ほどまでの近寄り難い高貴な雰囲気とは打って変わり、小さな子どものような無邪気さに僕は笑みが溢れた。

 そうして、食材を切り分けてお皿に盛ったら、お待ちかねのおやつの時間だ。


「おててをあわせて、いただきます!」

「「「いただきます(いたまっしゅ)」」」


 リュカの元気な掛け声に合わせて、大人も子ども揃ってみんなで食べはじめる。


「わたくしまでいただいてしまって、本当によろしいのでしょうか?」

「むふふふ。食事もおやつも、みんなで食べると一層美味しいと決まっているのですっ」

「オレは遠慮なくいただくっす!」


 ユヴィさんもはじめは遠慮がちだったけれど、ナイフとフォークで優雅に口へと運ぶ。

 僕もひょいと手でチーズをつまみつつ、赤ちゃんに粉ミルクを飲ませた。

 救児院で当たり前のように粉ミルクが使われているということは、きっとソル王国からアグリ国への販路が、太くなるか広がるかしたのだろう。

 僕がリュカのために開発した粉ミルクが、国を越え時を超え、たくさんの赤ちゃんや親たちの助けになっている。そう思うと、なんだか面映い気分だ。


「んっく、んっく、んっく」

「良い飲みっぷりだね〜」


 ちゅっちゅっと動く口や、小さな手足。懐かしい赤ちゃんのミルクの匂いに、僕は目をすがめる。

 こんなにかわいい赤ちゃんや子どもたちが、救児院にいる。それがこの世界の現実だとしても、どうしようもなく切なかった。


(僕に何かできることはあるかな)


 ふと顔を上げると、子どもたちも旺盛な食欲を見せている。手づかみで一生懸命食べて、みんなほっぺがリスみたいだ。


「おいっち!」

「あぐあぐあぐ」

「おにいたん、こりぇ、にゃ〜に?」

「ぶどうだよ。ゔぁれーのぶどう、すっごく、おいしいの!」


 えっへんと我がことのように胸を張り、リュカが答える。

 リュカはすっかり兄貴風を吹かせて、小さな子どもたちのお世話を焼いていた。

 と言っても、リュカもまだ五歳だから、テーブルにこぼしたおやつのかけらをお皿に戻してあげるとか、お口を拭ってあげるくらいだ。


(っ……尊い……!)


 たったそれだけでも、リュカの成長を感じられて、僕は鼻を抑える。こうやって、リュカは少しずつ僕の手を離れていくのだろう。

 寂しいけれど、嬉しい。いや、でもやっぱり寂しい。


 そうして、すっかり食べ終わり、片付けも終わったあと。


「あの、ユヴィさん、これ……」

「まあ……。ありがとうございます」


 僕は日持ちする食材や、いくばくかのお金を布に包んでユヴィさんに手渡す。

 その様子を見ていたリュカが、僕の裾を引っ張って言った。


「あのねー、にいに。おはだ、かいかいのおくすりも!」

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― 新着の感想 ―
読み返してみてふと思いました。そう言えば、皮膚病を患う姫君がいるってお爺さんが思い出していたような…まさかね…(^^;
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