ほのぼのと5日目!
嫌な予感はするが、出発してしまった今、それはもう手遅れだろう。
とりあえず、今は死なない程度に強くなることに意識していかなければ、前世の時のように油断が自分を殺める自体を招くこととなる。
それは正直言って避けたいところだ。
ゆうが付き添いをすると我儘を言っていたが、叔父様もいるし、第一使用人を雇うことに抵抗のあるくらいだ、使用人の付き添いは拒否したらしい。
だから、今馬車の中にいるのは僕とハッサクとサクア、最低限必要な馬車を運転する使用人くらいだ。
正直、僕は戦えるスキルがないし、まあ拘束くらいは出来るだろうけど、属性の相性が悪いと効果がないしね。
正直に言うと、頼りになるのはハッサクの柑橘投げくらいだし、サクアは戦えるかどうかも怪しい。
「……主人が戦力外とは如何なものか」
怪しいと言えど、一番戦力外なのは僕なのだ。
サクアは攻撃をしようと思えば出来るのだから。
「んきゅ! んきゅぅ! (しんぱいしなくてもだいじょーぶだよ、あるじぃ! あるじのことはボクがまもってあげるから!)」
「んぱぁ? んぱぁ! (よくわかんないけど、ボクもあるじのことをまもるよぉ!)」
(……いやいやいや、それが問題あるから悩んでいるんだって! 小さいうちはいいよ? 百歩譲って、微笑ましい光景にしか見えないから。
でもね、青年になれば別! 違和感しかないから、だから頭を悩ましているの!)
……なんて、一生懸命そう意気込んでいるスライム達に言えるはずもなく。
「……ありがとう」
としか言えないのは僕だけではないはずだ。
やっぱりある程度は強くなるしかない、そう心に誓うのだった。
※※※※
騎士族が領主を務める街は、水源と鉱山に長けた街である。騎士族の歴史は他の貴族よりも浅い、今から前世で言えば7世紀くらい前のことかな?
騎士族の初代当主は庶民であった。今以上に貴族と庶民の溝が深かった頃、今は王様によってどこを誰が治めるか決まっているのだが、その当時はまだされていなかったらしく、土地争いが盛んに行われていた。
その頃、彗星の如く現れたのが騎士族の初代当主であった。ちなみに2人の勇者が現れたのはこの争いが起こった時からもう3世紀前のことだ。
お父様曰く、その時にはもう2人の勇者の存在は隠されていて、この武勇伝を知って剣を扱うようになったわけではなく、純粋に兄弟を守り抜きたくて強くなったと綴られていた。
騎士族の初代当主は幼い頃に母親と父親を亡くして、知り合いだった冒険者ギルドのギルドマスターが親代わりで冒険者として働き、自分を合わせた6人を養っていたそうだ。
その人は大金を手に入れられるくらいの実力はあったのに、日帰りで済ませられるクエストに行き、幼い兄弟達の面倒を見る毎日を過ごしていたそうだ。
そんな穏やかな日々は突然破られた。初代当主と末の弟以外、正体不明の人物に殺害された。
何よりも大切にしていた兄弟を殺害された初代当主は復讐をした。今まで手加減していた実力を発揮し、犯人を突き止め、復讐を達成させた。
結果、復讐ではあったが、根が優しいことは変わらなかったため、国民を一切巻き込むことはなかった。本人にとっては復讐であったが、周りから見ればヒーローでしかない。
そして、王にもヒーローだと認めさせ、騎士族の初代当主と言う座を手に入れたのだ。
……きっと、わかっていたはずなんだ。復讐をしても自分の兄弟は戻ってこないと、貴族になろうと自分の兄弟は生き返ることはないとわかっていたはずなんだ。
それでもやめられなくて、自分の復讐だったはずなのに、周りからはヒーロー扱いされる罪悪感はなかったとは言えないだろう。
だから、初代当主は重圧に耐えられず、前世で言う還暦で自殺した。そして、後を追うように彼の末の弟が亡くなったそうだ。
末の弟はもともと体が強い方ではなく、兄が自殺したことにより、悪い方へ引きづられてしまったことが死の原因ではないかと言われている。
(……まあ、口頭での歴史の伝達だから、本当に正しい歴史であるか否かは、本人に聞くしかないだろうけどね。それはもう、亡くなった今出来ないけれど)
初代当主の後を引き継いだのは、彼の長男で政治に向いていたから、一代で今の状態に限りなく引き上げたのが2代目の彼だと言えると政治関係の書物に綴られている。
……でも2代目もまた自殺しているんだよなぁ。そこが不自然なんだ、そしてしっかりと後継者を示し、自殺した。
別に後継者を示したことに違和感を感じているわけではない、ただ何かが引っかかるのだ。
「……でも、他人が口出しする訳にはいかないしなぁ。この違和感はあまりに抽象的で、大人が納得する根拠がない」
騎士族の当主は現在45代目だ。
そのうち、自殺しているのは初代、初代の弟、2代目、5代目、8代目、12代目、20代目、25代目、31代目、39代目だ。
あまりにも不自然に多すぎるのだ。何よりも、自殺している当主は、なにかしら大きな物事を動かした人物だ。
初代の弟は、自分の体調と相談しながら学校に通っていたため、人より卒業するのに時間はかかったが、秀才だったため、2代目の家庭教師をしながら、自分の兄である初代当主のデスクワークのサポートしていた。
初代当主の時代では、安定していたのは初代の弟のおかげとも言える。そして、原石であった2代目の才能を開花されたのは彼だとも言える。
騎士族の歴史を見る限り、自殺した当主達は悩みを抱えていたとかそんな事実もなく、突然自殺している。……初代の弟は理由も無理やり作ろうと思えば作れるが、なんかもやもやする。
お世話になるから、騎士族のことを知って置こうと思ったら、思った以上にもやもやさせる歴史だったよ。
「……やっぱり強くならないといけないな」
ここまで巻き込まれてしまうなら、自分のことを、大切な人を守るために強くなるしかない。でも、ただ強くなって力を振るい続けるだけなら、僕や他の人達を殺した双子と同じ。
だから、僕は知識をつけなければならない。強い力を振るうばかりではなく、被害を最小限にした戦い方をしなくてはいけない。
「頑張ろうね。ハッサク、サクア」
今の僕は知らない、お父様と叔父様がどんな思いをして伝承性スキルを手に入れたのかを。




