ほのぼのと4日目あんど5日目!
今日はたくさん生産系スキルが上がったので、ハッサクとサクアのレベル上げは終了とするとして、一旦温室から移動し、ちょうどお昼寝の時間だったから絵本を読み聞かせをし、寝かしつけてから自分の書斎へと移動する。
書斎に移動したのは、お父様の使用していたスキル、結界について調べるため。結界というスキルは先天性スキルにも、血縁スキルにも、ましてや後天性スキル一覧にも載っていなかった。
つまり、僕の常識ではスキルは後天性、先天性、血縁スキルの3つだったが、もしその他にも一般的に知られていないスキル取得方法があるとしたら?
(その可能性に気づいている時点で、調べるのも手間がかからないはずだ。調べるキーワードは絞り込めているんだから。
防御系スキル、結界、神話系の本を重点的に探せばヒントが見つかるはず)
さて、一番最初に取ってから一度も使っていない速読スキルを使うとしますか。
※※※※
結果から言えば防御系スキル、結界、神話系の全ての本を調べてみたけど、結界のけの字も見つからなかった。
(ここまで見つからないとは……、先天性か血縁スキルの一覧で見落としたのか。でも、なんかおかしい。また神々からの気まぐれクエストという訳ではないだろうし)
やっぱり、自力で探すのではなく、お父様に聞いてみるしかないのか……。出来るだけ、自分で探したかったのだけれど。
うんうんと唸りながら悩んでいると、
「やっぱり、結界のことを調べると思っていたよ。しかも、ここまで的確に調べているとは思っていなかったけど、一歩考えが足りてなかったけどな。
自力で調べないで結界のことを聞いてきていたら、後継者は作らず、このスキルは私の代で終わらせるつもりだった。
私もお前と同じく、攻撃系スキルはあまりなく、後天性スキルで補うしかなかった。そう言う人間が有栖家に多かったんだ」
(……いつの間にこの部屋にいたの⁈)
僕は驚きを隠せず、いつのまにか僕の書斎にいて、知恵を振り絞って出したキーワードに当てはまる本の1冊を読みながら、そう話すお父様から目を離すことが出来なかった。
「本当に惜しかったな。ここまで調べをつけたのは天晴れだよ、私は神話系の本を読むまでたどり着けなかったからな。
それを読んだ上で、有栖家に伝わる歴史書を読みあわせて読めば答えは自ずと出ていただろうに。
まあ、そう簡単には見つかんないようにされているから、零は伝承を受ける資格が十二分にあると私は判断した。
だから、結界および伝承性スキルの継承者を次男であるお前とする」
そう言ったと同時に、お父様はパタンと音を立てて本を閉じた。
(伝承性スキル……? しかし、そんな存在があることは説明されていない。3つのスキルの種類でこの世界は成り立っているはず……)
「伝承性スキルはこの世界の歴史から消されたスキルだ。何百年も前、この世界のバランスが崩れそうになった時、2人の勇者が現れた。
1人の勇者はこの世界を救い、もう1人の勇者は伝承性スキルの存在を殺した。その理由は昔過ぎて資料は残っていない、それを知るには隠した勇者の子孫または伝承性スキルの継承者、それか世界を救った方の勇者の子孫または伝承性スキルの継承者を探すしかないのかもしれない。
2人の勇者は世界を救い、伝承性スキルの存在を殺した後、姿を消したことから、伝承性スキルの存在を継承者が隠すのは暗黙の了解となった。
それ以降、伝承性スキルを見つけ出すのは書籍では不可能となった。だから、何種類かの本を読み比べてそして歴史書を同時に見れる芸当が出来なければ、伝承性スキルを見つけ出せないんだ」
(……この世界にもバランスが崩れた時期がある? 歴史書を読み漁ったけどその事実はなかった。勇者がいたことも、ましては2人もいるなんて知らなかった。この世界は何かを隠している? それを知ってしまったらいけないような気がするのはなぜ?)
「だから、伝承性スキルを覚えるために一時的に私の兄の元に行ってもらう。
私の代は稀に見る、後継者が2人いる時代だ。兄は教師だから、学びながら、兄の仕事の補佐をしつつ、伝承性スキルを手に入れて来い。それに、攻撃スキルの皆無については教師である兄に相談した方が上手く纏まるだろうし、最低でも3年、明日から行きなさい。
元々から、領主の後継者は長男、向いていれば伝承性スキルの後継者は次男にすると決めていたから話はつけてある。幼いお前を親元から離すのは心苦しいが、頑張ってきなさい」
ほのぼのと生きていくつもりでいるつもりだったんだけどこれだけはそうもいかないみたいだね。回避不可能ってところか。
「わかりました」
僕にとっても、こう言うことが最良の選択だろう。
※※※※
次の日。僕は朝早くに支度を整え、叔父様がいると言う、騎士族の領地に行くことにした。お父様は騎士族の人とも交流があるらしく、僕らが生まれた時からもしかしたら一時的に叔父様のところに一時的に預けることがあるかもしれないと話をつけておいたらしい。
(報告、連絡、相談は人として当たり前のことだからね。貴族の身分がある以上、さすがの自由人が多い有栖家の人間でも重要だから事前に言っておくのは当たり前のことか)
だから、一時的の住居の転移も思ったより上手く行った。
機械職人が作った通信機器での交渉ですんなり物事が進み、伝承性スキルの後継者にされた次の日の朝には騎士族が納める地に拠点を一時的に移動する許可があっさりと下りた。
そのため、ただいま僕は馬車に揺らされながら移動中だ。
もちろん、僕が移動すると言うことは従魔であるハッサクやサクアも拠点を一時的に移動すると言うことになる。
ハッサクやサクアは不満気ではなく、むしろ楽しそうだから良かった! でも、理由はわからないけど何故か水季くんの方が不満気だったのが、何となく心に引っかかる。
別に置いていくことの申し訳なさではない。なんか、企んでそうで怖いのだ。
(僕がいないうちにとんでもないことになってなきゃ良いけど)
ああ、しまった! これは自分でフラグを立てて、回収したパターンだぞ。
と、数秒前の僕の思考回路を今更ながら恨むのであった。