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029 石ころだらけの浜

「あれ?昨日とは違う場所ですにゃ・・・」


辿り着いた浜辺は干潟になっていなかった。どこにでもあるような普通の海岸が続いている。ただ、昨日とは違い砂浜ではなく小さい石ころが浜辺を埋め尽くしていた。

嫌な予感がする。貝を獲り尽くさないように昨日の漁場は休ませていて、あれとは別に漁場が何個かあるだけなのだといいが。


「さあ、今日はこの浜で砂集めだよ。さっさと仕事に取り掛かりな」

「あい!」


ソウロたちが元気よく小石だらけの浜を進んで行く。海には近づかず、波から遠い浜に腰を下ろし小石を拾い出した。

やっぱり!嫌な予感が当たったようだ。もう分かってはいるが、諦め悪く聞いてみる。


「あの、貝は獲らないんですかにゃ?」

「獲らないよ。潮の満ち引きには周期があるんだ、今日は無理だね」

「そうなんですかにゃ・・・」


そんなものあるのですか。それは異世界要素?自然の摂理?どっちにしろがっかりだよ。

耳も尻尾もへにゃんと垂れて、しょぼくれた私は海を見る。行き場を失った私のやる気は体外に出て、霧散して消えた。


「ほらルクス、あんたもソウロたちと一緒に仕事しとくれよ」

「・・・はいですにゃ。でもその前に、砂を集めてどうするんですかにゃ?」


やることには変わりないが、聞いておきたい。与えられた仕事をただやるだけでよくても、それが何のための仕事なのか何に役立つことなのか知っておきたい。それで仕事の効率は変わりませんけど。


「主に工事現場の土嚢として使うよ。ギルドの方に依頼がきていてね。1200個ほど必要なんだ。早期の340個分はもう納めてあるから、後2週間で残りの分を納めないとね」


今日は台車付きで浜に来ている。台車には空の麻袋が積んであった。袋のサイズは50×30センチくらいだろうか、沢山ある。


「それとは別にサンゴの死骸と綺麗な貝殻が欲しいが、こっちはあたしが拾うからルクスは砂を集めな」

「えー、そっちの方やりたいですにゃ。なんかもう重労働の気配しかしませんにゃ」

「いいから、麻袋を持ってさっさと行きな」

「にゃあ」


チクチクする麻袋を抱えてソウロたちの元へ歩いて行く。砂集め?1200個?つらー。


「ソウロー、袋持って来たにゃ、ここに置いておくにゃ」

「あいー。どりこったもすかー」

「え、ほら人語、人語!」

「あいー、ルクスありがと。いっぱいおいてね。かわいたすな、たくさんほしいー。みんなであつめよー」

「分かったにゃー」


私を入れて7人のポルェ族が等間隔に広がって輪になり、そこの小石を全部どかした。若干湿り気味な気もするが、小石をどかしてむき出しになった砂を麻袋にみんなで詰め込んでいく。道具はなく手作業だ。


「いや、砂の中にも小石混じってて取りづらいにゃー」

「がんばえー」


スコップくらい欲しいものですよ。乾いているのは表面だけで、掘れば掘るほど地中の砂は水分を含んで湿り気を帯びている。海からは結構離れているが50センチも掘らないうちに海水が染み出してきた。


「ここおわりー。つぎいこー」

「え、もうダメなのかにゃ?」

「かわいてない、しょっぱいー」

「おもたいー」

「つぎあっちー」


そう言って、少し離れたところへ移動する。するとまた等間隔に広がると、その輪の中の小石をどかしだす。今ので麻袋は半分くらい膨らんだだろうか。


「効率が死んでるにゃ!何で最初に小石をどけるところから始めないといけないのにゃっ。この浜でやることじゃないにゃ!」

「うるさいよルクス。文句言う暇があったら手を動かしな」

「にゃー、フローベルさん。この仕事おかしくないですかにゃ?」

「しょうがないだろ、砂を取れば浜はボロボロだ。誰も使わない石だらけのこんなところしか砂を取るとこがないんだよ」

「つらいにゃー」


他のみんなは泣き言を吐かずに黙々と作業をこなしていく。そうして何とか5つ分の土嚢袋が完成した。


「よし、これ以上は重くて運べないだろ。今度はこれを台車に積んで現場まで運んでもらうよ」

「せぃのぉー!」


4人のポルェ族が力を合わせて土嚢を台車に運び込む。台車はそこそこ大きく余裕で5つの袋を積み込めた。すると台車を引く方に3人、後ろから押す方に3人と綺麗に分かれた。あれ、私はどうすれば?前も後ろもちょうど3人分のスペースしかなく、どちらに行ってもあぶれてしまう私。


「ったく、どんくさいねぇ」

「私のせいですかにゃ?!」

「後ろを4人で押していきな。ほら行った行った!」


どやされて私たちは動き出した。重たいよー。

ベビーカーを押すお母さんくらいの速さで、私たちは台車を押していく。工事現場はどこにあるのだろうか?私は押していくだけなので行く先は前の3人に託そう。

ポルェ族の宿舎まで来ると大通りではなく別の道を進む。こっちの道は通ったことがないな。


「ふぎゅぎゅぎゅぎゅ・・・」


しばらく歩くと重さが増した。どうやら緩やかな上り坂になっているらしく、押していけるギリギリの重さだ。

他のみんなも辛そうな声を漏らしている。

その後もアップダウンを繰り返しながらようやく工事現場へと辿り着いた。他の建物と区切る様に木の板で現場は囲われている。その隣に資材置き場のような広場が設けられていて、そこに台車を運び込んだ。


「とうちゃくー」

「にゃあああん、疲れたにゃーん」


私の体力、相変わらず無さ過ぎぃ。でも仕方ないよ、体力なんてすぐつくものじゃないし、10歳だし、女の子だもんね。悪いけどソウロたちに土嚢を下すのは任せて私は休憩だ。

工事現場のお兄ちゃんに声を掛けて、ソウロたちは空いているスペースに土嚢を積んでいく。戻っても空の麻袋はまだまだあるし、きっと一日中こんなことするんだろうなー、もうちょっと休んでこ?


「おわりー」

「もどれー」

「いそげー」

「え。ちょ、速くない?!」


ソウロたちが台車を引いて、あろうことか走り出した。軽くなった分だけめちゃくちゃ速い。私だけ置いてかれて、って追いつけないよ。疲れてて走れないって!


「そんなことしてたら事故っちゃうにゃー?!」

「たーのしー」

「うぇーい」


あっという間に曲がり角を曲がっていってしまった。取り残された私。は?


「・・・歩いて戻るかにゃ」



******


何とか浜辺に帰ってくるとデニーロさんがお昼を持って来てくれたところで、ソウロたちが麦粥を受け取っているところだった。


「ルクスーまいごー」

「まいごー」

「んごー」


私の姿を見つけるとニコニコしながらソウロたちが駆け寄って来る。

くそっ、私を置いて行ったくせに何が迷子だ。憎い、憎いぞこの能天気猫獣人どもめ~ぐぬぬぬぬ。不満と怒りがあるが、それよりも疲れの方が大きい。私が囲まれているとフローベルさんが近づいてくる。


「ったく、やれやれだね。迷子になるなんて情けないよ」

「にゃー、騙されないでフローベルさん。私が本物のルクスよ!」

「なーに訳の分からないこと言ってんだい。こりゃ明日の休みは返上して、町の地理を把握させるしかないね」

「何か不穏な事言ってるにゃー。私は迷子じゃないにゃ!置いて行かれたんだにゃー!」

「まいごーいなくなったー」

「まあ、今日一日これだからね。嫌でも慣れるだろうし、次は迷わないでおくれよ」

「にゃー、濡れ衣ですにゃあああんっ」


もう、こうして無事に戻って来たじゃない!精神年齢的にはとっくに成人過ぎてるんだから道に迷ったりしないんだって。ただ台車を押してたんじゃなくて、周りを観察しつつ道も覚えながら労働してましたよ。


「今度はルクスを真ん中にして台車を引かせるんだよソウロ」

「あいー」


ダメだ、私よりソウロたちの方が勤続日数が長いから向こうの話をまるっと信じてしまっている。フローベルさんの中の信頼度のパラメーターが桁違いなんだよ。

私は涙目になりながら抗議したが徒労に終わってしまったようだ。


「ふぇふぇふぇ、随分と賑やかになったもんじゃなベルよ」


びくっ。今までフローベルさんの大きめの体に隠れて見えていなかったが、しわがれた老婆がひょっこりと顔を覗かせた。大きく腰を曲げ、黒いローブを纏ったその姿は毒リンゴを売りにきたり、イーヒッヒッヒッと笑いながら怪しげに鍋をかき回す魔女を連想させる。


「すみませんね騒がしくて」

「いいや、元気があっていいじゃないかい。ワシはマーザじゃ、見ての通りの余生を生き汚く過ごしている枯れ木じゃよ」

「にゃ。私はルクスといいますにゃ。よろしくお願いしますにゃ」

「ほほ、しっかりとした喋りだねぇ。ベル、いい子が来たようだね」

「ええ、おかげ様で」


ほう、フローベルさんがおばあさんに敬意を払っている。愛称でベルとか呼ばれてるよ、これは子どもの頃から知ってるから頭が上がらないムーブなのか。それとももしかして、このあからさま魔女なおばあさんが町の守護をしているという魔法使いなんだろうか?見た目がもうまんまだしね。だとしたら私も失礼がないようにせねばならないぞ。この町の重要人物には良い印象を与えて、よく顔を覚えてもらった方がいいよね。


「マーザさんは、今日はどうしてこちらに来られたんでしょうかにゃあ?」

「ん?ちょいと石を集めにね。これがワシの日課みたいなもんでのぅ」

「石ですかにゃあ?」


マーザさんにつられて周りの石ころに目がいく。石拾いだなんて老後の趣味だろうか。


「そうじゃ。例えば・・・そこかのぅ」


マーザさんが適当に当たりを付けると、石をどけた。するとそこから姿を見せたのは綺麗な青色の魔石だった。


「にゃあ?!」

「ふぇふぇ、驚いたかい?」

「すごいにゃ、見た感じまったく分からなかったのに、どうしてそこに魔石があるって分かったんですかにゃ?」


見えているところの石ころをどけたら埋もれていた魔石が出てきた。偶然じゃない、狙って出したぞこの婆さん!私の反応に上機嫌だ。

私は思わずそこら辺の石をどかすが、魔石がゴロゴロ埋まっているわけではなく、石ころしかなかった。うん、砂集めの時も石ころをどけているんだから魔石があるならもう見つけているはずだ。


「ワシはこの道50年以上の大ベテランでの、もう見ただけでそこに何色の石があるか分かるようになったんじゃ。ふぇふぇふぇ・・・」

「お師匠様にゃー!?」


これには思わず師匠呼びだ。っぽい見た目といい、この魔石をいとも簡単に見つけてしまう特殊能力、いや魔法使いならクズ石レベルの魔石であろうと僅かな魔力を感じ取って簡単に見つけられてしまうのでは?!

確信した。この人こそ異世界要素の権化、魔法使いその人であると!!



更新遅れました。最近、体調のほうが優れず、PCを前に作業をすると頭痛と吐き気をもよおすようになり、長時間PCに向かえない傾向にあります。勝手ではありますが、体調が戻るまでしばらくはお休みしようと思います。どうなるか分からないのでとりあえず4月いっぱいは様子をみるつもりです。

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