その2!
さて。香水や石鹸の調合については、飲食物ではないため、新鮮な水じゃなくても大丈夫。
しかし、肌に触れるものなので、水を汲んでから遅くて1週間後くらいまでのものを使うのが理想的と言われている。
サクアについてはスキルが謎すぎるからどうしたら良いか分からないけど、とりあえず餅を作り続けて貰い、それを食して貰えば2つのスキルを伸ばすことができるはずだ。
(……本人が嫌がったら他の伸ばし方を考えようと思っていたけど、サクアは楽しそうに作っては食べ、作っては食べを繰り返しているからこのスキルレベル上げは嫌いではなさそうだ)
ハッサクは変わり種ではあるけど生産系スキルはあるから、まずはその才能を伸ばして上げたい。僕が知識チートをして安易に発展させるよりも、この世界に近しい存在が発展させた方が良いと考えたからだ。
それから、ハッサクには攻撃スキルと言えるかはわからない、柑橘類の汁を飛ばして目をしばしばさせるという攻撃もあるし、水季くんかゆうを付き添いにどっかモンスター狩りに行くとしよう。
(僕も戦闘スキルを手に入れなきゃ、この街にずっといるならまだしも、大人になれば自分自身で自分を守らなければならないのだから、いくらお父様が統一しているこの街が安全だとは言え、いつその状態が当たり前じゃなくなるかわからない)
(前世安全であると、あの危険な事件が他人事だと自惚れて、あの事件に巻き込まれてしまったのだから)
僕の周りは安全だからと言って、この世界が完全に安全だとは言えない。1番、僕の命を奪った奴らと離れていたとしても、もしかしたら運悪くやって来てしまうかもしれないと思うと、戦う手段がないとさすがに不安だ。
それはひとまず置いといて、今はハッサクの生産系スキルのレベル上げと、僕の生産性スキルの取得が今日の目的だ。戦う手段はあとでお父様に相談することにしよう。
「ハッサク! とりあえず、柑橘系の実と石鹸の材料、香水の材料を集めて置いたけど……、これで作れたりする?」
そう聞けば、ハッサクは触手を作り、丸を作ったということは作れるらしい。
「レシピとか必要? それなら読み上げるけど……」
この質問には、ハッサクはバツを作った。
(……ユニークモンスターには特別なレシピでもあるんだろうか? まあ、ハッサクがいらないって言うんだからいらないんだろうけど)
「じゃあ、任せても大丈夫? 材料が足りなかったら言いなよ?」
そう聞けば、また触手で丸を作る。その時の顔はどこか笑って見えた。
※※※※
さて、ハッサク自身の調合スキルレベル上げは本人に任せておいて、次は僕の番だ。
まず、薬作りのルールをもう一度確認だ。
薬作りのルール
・薬草はすり鉢でする。
・水は新鮮なものを使いましょう。
・スライムは必ず新鮮で、清潔草で清めたものをつかいましょう。
・100mlに対して回復草は2枚。
状態異常薬草(例ピリピリ草、ミニドク草など)は1枚にしましょう。
・果物風味にしたい時は100mlに対して、10グラムの果物を入れましょう。
・状態異常効果薬(例麻痺薬)は100mlに2枚使いましょう
・ピキピキの実など液体に溶かして使うものは、500mlに1つ
これをしっかり守れば調合スキルがなくてもある程度の薬作りが可能となるはずだ。
まず、温室近くにある井戸でたくさんの水を汲み、汲みたてであるから、薬作りの基準は満たしているが、念のために清潔草で清める作業から始める。
清潔草とはジュレ状の回復ポーションを作るときに必要になる素材だ。これを作るためには、スライムが必要になってくるため、念のために清潔にしておくのが薬作り界では常識だ。
僕には前世の記憶かあるため、井戸水のリスクを多少なりとも知っている。だから、手間にはなるが、清潔草で清めておきたい。
まず、回復ポーションを作って見ようと思う。
回復ポーションの素材は、下級であろうと上級であろうと同じ、2つの素材から出来ている。
回復ポーションの素材には回復草が必要で、回復草の質の高さで下級か中級か、それまた上級なのかが決まる。
僕には植物の専門の鑑定があるため、効果を鑑定してから間違えることは基本的にはない。
今回は思い出す前から作っていた下級回復ポーションを大量生産して見ようと思う。
ひとまず、一回に1Lの下級回復ポーションを作ってみよう。
まず、ルールにある通り、100mlに回復草は2枚と決まっているので20枚の回復草を用意する。もちろん、下級回復ポーションを作るので、回復草(小)を使います。
次にすり鉢を用意して、葉っぱが細かくなるまですります。で、沸騰させた1Lの水の中に入れ、煮込みます。煮込む時間は水が緑色になるまでだ。
水が緑色になるわけないだろって?
まあ、それはファンタジーだからとしか言えないし。原理はわからないけど、とりあえず緑色になります。
緑色になるまで、時折かき混ぜながら回復ポーション用の瓶を用意して、後は完成を待つだけ。
充電式コンロはもう一台あるので、もう一回清潔草で浄化済みの1Lの水と回復草(小)を下処理を終えた後、工夫を凝らしてみる。
ハッサクの材料を集めていた時に集めた、ストロの実(前世で言う苺風味の木の実)を10グラム下処理を終えた回復草(小)をすったすり鉢の中に入れ、ストロの実の原型をなくす。
その後、沸騰させておいた水の中にそれを入れ、色が変わるまで待つだけだ。
その作業を終えた後、1回目の下級回復ポーションが色が変わってきたため、少しかき混ぜ、出来たかを確認する。
(……うん、出来栄えは良さそうだ。前世を思い出す前の腕は劣ってないようだな)
出来栄えは上々だったので、火を止めて、瓶に入れる前にある程度冷ますことにした。
2回目の下級回復ポーションも既にほんのり色づき始めてきているため、今回は味を均等にするためにこの段階からかき混ぜ始めることにした。
しかし、ただかき混ぜるだけでは暇だ。だから、ハッサクの方はどんな調子なのか確かめるために視線を向けると……、香水やら石鹸やら、使え切れないほどの量が大量生産されていた。
(……うん、見なかったことにしよう!)
そう考えた後、茶色にはなってしまったが、色の濃さが理想に達したからストロの実味の下級回復ポーションを煮込むのをやめ、1回目と同じように冷ます。
2回目のやつを冷ましている間に、1回目の下級回復ポーションをお玉で瓶の中に注げば完成だ!
作っている過程を吹っ飛ばして、結果から言おう。薬用の瓶に入る容量は25mlだから2回分合わせて、80本の下級回復ポーションが出来た。
それから、中級回復ポーションを1Lを4回分作ったので、160本出来てしまった。そのうち40本が普通の回復ポーション、40本はレモグレの実入り、80本はストロの実入りの回復ポーションだ。
つまり、合計240本の回復ポーションを作ってしまったのだ。
まあ、回復ポーションも、ハッサクが大量生産した石鹸やら香水やらも消費出来るものだから平気だろう。本当は上級回復ポーションも作りたかったんだけど、まあ良いだろう。
これ以上続けたら、温室にある回復草を使い切ってしまうくらい作り続けてしまいそうだし、やめておこうっと。
そう考えていると、脳内にお決まりのあの音が鳴る。
『おめでとうございます! 調合《薬》と調理、鑑定《品質》のスキルを手に入れました。
調合《薬》は薬限定の調合スキルとなっております。手に入れるためには年齢ごとに制作本数が決まっておりまして、1歳なら10本、2歳なら20本、4歳なら40本で調合《薬》を手に入れることが出来ます。
調理スキルは、調理をすることで手に入れることができます。あなたの場合、調合をする際、調理器具を使って調合していたため、派生的に手に入れることができました。
鑑定《品質》は、調合レシピを一定数の暗記、鑑定《植物》と《魔物》を手に入れることで手に入るスキルです。調合などの生産スキルで作った物の品質を見ることが出来ます』
(……って手に入るの早くねぇ⁈
ああ、そうか。年齢が幼ければ幼いほどスキルが手に入りやすいんだっけ? 転生者だからとか関係なしに誰でもそう言う基準らしいから、4歳の僕には後天性スキルが手に入りやすいのか……)
『おめでとうございます!調合《薬》のレベルが4、調理のレベルが4、鑑定《品質》のレベルが6に上がりました!
一定数のレベルに達したため、鑑定《品質》のみ、品質レベルだけではなく、薬の状態を確認することが出来るようになりました』
(……年齢が幼い時からやり始めるとレベルが上がりやすいらしいし、むしろ僕はレベルが上がりにくい性質のようだ。上がる子は、一気に10くらい上がるらしいし。
調合する時、調理器具で作らないなら、皆は何で作っているんだろう? まあ、調理スキルは有難いから万々歳だけどね)
『……おめでとうございます。ハッサクの調合レベルが18、サクアのお菓子作り、共食いのレベルが20に上がりました。
信頼度も50に上がりました。この調子で信頼度を築いていきましょう!』
(いやぁ、今回はたくさんレベルやらスキル入手やらしたなぁ。
それにしても、 立て続けにレベルアップしたから、疲れたのかな。最後はあんまり元気なさそうだったし、最後のセリフはヤケクソぽかったし?)
でも、それの方が親近感湧くし、別にそれは構わないと思う。それより、
(ハッサクも、サクアもスキルレベルが上がりやすい子みたいだし、この調子で頑張ろう!
しかし、謎だ。信頼度が20も上がるような行動はしてないんだけどな)
あまりに一気に信頼度が上がったもんだから、僕は信頼度の上がり方に首をかしげるのだった。