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027 7つの労働

「あらやだ、ルクスちゃんグラスが空じゃない。何でも好きなの頼んでね、お金はわ・た・しが持つからね」

「にゃー、ありがとうございますにゃアスティナさん。おかわりを下さいにゃ」


お言葉に甘えて、私はバーテンに空のグラスを押し出す。バーテンはそれを引っ込めると、新しい果実水を用意してくれた。アスティナさん気前が良いにゃー。でも、あらやだは流石におばさん入ってるにゃー。


「ところで、アスティナさんが言ってた宿連て何ですかにゃー?」

「やだ、興味あるの?宿連ていうのはねー、商業ギルドに加盟している宿屋全ての組合のことよ。ウォートレル宿泊組合総連合会、略して宿連。長ったらしいでしょ?それぞれの宿屋はライバルであり仲間でもあるの。もっとお客さんが来てくれるようにするにはどうしたらいいかとか定期的に話し合ったり、連携して宿泊業全体で何かやろうとかー、病気やケガで働けない時にお互い助け合うとかそういうことのためにあるのよ」

「なるほどにゃあ」


知らない単語だったから異世界要素かと思ったりして、てへ。

それにしても、どこの世界でもそういうのは必要なんだね。やっぱりねー、自分だけ儲けようとか自分さえ良ければそれでいいなんて考えじゃダメなんだよね。全体を盛り上げていかないと続いていかないし、すぐにサービス終了になっちゃうからね。


「あーあ、ルクスちゃんが看板娘としてウチの宿屋に来てくれたらなー。お客さんがもっと増えるだろうなー。ルクスちゃん可愛いからすごい人気になるよー」

「宿屋の仕事なんてポルェ族にやらせるような仕事じゃないよ。清潔第一だからね、抜け毛が舞って布団もシーツも台無しだろうよ」


アスティナさんの勧誘に水を差すフローベルさん。安心して下さい、靡きませんよ。


「やだー、フローベルさん。それはポルェ族ならの話ですよー。ルクスちゃんはミミだから、そこは問題ありませんて。お客さんを部屋まで案内して、食事の時は給仕をやって、宿の掃除をすれば、そうだなー・・・。うん、私なら普通のポルェ族の4倍のお給料を出します!」

「4倍!」


きゃー、ごめんなさいフローベルさん。靡いてます、めちゃくちゃ靡いてます。


「どう?町の雑用よりもウチの宿で働いた方が良いと思わない?」

「そんなうまい話があるもんかい。ルクスが何と言おうと、ギオンを納得させられんのかい。誰がギオンに話をつけるかって、あんたがやるんだよアスティナ」

「やだー、お酒の席の軽口ですよー」


すん。さっきまでの勢いが嘘のようにアスティナさんは黙ってお酒を飲み始める。フローベルさんは勝ち誇ったような余裕の笑みだ。

ギオンという名には覚えがある。夕凪亭でシフさんが若大将がどうのこうのと言ってたやつだ。

どうも、ポルェ族関連の事にはギオンという人が深く関わっている様子。でも今は触れないでおこう。何だか怖いからね。


「仕事といえば、ポルェ族がやってる町での仕事ってどのくらいあるんですかにゃ?フローベルさんは私に一通りやらせようとしてますけど力仕事とかは省いてもらっていいですにゃ」

「そうさねえ、酒場で働いてくれてたらあたしも苦労はしないんだけどね」

「あれは不可抗力ってやつですにゃあ」

「はっ、難しい言葉を知ってるじゃないかい。まあ、遊ばせておくわけにはいかないから何かしらビシっとやってもらわないとね」

「やだ、それって私にルクスちゃんを任せてくれれば解決ですよ!」

「それだけは無いね。仕事がいくつあるかって細かいのも入れたら、ざっと40以上はあるよ。大まかに分ければ7つのグループになるね」

「ポルェ族を7つに分けて~ってやつですかにゃ?」

「そうだよ。1つ目はミミを働かせるための酒場、2つ目はざっくりまとめて海関連・・・」

「ざっくりにゃ!」


海関連といってもいろんな種類がある。今日だけでも貝獲りに漁港の掃除、塩作りのお手伝いに、薪運びと過剰労働だった。砂運びとかまだ知らない仕事もあるみたいだし、雑用はつらいよ。


「牧場関係に、配達業務、力仕事の運搬系に・・・」

「私のところの宿泊業だよルクスちゃん!」

「鬱陶しいね。で、7つ目は個人事業主への貸し出しだ。技術の要らない簡単な雑用が主だからね、どうしたって力仕事に偏るよ」


ポルェ族の仕事はかなり幅が広そうだな。どれもこれも肉体労働の香りしかしないぜ!


「最後の個人事業主への貸し出しって何ですかにゃ?」

「個人経営の店の手伝いとかだね、店番とか売り子とかポルェ族が基本とする雑用以外の事をやらせたい時に割高で貸し出すのさ。ただし変なことされちゃ敵わないからね。商業ギルドで信頼のあるところにしか貸さないけどね。ギオンの了承も取らないといけないしね。あと、アスティナにはルクスを貸し出さないからそのつもりで」

「やだー!フローベルさんずるいですよー」


私は無言で空のグラスを押し出す。新しい果実水が出てきた!これでもう6杯目ですごちそうさま。

だって奢ってくれるって言うし、いいかな?って。アスティナさんは自分の気前の良さを見せてアピールしているわけだから逆にたくさん飲まないと失礼だと思うなあ!

ほら、主任の皆さんだって会話の合間に何だかんだと私より多く飲んでますし。私は果実水で向こうはお酒だからね!平等じゃないよ!


「・・・さてと、明日もあるし今日はこの辺でお開きにするとしようかね。定期報告会はいつも通り行うが今のうちに何か言っておくことはあるかい?」

「やだー、ルクスちゃんと別れたくないですよー。そうだ、二人だけで2件目行きましょっか」

「却下。オルケットはどうだい?」

「いや、俺からは特にないな」

「そうか、なら解散だ。皆明日からも変わらずキリキリ働いとくれよ」


フローベルさんの仕切りで飲み会は終了した。

アスティナさんは最後まで渋っていたが、オルケットさんが連れて帰った。フローベルさんは仲間内に私を見せびらかせて満足しているようだ。

私も奢ってもらって良い思いをさせてもらった。ちなみに、ここの払いはツケのようだ。商業ギルド内部にあるので給料から天引きされるのかもしれない。


「よし、じゃああたしらは今日はもう上で休むとするかね」

「上ですかにゃ?」

「ああ、帰るのが面倒だ。ほら、そこの扉があるだろ。そこを上がっていくと仮眠室があるからあんたも泊まっていきな」

「はいですにゃ」


入り口とは反対にある扉を指してフローベルさんが立ち上がる。トイレかと思ってたけど上へ続く階段があるのか。バーテンのありがとうございましたという言葉を聞きながら私たちは階段を上っていった。


「はあ、ちょっと飲み過ぎたかね」


ドレスを脱いで肌着になったフローベルさんは、どすんとベッドに腰を下ろす。衝撃でキュイっとベッドが鳴いた。

仮眠室は6つのベッドが横2列に並んでいる。利用しているのは私たちだけだ。


「あんたもドレスは脱いどくれよ。そのまま寝たらしわになるからね」

「分かりましたにゃ。何かシャツとかありますかにゃ?脱いだら裸なんですけどにゃ」


しゅるりと衣擦れの音をさせてドレスと脱ぐとフローベルさんが備え付けのクローゼットに仕舞い込んだ。ドレスを着るときに下着は着用しなかったので私はまたしても生まれたままの姿だ。


「何もないよ。後は寝るだけだし布団に入っちまえば関係ないだろ」

「え」


だいぶお酒が回ってるのか、フローベルさんは早くも布団に入ってしまうとすぐに寝息を立て出した。

えー、全裸で就寝ですか。ドキドキしちゃう!

ちょっと妙なテンションになりつつも、私は全裸で布団に入ることにした。ひんやりする。

明日も仕事だし、私もさっさと寝てしまおう。


******


しょわわわわああああ~っ


「わあああああああああああああああぁんっ」


翌朝、私はおねしょをした。


「ドレスを脱いどいて正解だったね。生まれたての赤ん坊じゃあるまいし。ったく、調子に乗って飲み過ぎたんだよ」

「だってえええええぇ、今までと勝手が違うからああああああっ、わああああああああぁんっ」


中身は大人なのに!

私はショックで大号泣した。女の子になって男の時と勝手が違ったのだ。私の意思を通り越しておしっこが布団を濡らしてしまった。恥ずかしい死にたい。


「にゃああああああああああああああああぁんっ」


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