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その2


「落ち着いたか?」


 とても優しい声で聞いてきたから、僕は思わず素直に頷いた。


「後天性スキルはいつから鍛錬を?」


「4歳です。護衛が自分のせいで亡くなる姿を見たくなくて、頑張ってたんですけど、結局僕は誰かに守られなきゃ生きていけないんですね……」


 認められたのは嬉しかった。でも、自分以上に強い相手がいるのは理解しているから、その相手からしたら僕は格好の餌食だ。だから、護衛をつけないで行動するのは不可能なんだ。


「いや、あれくらい戦えれば十分だと思うぞ。有栖家の人間は特殊だ。1人でも欠ければ国がなくなる。そんな血筋だよ。お前が亡くなれば特に冒険者やら賢者やら大物がバンバン犯人を叩くだろうな。そんな未来が見えてるのに、わざわざお前を殺めるような人はいないぞ。それに、お前は弱くないって言ったろ?」


「だって、あの戦闘狂に負けた……」


 意外と悔しかったんだ、最初明らかになめられてたもの。で、意外と強かったからつい本気を出したって感じだよ、あれ! 戦略すら立てない戦闘狂娘に力で無理やりねじ伏せられたも同然だよ、あの負け方は!

 同じ舞台にすら立ててなかったんだ……。


「僕は全てのスキルをレベル最大まで鍛錬したのに、わざわざ朱基さんにわがまま言って、戦わせてくれない冒険者がいないところの派遣の仕事を回してもらってそこまでになって、もうテイマー以外は伸びしろがないのに、僕は圧倒的に負けた。……僕は弱いから」


 あー、せっかく涙が止まったのにまた涙が流れてきそうだと考えていると、急に怖いくらいに真剣な表情をして、


「レベル最大までと言ったな? 今まで後天性スキルの研究論文を発表したものは誰もいない。だから、後天性スキルは劣等と見なされてしまうんだ。それなら、お前が論文を発表すれば良いんだよ。スラムから何人か子供を雇って十数年かけて研究し、発表すれば良い」


 その言葉に正直目から鱗の思いだった僕は、ここまで言うんだろうから、晴火先生が論文を手伝ってくれるんだろうし、なによりも信用ができる。


「それは必要ありませんよ。咲斗も、その兄弟の咲乃も咲良も僕が鍛え上げたので、テイマーである以外は戦い方は一緒で、レベル最大まで上げたものもあります。

それだけではなく、彼らがいた孤児院の子らも僕がいた限りの子達は後天性スキルのレベルは高いのですし、彼らのステータスの記録もありますから、すぐに研究に入れますよ。ですが、それは皆の了承が……」


「それについては僕ら三つ子のステータスは、名前と加護を伏せてくれるなら、別に使っても構いませんよ、零兄様」


 にこにこと笑う咲斗と和葉さんが現れて、僕は「なんでここに……?!」とそう言えば、


「零兄様が倒れたって聞いたので、朱基さんの代理です。和葉さんが連れて行ってくれると言うのでお言葉に甘えて、連れてきていただいたら丁度僕の話をしていましたので」


 ああ、代理で来てくれたのか、嬉しいなと考えながら膝の上に来るように仕草で示せば、怪我していることに躊躇っているのか中々来ないのでどうしたものかと考えていると、


「大丈夫だ、もう治療済みだから痛みもない。だから、ためらう必要はないぞ」


 そう晴火先生に言われて、ぱぁっと表情を明るくしたのは一瞬でその後照れたような表情を浮かべて、靴を脱いで僕の膝の上に乗ってくれたので、よしよしと頭を撫でてあげる。

 多分、しっかり者の咲斗だから慣れない人の前で甘える姿を見せるのは照れることなんだろうなと考えつつ、


「僕は大丈夫だよって言っておいて? 症状も落ち着いてきてるしね、晴火先生」


 そう聞けば、晴火先生は頷いた後、


「ああ、零の場合メンタル面の問題だから、地道にリハビリってところだが、今のところ良い兆しが見えてるよ。

それから、お前のせいではないから気にするなよ、零の弟。これは元々魂に残っていたメンタル問題だからな。たまにいるんだよ、トラウマの内容は覚えていないのにとあるキーワード、とある光景を見た瞬間にショックをうけて過呼吸になったり、体調が悪くなるは稀だがいるんだ。

多分、零はそれだ。しかも、かなり重めのやつだが、今は安定してきているし、俺がしっかり見守る。だから、安心しろ」


 咲斗がショックをうけないように、情報を追加して話してくれた。その話を聞いて心配そうな顔はしていたが、不安げな表情が消えたので安心した。その後、咲斗は何かに気がついたように我に返ったような顔をして、


「ついでに武器の整備もしていくから、零兄様の武器と装備品はどこですか?」


 武器と装備品の状態が気になり始めたのか、そうそわそわし始めた咲斗に、


「全部、机の上の箱に入ってるよ。すごい量だが、大丈夫か?」


 そう心配している晴火先生に、咲斗はどや顔をしてこう言う。


「零兄様の命を守る装備品、武器を作っているのは全て僕と朱基さんですから、整備なんてすぐに終わります。それに、零兄様の使っている武器は僕ら三つ子も全て使いこなせますから、整備なんて日常茶飯事で、慣れっこですから心配はご無用です」


 そう言い切った後、そそくさとベッドから離れ、僕のあげたアイテムボックスから整備道具を取り出し、ひとつひとつ不備がないか確認する作業をし始めたのを見守っていれば、晴火先生は全然生意気とも思っていない表情で、


「可愛いなぁ、あの子も何かと戦っているから連れない態度なんだろうな。ああいう子は応援したくなるぞ」


 そんな発言に苦笑いを向ければ、晴火先生は「?」と頭の浮かべるばかりだから、苦笑いをし直した後、話をそらすことにした。


「和葉さん、咲斗を連れて来てくれてありがとう」


 そうお礼を言えば、


「いえ、貴方に何かあれば気が狂ってしまう奴が側にいるので、こうして咲斗さんに頼って頂けるのはありがたいことです。それに、俺も貴方のことが心配でしたから、重傷でなくて良かったです」


 安堵したような顔をして、こう言ってくれた。……有難い話だな、こうして心配してもらえるのは、と考えていれば和葉さんは驚いた表情をして思わずと言ったようにこう言う。


「……変わりましたね」


 呆気にとられたような声で言った瞬間、すかさず晴火先生が、


「気づいたんだよ、自分の意志に。やっと、何かをきっかけに気づけたんだよ、やっと自分が周りにどう思われているのが嫌なのか、ストレスなのか気づけたんだよ。……今までは他人に流されることが強かった零が自分の意志を持ったんだよ。良い兆しだろ?」


 そう手放しに褒めてくれれば、和葉さんはこう言った。

 

「……そうですね。きっと、今の貴方を見ても雪兎は懲りずに崇拝していることでしょうね。しかし、明らかな姫扱いは終わることでしょうね。奴は零様の嫌だと感じることはすぐさまやめる奴ですから、今の零様はそのままの零様でいてください。理想の零様でいる必要はありません、あなたがやりたいことをやるのが貴方が必要な治療なんです」


 彼の発言にそう言えばと思った。彼とはお互いに距離を置きあっていると考えていたけど、僕が距離を置いたほうがいいんじゃないかと勝手に考えていたから、商人である彼は察して距離を置いていていただけなんだろうなと。


「……和葉さん、ありがとう。今まで見守っていていてくれたこと、気づかなくてごめんね」


 そう言えば、首をふるふると何回か振って、


「零様、何か傷ついていたのでしょう? それは何生まれついたこと、それはしょうがないことです。零様、それは貴方のせいじゃない。その傷をつけたその相手が貴方に謝るべきことです。貴方は今を胸張って、心から胸張って幸せだと叫べれるようになることです。ですから、この日を待っておりました。零様が無事に気づけたこと、嬉しく思います」


 心からの笑顔を向けて、和葉さんはそう言ってくれたそのことに僕はまた、涙が溢れそうになるのを必死にこらえていたのだった。


空野雪乃です。

ここからの展開がどうしても思いつかず、話が書けないので、長くて来年の1月まで投稿を不定期とさせて頂きたいと思います。申し訳ありません。

調子が戻り次第、今まで通りの投稿方法に戻しますので、よろしくお願いいたします。

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