投資を開始できない方のための投資法
こんにちは、2025年11月のワールドシリーズはドジャースの劇的勝利で幕を閉じましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
今回のワールドシーズはあまりの大激戦だったので、実はとある人物がある方に祝福をお願いしたとか。
依頼した方は、ロサンゼルス大司教区の第5代司教のホセ・オラシオ・ゴメス氏。
依頼された方は、第267代ローマ教皇レオ14世。
「I asked Pope Leo in Rome this morning to pray for the @dodgers! Go, #Dodgers!
(今朝、ローマのレオ教皇にドジャースのために祈ってくれるようお願いしました!行け、ドジャース!)」と綴り、4枚の写真とともにXへ投稿。
レオ14世は大谷翔平選手のユニフォームを手に、うれしそうな笑顔をXに投稿していたとか。
職権乱用だろ!
レオ14世の祝福が効果を表したのか、ドジャースは劇的な大逆転勝利でワールドシリーズを収めたのでした。
もう、これ奇跡認定でいいんじゃないかな?
などと、くだらないことを長々と書きましたが、今回は御題は「投資を開始できない方のための投資法」です。
投資
個人投資家にしたら当たり前の行動ですが、それはできる人の論理。
いわば成功者バイアスがかかった視点です。
最近でこそ風潮がかわってきましたが、投資をできない人や始められない――或いは続けられない人にしたら別次元の話し。
投資=無からお金を生み出す行為。
奇跡みたいな御業。
奇跡は言い過ぎかも知れませんが、できない人にしたら酷く羨ましくて、詐欺のように思えるのが投資なのです。
彼らはがなぜ投資を開始できないのか?
最大の要因は、「絶対損をしたくない」という感情の壁を越えられないから。
これは論理ではありません、感情の問題なのです
感情の壁を超えるには経験や出会いなど、ある種の偶然や奇跡が必要でしょう。
僕はドジャースやレオ14世のような奇跡は起こせませんが、「絶対損をしたくない」という感情の壁を超えるには、ある種のシステム化をすればいけるんじゃね? と気付きました。今回はそんな思い付きを元に考えた、マネーマシンというか投資教育プログラムについて語っていきます。
通常語られる投資法や主張とは異なる変化球なので、異論反論あるか方は多数いるかと思います。ですが対象はあくまで投資をできない人や始められない――或いは続けられない人です。それをご理解の上で、またこいつは馬鹿な主張をしているな! と笑いながら読んでいただけると幸いです。
◇
投資を開始できない方の分析は多々あります。
大きく大別すると、
①下落相場にメンタルが耐えられない
②資産が全然増えない時期がある
③目的が曖昧
以上の三つになるでしょう。
対策として提示されているものを大別すると、
①長期・分散投資の徹底
②ドルコスト平均法による積み立て
③市場のノイズに流されないようにするために情報を遮断する
④インフレによる通貨価値の目減りに関する理解
などで対策を説明します。
多くの書籍や動画サイトや情報番組を否定する気はありませんが、残念ながらこれらはもっともらしいように聞こえますが、実は全く見当違いの対策なのです。これらの対策は所謂できる人が――成功者バイアスがかかった状態で考えた分析と対策であり、投資をできない人や続けられない人を全く理解できていません。
言い過ぎじゃね?
俺は積み立てを実践することで、投資を継続できたぜ!
積み立て投資は確かに有効な手段であり、投資を継続する恐怖と投資時期に関する決断という問題を、ある程度緩和してくれます。
ですが、積み立て投資は根本的問題を解決してくれません。
投資を開始しない方は、最初の一歩を踏み出せないのです。
投資資金云々を指摘する方もいますが、現在は100円から投資できるので金額の多寡は問題ではありません。
それは感情レベルの問題であり、彼らは「絶対損をしたくない」のです。
この感情はわからないではありません。
汗水流して手に入れたお金は金額以上の価値があり、人によって金額の100倍~1000倍以上の価値があるのでしょう。
僕も労働者の一人ですから、この感情は理解できます。
野村アセットマネジメントが公開している「投資に関する意識調査」によれば、
非投資家の割合は
2022年:63% 6651万人
2024年:62% 6464万人
2025年:63% 6559万人
60%程度の方は投資をしていません。
新NISAにより約200万人ほど投資家が増加しましたが、2025年には100万人が投資を止めたのです。
少し古いデータですがオリックス銀行が、2020年3月9日に公開した「投資を継続できなかった人たちは、なぜやめてしまったのか?」によれば
調査対象:1,000人
1年未満:20.5%
1~3年程度:24.3%
約40%の方は3年以内に投資を止めてしまうのです。
かなり悪い数字ですが、市場の変化を考慮すれば理解できないでもありません。
市場が下落したとき「絶対損をしたくない」という感情に、理性が耐えられなかった結果です。
この感情は「損失回避バイアス」というもの。
人が利益を得る喜びよりも、損失を被る悲しみの方を強く感じる心理的傾向があるのです。
投資とは人の感情の逆らう行為であり、感情よりも理性に重きを置く人物だけが実行可能な行為なのでしょう。
感情の壁を超えるには経験や出会いなど、ある種の偶然や奇跡が必要。
ワールドシリーズで逆転優勝したドジャースや、彼らに祝福を授けた第267代ローマ教皇レオ14世から奇跡を授からないと、僕らは感情の壁を越えられないのでしょうか?
少なくとも今まで僕が触れてきた書籍や動画サイト、或いはアナリストの方々は有効な手段を提示していなかった気がします。
◇
感情の壁を超えるには、コペルニクス的転回のような発想の大転換が必要なのです。
投資を開始できなかった人や、投資を継続できなかった人たちの声にもっと耳を傾けるべきでしょう。
彼らは「絶対損をしたくない」のです。
10年後に2倍になるよりも、今あるお金を1円でも損をしたくない。
この感情にもっと耳を傾けるべきであり、これまで提案されてきた対策は損失回避バイアスを無視した、経済的合理性からのアプローチでした。方向性が全く異なるのですから、対策がそれほど有効でなかったのも道理なのでしょう。
心理的・行動経済学的発想からのアプローチに切り替えるべきなのです。
何故そのように言い切れるかといえば、僕の嫁さんがこの手のタイプだから。
これから語るアプローチは僕の嫁さんでも受け入れ可能な手法を、彼女に聞き取りながら考えた対策案になります。
絶対損をしたくない人でも採用している金融手法に、普通預金と定期預金があります。これに保険を組み合わせた三つが、絶対損をしたくない人が採用する手段でしょう。普通預金、定期預金、保険に共通するのは元本保証。一方でこれらはインフレに弱い商品ですが、それでも採用している理由はインフレそのものを理解していないのと、インフレによる目減りでは額面が減らないからでしょう。
もし仮に普通預金、定期預金、保険しか選択肢が無いとしたならば、元本だけでなく利息移動ができないので手段がありません。
本当に選択肢が無いのでしょうか?
実は手段があるのです。
投資元本が保証されて、利息の移動も可能で、条件付きですが途中解約が可能な商品がただ一つだけ存在します。
それは個人向け国債です!
はっ、なにを言い出すかと思えば個人向け国債だと?
あんなもの老い先短い老人と、金融リテラシーが無い人間が購入する商品だよ!
そんなものを提案するとか話しにならんな!!
たしかに個人向け国債は経済的合理性に欠ける選択肢です。
普通の投資家が対象であれば、僕も個人向け国債を勧めたりしません。ですが個人向け国債には立派なメリットが存在します。
①投資元本が保証されている
※社債は会社が倒産や債務不履行するとゴミ屑になりますが、日本国がデフォルト(債務不履行)になる確率は限りなく低く、10年程度であれば実質的に元本保証されていると断言できます。
②利息の移動可能
※普通預金は利息移動が可能ですが、保険や定期預金は契約満了になるまで利息移動はできません。一方で個人向け国債は口座に振り込まれるので利息移動が可能なのです。
③1年保有すれば途中解約も可能
※保険は契約満了前に解約することも可能ですが、元本が減額されるデメリットがあります。個人向け国債は1年保有すれば途中解約ができるだけでなく、元本が減額されることはありません。
以上のことから「絶対損をしたくない」向けの商品としては、個人向け国債が最適解だと考えます。
◇
個人向け国債が有効なのは理解したが、まさかこれを購入することで投資アレルギーや損失回避バイアスを乗り越えられるとは言わないよな?
まさか!
個人向け国債が「絶対損をしたくない」人向けのマネーマシンを作るための最適解なのは、元本保証と利息移動が可能だからであって、それ以上の意味はありません。
投資アレルギーや損失回避バイアスの元となる感情は、「絶対損をしたくない」という根源的な感情にあります。
ですが「絶対損をしたくない」という感情には、個人向け国債の利息は含まれないのです。
何故ならば、個人向け国債の利息は無から生み出された金額であり、購入者の懐を傷めるものではありません。
思い出してください。
「絶対損をしたくない」感情の根源は、汗水流して手に入れたお金は金額以上の価値があり、人によって金額の100倍~1000倍以上の価値と感じるからです。元々手元にあった預金の金利や個人向け国債の利息は、無から生み出された金額なので「絶対損をしたくない」という感情に含まれません。
言い切れるのは僕の嫁さんに確認したから。
この感覚は、行動経済学で言う「ハウスマネー効果」に近いものです。ギャンブルで得た利益「ハウスのお金」は、自分の汗水流したお金とは区別され、心理的な損失痛が極めて低いのです。個人向け国債のクーポンは、まさに「国が保証してくれた、元手とは別のお金」という認識が強いため、この「ハウスのお金」感覚でリスクを取れるのです。
マネーマシンの話題に移りますね。
キーは個人向け国債の利息です。
①個人向け国債10年を購入します。
②個人向け国債の利息は、半年に一度口座に振り込まれます。
③利息を6分割して、eMAXIS Slim 全世界株式に対して積立投資び設定をします。
注意点は個人向け国債の利息は公共債口座に振り込まれるのに対して、eMAXIS Slim 全世界株式は証券口座を利用する点。
手動による資金移動が半年に一度必要になります。
面倒な操作はこれだけ。
では仮に個人向け国債10年を100万円分購入したケースをシミュレーションします。
比較対象は6つ。
①普通預金10年 金利:年0.001%想定
②定期預金10年 金利:年0.3%想定
③10年間積立 100万円を毎月8,333円積立
④積立投資を1年間で断念して売却 毎月8,333円積み立てを1年継続、90万円は普通預金
⑤積立投資を3年間で断念して売却 毎月8,333円積み立てを3年継続、70万円は普通預金
⑥個人向け国債10年を100万円購入、1年分のクーポン(0.87%税引き)が半年ごとに半分得られるので、それを6分割して積立投資
※1 積立投資対象はeMAXIS Slim 全世界株式
※2 モデルを簡略化するため、1円からでも積立投資できるという想定で計算
結果は次の通りです。
① 普通預金10年100万円を一括預入:1,000,100円金利:年0.001%想定
② 定期預金10年100万円を一括預入:1,024,271円金利:年0.3%想定
③ 全世界株式10年積立:1,480,000円 積立投資の年間リターン: 7.0%
④ 株式積立1年で断念して売却:991,700円~1,013,800円 -8,300円の損失リスク
上幅+30.0%:+13,800円
下幅-20.0%:-8,300円
⑤ 株式積立3年で断念して売却:979,000円~1,108,000円 -21,000円の損失リスク
上幅+20.0%:+108,000円
下幅-5.0%:-21,000円
⑥ 僕のモデル:積立投資の年間リターン: 7.0%
半年ごとの積立額:4,383円
10年間の積立元本総額:4,383円×20回=87,660円
積立投資の将来価値(複利):123,944円
※福利だけの利益=積立投資の将来価値(複利)-10年間の積立元本総額=36,284円
トータル評価額(10年後):満期償還額 + 将来価値=1,123,944円
④⑤についてあれっと思われたかもしれませんが、積立投資を途中停止したので上幅と下幅(ワーストケースを考慮しています。
③ 全世界株式と⑥ 僕のモデルとの差額は、356,056円
個人向け国債だけの運用と比較すると差額は、36,284円
それぞれの差額をどのように判断するかは人それぞれですが、僕のモデルでは個人向け国債だけで運用するよりも期待リターンは大きく、また積立投資だけで運用するケースと異なり、個人向け国債の元本100万円を絶対に割り込みません。
この安心感が段違いでしょう。
全世界株式に最初から100万円を投資する計算が抜けているじゃないか? と思われるかもしれませんが、今回の想定は「絶対損をしたくない」人向けのマネーマシンです。そのような方が最初から全世界株式に全額投資するなどありえないので、比較から除外しました。
定期預金(②)の弱点は 10年間資金が拘束される点で、より詳しく語るならば途中解約は基本的に金利優遇が消滅します。
僕のモデルでは 個人向け国債は1年経過すれば、元本を減らさずに解約できる点を利用しています。同じようなことを保険で実践しようとしても、途中解約すれば元本は減額されますが、個人向け国債ではそのようなリスクはありません。
今回のモデルは初期投資額100万円で算出しましたが、毎年10万円ずつ個人向け国債を購入する形でも実現可能です。
効果金額は低減しますが、10年後には同じ効果を得られますね。
◇
締めに入りますね。
個人向け国債10年変動金利を使用したマネーマシンをご理解できたと思います。
それでも思うかもしれません。
酷く回りくどくて効率性が悪いモデルだな と。
このモデルの重要性は経済的合理性アプローチを受け入れられない人向けの、心理的・行動経済学的発想からのアプローチであり、元本保証をすることで損失回避バイアスも克服しています。もしかしたら似たようなアプローチがあるかもしれませんが、「ウォール街のランダムウォーカー」くらいは読みますが基本的に投資本とか読まないので偶然の一致です。
いずれにしてもこのモデルを10年実践すれば、一定額の含み益バリアを確保して教育プログラムを卒業できます。
卒業の進路は投資家次第です。
ある方は個人向け国債10年の補助輪を止めて、積立投資一本に絞るでしょう。
ある方はモデルを継続するだけかもしれません。
或いは個人向け国債10年の補助輪をより大きくすることで、増えた分のクーポンを積立の増額に回すかもしれません。
教育モデル卒業後の進路は人それぞれです。
新NISAで個人向け国債を購入できれば金利に対する税金問題や、口座移動の手間など解決するのですが、残念ながらは現在の制度ではそれは不可能ですね。いくつか難点があるのは認めます。
それでも
①下落相場にメンタルが耐えられない
②資産が全然増えない時期がある
③目的が曖昧
などという成功者バイアスで語られる投資論で教育されるよりも、多くのものを得られるはずです。
今回のところは、この辺で。
ではでは。
個人向け国債のクーポン計算を間違えていることに気付いたので、一部の計算を修正していています。
すみませんでした。




