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001転生しま

「死んだ?俺が、ですか?」

「はい。こちらをどうぞ」


お姉さんはちょっと大きめの鏡を向けてきた。そこには俺が映っていた。

炎だ。青白い炎、火の玉だ。

鏡には火の玉が映っている。それを俺は当たり前のように自分だと認識しているのだ。


「ちょっと。待ってください。心の。整理を。しますから・・・」

「突然のことで誰しも混乱しますから。ゆっくりでいいですよ」

「あの、異世界転生とかってできますか?」

「え?はい、可能ですよ?」

「死んで良かったーーー!!!」


炎がより一層大きく膨らんだ。感情を表すかのようにソレは静寂の青から火花を散らせ、赤味を帯びた烈火へと姿を変えた。


「ちょっと!そんなに喜ばれますと他の方のご迷惑になりますのでっ」

「止めないでください!俺はもう死んだんでしょ?死んだ後も他人のことを気にかけなきゃいけないなんて嫌ですよ!」


俺は死んだ。死んだらなんか感情がダイレクトで素直だ。だから嬉しければ喜びが爆発してしまう。


「うぇーぃ!人生勝ち組フォーーーーーッ」


天に両手を突き上げる。が俺にはもう手がない。というか肉体がない。俺は魂だけの存在になったのだ。

魂というか見た目は火の玉だ。手の代わりに激しく燃え上がり喜びを精一杯表現する。


「勝ち組どころか死んでますー」


事務のお姉さんが困ってしまっている。だがすまない、このハイテンションはとても気持ちがええんじゃ。


人は死んだらどうなるのか。

魂は肉体を離れ、生まれ変わるための準備期間に入る。


「そのための場所がここ。そして私は迷える魂をサポートする事務員です」


思っていたのとはずいぶん違う。いわゆるここがあの世の入り口か。見た目は携帯ショップか郵便局。右を見ても、左を見ても俺のようにカウンター越しに説明を受けている人、いや魂ばかりだ。


「本来なら誰しも大なり小なり罪を犯していますので、必ず地獄で魂を綺麗にするためにお仕置きされるのですが…」

「うーわ、地獄とか本当にあるんだ」

「今回の場合ですと、死因が高齢者がのどに詰まらせた餅を口で吸引して助けたが、バキュームの強さが仇となり、今度はその餅が自分の喉に詰まり、窒息死。ですので善行をしての死亡となりますので、生前の悪行はその行為で相殺。即生まれ変わりが可能なんです」

「ってちょっと待てーーー!!!」

「きゃあっ」


火柱が上がる。なんだその死因はっ。


「てか不憫すぎるわっ。俺そんなことで死んじゃったの?!」

「はい、記憶にございませんか?死後はしばらく記憶が混乱しますので無理もないですね」

「うぅ、まあ人助けで死んだんなら短いなりにも意味のある人生だったと思えるような・・・いや、いやいやいや?」


はあ、なんだか一気にテンションさがっちゃったよ。俺はみるみるうちに小さく元の青白い魂に戻っていった。

記憶か。確か誰かと一緒に、どこかに行って、餅を・・・・・・。

その先はあんまり覚えてないが、そっか俺死んだんか。

何かそんなにショックではないな。ふーん?くらいにしか受け止めていないというか、実感が湧かないというか。

てか俺自分の名前とか思い出せないな?どんな暮らしをしていたんだっけ?


「それは次に生まれ変わるための準備の一環のようなものです。次の人生には必要ないものですので一部の記憶などは魂から剥離されて、基本的には魂本来の重さに戻っていくようになっています」


本来の重さですか。ふむ、何だったら生きていた時の事は全部夢で最初から魂だけだった気もしてきたなぁ。それくらい今の状況が当たり前で当然のように感じている。

あれ?というか今考えていることに答えられた?思考ダダ漏れ?


「それよりもこれからのことに目を向けませんか?」

「それもそうですね。それで、異世界に転生できるというのはまことなんですか?」

「もちろんです。それではテンションもだいぶ落ち着いたところで、これからの話をしていきますね」


お姉さんが資料を広げて見せる。

『お得で安心!得々生まれ変わりプラン』


「えっ、何ですかコレ」

「ご説明させていただきますね。近年、我が社ではですね・・・」

「我が社?!」

「天国をご利用されないことを条件といたしまして、ご希望の生まれ変わり先を自由に選択できるようになりまして、生まれ変わりの準備ができたお客様順に早々に生まれ変わることをお勧めしているんですよ」

「お客様?!」

「もちろん強制ではないんですよ。現在、天国は定員オーバーギリギリの状態が続いていまして、運営管理に多大なコストを費やさなければいけない状態が続いてしまっているんです。従業員の負担も右肩上がりで体調を崩す者もでる次第で、私共としてはご希望通りの生まれ変わりを提供することでお客様と我々の双方が笑顔になれる関係を築いていきたいと願っているのです。あくまで判断を下すのはご本人様ですので天国行きか生まれ変わるか、ご自由に決めていただけます。ただ、ありがたいことに多くの方からご好評をいただいておりまして生まれ変わりを望まれるお客様が大多数を占めています」

「すごい推してきますね。ちなみに聞いておきたいんですけど、何で天国はそんなにぎゅうぎゅうなんですか?」

「んー、それは様々ですね。残してきた家族を見守ったり、家族がこちらに来るまで留まったり、また一から始めるのが面倒だって方も意外と多いですし、地獄で清算された罪が重かった方ほど天国に長く駐留される傾向にあるんですよ。滞在に期限はございませんので快適に過ごせる天国から抜け出せないお客様が多いんです。あとは最近だとアニメやドラマの続きが気になって次の人生にいけないって方が増えてきましたね~」

「わかるー。死んだらもったいないくらいに娯楽に溢れかえってますもんね」

「ですです。そういった状況を改善するべく提案されたのがこのプランなんです。全ての人間がイケメンでお金持ちになるなんてことは不可能ですから。事細かに指定して生まれ変わることができるこのチャンスは魅力的だと思いませんか~」


来世はイケメンでお金持ちか、ふふふ。

って、ここでほくそ笑んだら死ぬ前はブサイクで貧乏みたいじゃないか。あぶない、罠かよ。

天国ってのも興味はあるけど異世界転生を逃すほど俺はバカじゃない。

だって全俺が憧れた異世界転生ですよ奥さん?剣と魔法のファンタジーですよふぁー!

俺はそのプランで生まれ変わることにした。


******


まるで宇宙空間にでも放り出されたかのような景色、そこにぽつんとちっぽけな俺が漂っていた。そこには等間隔で無数の扉がずら~~~っと並んでいて、果てが見えないほどにそれは続いている。しかも上下にも同様に扉が無限に続いていた。


「な、なんですかここは」


その景観に圧倒されていると、お姉さんの声だけが響いてくる。ここにいるのは俺だけだ。


「本来ならここまで意識を保って訪れるのは不可能なんですけどね。このプランだからこそできる特別体験ですよ。えーこほん、世界というのは無数にある可能性なんです。その扉ひとつひとつが世界とつながっています。あったかもしれない、もしもという可能性の数だけ世界は存在します。お客様が生前いた世界も一つの平行世界に過ぎないんですよ」


過ぎないんですか。ふーむ、この扉全部が違う世界への入り口ってことか。なんか感慨深い。


「あらゆる無限の可能性ってやつですか。魔法が使える現代日本とか妹がそんなにいるっておかしいよねってレベルのお兄ちゃんになれるとかですよね」


「事細かに設定できますので、それらの掛け合わせも可能ですよ」

「それは胃もたれしそうなんで勘弁願いたいですね」


つまりこの中から俺の希望にあった世界へ行くらしい。


「ではお客様のご希望をお聞かせください。基本的に叶えられないことは無いのでどんな無茶ぶりされても構いませんよ」

「そうだな、剣と魔法の異世界ファンタジーがベースで」

「はいはい。希望者多数の人気の世界ですね」

「えっ」


みんな考えることは一緒か、嫌だな。


「そこ、まったくのゼロとは言わないんですけど転生した人が少ないとこにできます?俺だけ特別感が損なわれるじゃないですか。向こうで元日本人と会うとかなんか抵抗があるんですけど」

「可能ですよ」

「よかった。で、性別は女の子でお願いします」

「女性ですか?イケメンモテモテハーレムも自由自在ですよ?」


それも良いんだけど、正直今までそういうのに縁が無かったから苦手意識がある。童貞なんて気安く言われてはたまったもんじゃないが、だいぶこじらせたんだ俺は。だから普通に考えられん。

それよりも女の子になりたいという願望を叶えるほうがいい。おっさんはすぐ美少女になりたがるというやつだ。


「せっかくだから今までとは違う自分ということで」

「わかりました」

「と言ってもなりたいのは猫耳美少女です!」

「あ・・」

「プリティーでキュートな猫耳美少女になりたいんです!!!」

「・・・できますよ」

「やった!なんかドン引きされてる気もするけど恥ずかしがって後悔だけはしたくないから!」

「・・・わかります」

「ありがとうございます。あとは前世の記憶は残してもらう感じでお願いします、希望としてはこのくらいですかね」

「了解しました。えーと、勇者の素質、伝説の武器、チートスキルなどは如何なされますか?他の方々はこぞってこのあたりの能力を希望されていましたが」

「あー・・・俺はそういうのはいいです。強くて最初からってのも憧れはありますけど、せっかくの異世界ですからゼロから満喫したいっていうか」

「分かりました。では条件にあう世界へご案内します」

「お願いします」


いよいよか。俺は胸が高鳴るのを感じていた。

すると急に記憶が鮮明に蘇ってきた。


「ああああっ。マコトーーー!ありがとおおおっ。俺行くよーーーー!」


目の前を扉が高速で滑っていく。上下左右、ジグザグに。そうして、一つの扉が俺の前で止まった。


「それではいってらっしゃいませ。次の人生が実り多きものでありますように・・・」


扉が開く、そこはまばゆい光で満たされていた。

光に吸い込まれるように俺の意識は遠のいていく。ここから俺の異世界満喫ライフが始まるのだ!


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