その7!
「僕の性格上、1つのものが気になり始めると周りが見えなくなると言うか、気になり始めると誰かに相談するのも忘れて引き寄せられるように行く癖もありますから、他の依頼主よりはぐれてしまう回数が増えるでしょう。僕の性格のせいで護衛をしてくれる守衛さん達の生活を圧迫させるのは心苦しいのです。
まあ、はぐれても減俸にはならないと守衛さんの護衛態度が変わるのも困りますからね。叔父様が提案してくれた内容を遊騎さんにお伝えください」
守衛さん達には守衛さん達の家庭があるし、生活もある。だからこそ、興味を惹かれた物に対して集中し過ぎてしまうのは直せないから、せめて口添えだけでもしておこうと思った。
もし僕が転生クエストのために、守衛さん達を置いていっても処罰をなくすことはできないかもしれないが、職をなくすことは避けておきたい。
だから、この申し出は何としても了解を得なければならなかった。
「了解した。疲れただろうが、今日のうちに冒険者登録と生産者登録を済まそう。明日、せっかくの休息日をなくしたくはないだろう?」
(う、うーん。明日でも良いかなって思っている自分がいるけど……、叔父様の指示に従うって決めたからなぁ)
「わかりました。ハッサク、サクア、お前達は疲れてないかな? 疲れてるなら明日でも良いよ?」
(僕は良いけど、ハッサクとサクアはまだ産まれたばかりみたいだし、無理させたら可哀想だからね)
「んきゅぅ!(だいじょーぶだよぉ、あるじぃ!)」
そうハッサクが答えたと同時に、サクアが触手で丸を作った。逃げ道がなくなったぞ、これはもう今日中に行かなきゃいけなくなってしまった……。
※※※※
行ってしまえば楽しいもんで。
来てみると、想像していたような酒場のような建物ではなく、小綺麗な役所と言ったような建物だった。
その奥の建物は叔父様曰く、生産所らしく、これまた真っ白なレンガ調な素敵な建物でびっくりだ。
「すごいですね……!!」
そう言えば、叔父様は微笑ましそうに笑って、
「目が輝いてる」
僕の目元を、優しく撫でた。まさか、表情に出ていたなんて思っても見なかったから、恥ずかしくて一瞬で顔が熱くなったのがわかった。
そんな僕を笑いもせず、ただただ優しげに微笑んで、息子を超えて孫を見るかのような目だった。
その目を向けられることにどこか気恥ずかしくて、思わず目をそらし、外装に見惚れるのをやめ、さっさと冒険者ギルドの中に入ることにした。
入れば、なぜここに子供がいるんだと言うばかりの眼光。叔父様がいることで、手を出されずに済んでいるが、もしいなかったらと考えると、考えただけで身震いが止まらなくなる。
(冒険者になるための登竜門なんだろうなぁ)
なんて、睨まれてるくらいじゃ、のん気でいられるくらいには肝は座っているつもりだ。別に悪いことをしている訳じゃない、子供が冒険者なんて……と言う概念に囚われている大人がいるから、子供は冒険者になれずにいるんだ。
例え、腕っ節が強くても、同じくらいの強さを持って尚且つ実戦経験のある人には、実戦経験の人の方が負ける確率は高い。
腕っ節が強くても、実戦経験があって器用に戦う人には、腕っ節が強くても実戦経験しなければ負けることだってある。
自分が冒険者になりたいと思うならば、子供でも冒険者になることをチャレンジにしても構わないと思う。
それに、別に冒険者ギルドに登録できるのは、国民の権利だ。子供だからといって、冒険者になってはいけないなんて規則はない。
(だから、堂々としていれば良い)
そう考えながら、胸を張って堂々とギルドの受付まで行く。
僕が落ち着いているからか、ハッサクとサクアも僕の腕の中でご機嫌良く、叔父様の服の裾を掴んだり、離したりして遊んでいた。
叔父様も、叔父様でハッサクとサクアに遊ばれていても気にもせず、一言も言わず、僕の隣を歩く。
そして受付のおじさんの目の前までたどり着いた時、彼はにっこりと歯を見せて笑った。
「天晴じゃな。何人か冒険者希望の子供もおったが、この威圧に圧倒されて泣き出すか、良くて怯えながら受付を済ますかのどちらかじゃ」
僕は中身は前世と現世を合わせれば、成人しているようなものだから、多少の威圧の意図を読み取ることはできる。だからこそ、こうして威圧に耐えられているとも言える。
「まあ、数年前ほどかのぅ、ギルドのドアをぶち壊して威圧を与える暇も与えなかった猪のような子供がおったけどな。後日きちんとドア修理代を払っていく妙なところで礼儀正しい子供だったから、あれは規格外として扱われておる」
なんか、褒められた。けど、それ以上に……! 見た目は40代後半なのにその話し方は妙に似合ってなくて、でもどこか口調に違和感がないと感じている僕もいる。
それよりもだよ! おじさんが言う、その猪は確実に季水くんだね! そんなことやるのはうちの馬鹿兄貴くらい。
(あの馬鹿季水! 怒りのあまり、呼び捨てしちゃったじゃないか。家ならまだしも、他の建物まで壊して! 修理代払えば終わりだなんて許さないからな!)
「ごめんなさい。その猪、僕の馬鹿兄貴なんですよ。屋敷なら直させるからまだしも! ギルドのドアまで壊すだなんて!……今度、馬鹿兄貴が何か破壊したらこき使って良いですからね!」
(修理代だけ払うだなんて甘い! 甘すぎる!季水くんは懲りないと直せないんだから、こき使われちゃえば良いんだよ!!)
なんて、考えていると、僕の怒りを宥めるかのように叔父様は頭を撫で始める。
そんな様子を見て、何が面白かったのか、受付のおじさんが大声を出して笑い始めた。何故笑われているのかわからなくて首を傾げながら、笑い終わるまで待った。
「随分と肝が据わった坊主だ。天狗になるようなプライドもなさそうだし、 勘も鈍くない。しかも、あの季水のことを猪など言えるのは、このギルドでは儂と雷紀と夜兎くらいだ」
(まさかぁ、あの兄が?)
「くっくっ、お前からすれば困った兄かもしれないが、自分よりも長く生きる冒険者も倒せるような子よ。周りからはいい意味で恐れられておる。まあ、見た目女子だから、猪突猛進な猪な季水だけれどファーストレディーな部分があるから、タジタジになってるのが目に浮かぶわ!」
(無駄に強いからなぁ、季水くん。……でも、意外だったなぁ、季水くんがファーストレディだなんて思ってもいなかったから、だから僕に怒られてオロオロしていたのか)
きっと、お父様が言ったところでドア破壊をやめるような人じゃないし、実際に使用人の情報からお父様に注意はされていても直らなかったらしい。
それなのに僕が怒りに怒った後、何日も一緒にいた訳ではないけれど、ドア破壊をするのをやめてたのが謎だったんだんだよねぇ。
「あ、ドア破壊した時に怒りに怒って、ドア修理させたんですけど、それからドア破壊しなくなったんですよね〜。今まで謎だったんですけど、納得しました!」
そう言えば、せっかく治っていた笑いをまた引き出してしまったようで、受付のおじさんはまた大笑いをした後、
「これはもう、季水はタジタジじゃのう! 何せ、あの年であそこまで強者はいないし、今のギルドにいる冒険者の中でもトップクラスの冒険者だからのぅ、基本的リーダー役をやることが多かった。だから、はっきりと意見をぶつけられ、さらに叱られるなんて経験ないじゃろう」
そんなに強いんだぁ、あんなに精神年齢が低いのに……と内心そう考えていると、心を呼んだかのようにまた、くっくっ笑ってこう言った。
「見た目女子に叱られれば余計にあやつはタジタジじゃろうな。ましてや、零は責任感のあるあやつからしたら保護対象、そのような子に強く叱られたらどうしたら良いかわからなくなるのじゃろう。あやつは、自分から攻撃を仕掛けるような狂気じみた戦闘狂ではないからな」
若干、まだ笑っていた名残を残しながら、そう教えてくれた。正直、実力者だとは思っていたが、そこまでとは知らなかった。
(まあ? それでも、季水くんの猪突猛進すぎるところは、実力を完全に発揮させられてない原因を作っていると思うけど)
今は季水くんのことではなく、僕のギルド申請についての方が重要だ。
「で、僕はギルド申請することができるんですかね? まあ、国民の権利として、子供は親の許可または親戚の同伴、保護者代役の同伴があればギルド申請をする場合のみ、子供のギルド申請は可能です。
なので、規則を守っていればギルド申請拒否は余程のことがない限りは断ることは不可能ですので、答えは1つしかはいですけどね。
まあ、僕は本の虫で、少しだけ記憶力の良い4歳児だから知っていましたが、ギルド申請拒否をしたところは一度は許したふりをするから、今すぐ冒険者になろうとする子供を止めて欲しいと頼まれた場合は申請拒否が可能なんですよね?」
本当に子供はすごいと思う。子供が求める知識量は膨大だ、しかも興味のあることなら尚更スポンジで吸収されていく水のように吸収していく。
それは精神面では高校生でも同じだ。それはなぜか? それは僕が持つ記憶は異世界の記憶であり、ここの世界のついての知識は知らない。それはつまり、精神的には高校生でも、知識に関しては赤ちゃんと変わらないと言えた。
だから、知ろうと興味を持ち、大量の本を読んだ結果がこれだ。
幸い、僕が前世の記憶を思い出す前に、思い出してないとは言え、本の虫だった僕はすでに文字も書けたし、今の僕と同じくらいの難しさの本を読んでいた。
そのおかげで興味のあることを、すぐに調べることができて万々歳だけど。
なんだけど今、古代文字にも興味があって勉強してみようかなって考えている。一時期、思い出す前の僕が興味を持って勉強してたはず、この知識を得ればさらに情報を得られるはずだ。
話がずれてしまったな。今は、ギルド申請できるかできないかの話に集中せねば。
「結果から言おう、ギルド申請することを許可する」
受付のおじさんがそう言った瞬間、冒険者達がざわめいた。その様子を首を傾げながら、不思議がっていれば今まで黙っていた叔父様が、
「ここの冒険者ギルドにはS級、またはA級の高ランクの冒険者が多い。国の法律的には零の言った通り、国民の権利であるため、基本的には子供は本人の意志と、その保護者の同意があれば所属することは可能であることには間違えない。
ただ、ここの所属の冒険者になるためにはまず、冒険者の指導役である俺と面談し、候補者として認められなければ、受付すら来ることは出来ない」
(ふーん、あれって面談だったんだぁ。ただの説明会だと思ってた)
「お前のことだから、その顔を見る限り、ただの説明会だと思っていたんだろう? ……鋭いんだか、鈍いんだかよくわからないやつだな。まあ、お前の場合、肝が座っているだけだとは思うがな」
なんでそんなに、内心を読み取られるんだろうか。理解不能なんだけども、と不服な気持ちが芽生えつつも僕は何も言わないことにした。
「なぜ受付の朱基さんがギルド申請するか否かを判断する必要があるかは、ギルドのシステムを説明する必要が出てくる。
基本的にギルドの規則として、零。お前が言っていることは正しい。これから先する説明はギルド申請が通ってからされる規則だ。
ギルドの規則として、一番初めに登録したギルドがその者の所属とする。また、S級またはA級の冒険者が多いギルドに関しては、ギルドメンバー指導役の面談試験の通過、およびギルド申請責任者の申請許可が必要である。
S級またはA級が多いギルドには、高ランクの依頼も集まりやすいため、実力者として認められた者は各ギルドマスターの推薦により、所属移転が可能となる。そう言う規則があるんだよ、だからここのギルドに所属するためにはギルド申請責任者に認められるか、ギルドマスターからの推薦のみって規則があるのさ」
(僕は別に所属がどこであれ構わないのだけれど、今の僕はそこらへんの子供よりも弱いのに、ギルド申請許可出しちゃっていいのかな)
弱い僕が申請通るんだもの、申請許可の基準がわからないな、と考えていると、
「何、実力は強さだけではないからのぅ。情報をたくさん持っているもまた、強さと判断してのこと。れいちゃん、堂々としていればよいのだ」
また内心を読まれてしまった。しかも、何気にれいちゃんと呼ばれ始めているし、まあそれは良いとして、何故か受付の朱基さんにそう言われると、なんか自信が持てるような気がするのは何故だろう。
「それでよい」
そう言った朱基さんの顔は、とても優しかった。




