第二話『純粋』
ガヤガヤとリア充が騒いでいる通学路。俺は誰にも気付かれないように身体を前のめりにして歩く。我ながら姿勢が悪いと思う。だが悪いな、ここで誰かと出会ってしまったらまたアイツらに気付か――
「あれっ? あれあれっ? これはこれは北岡くんじゃないですかー?」
北岡徹、終了のお知らせ。声がした瞬間ふとそんな事を思ってしまった。
「おーい? 無視しないでよぉー」
艶のある元気で明るめのトーンの声が俺の耳に届く。もしかして……俺の事を呼んでる? 別の北岡とかじゃないだろうな。だがその声に対応しようとする人物はいなかった。じゃあ俺か。やったぜ。
その声から察するに敵意は感じられない。振り向いても大丈夫なのだろう。隆一の友達ではないだろうな……。
「おっ。やほやほー」
声がした場所を振り向くと、そこまで遠い距離じゃ無いのに大きく手を振っている元気な女子が見えた。その大袈裟な仕草からも想像できるように無垢純粋な表情で俺を呼んでいた。ふわりとした髪を肩にギリギリ掛からない程度に提げ、一部を後ろで小さく束ねているようだった。ちゃんと見えないけれど。夏服に身を包んだその子のスカートがふわりと揺れる。だがそんな恥ずかしいことには動じず、少し天然な姿にはその活発な可愛らしさをより際立てていると言っても良いだろう。
――純粋に、可愛いなと思ってしまった。
周りからは男子生徒の嫉妬の目線である意味注目されてしまった。目立ちたくなかったのに……。隆一の仲間が居たらまた虐められるよぉ。そう思い怯えている自分が本当に情けない。
まあ、隆一がいないだけでマシか。アイツはきっと今、停学処分で学校に来ていないだろうし。唯一の救いと言っても良いだろう。
俺はついつい安堵のため息を吐いてしまう。こんなに臆病者だっけ僕……?
「……ん? どしたのー?」
その子はキョトンとした顔で俺を覗き込む。
うわぁ! 急に近づくなって……。心臓が破裂しちゃうよ。
「お、おう……」
俺はどうにか声を振り絞って返事をする。困惑したときに出る「お、おう……」は辞めて欲しい。相手側はもっと困惑するだろうに。ごめんなさい。
「あはっ! どうしたの元気なくして? しばらく学校に来なかったから心配したんだぞこのこの~」
その女の子はわざとらしく肘で俺を突いてくる。結構大胆だなぁ。
痛い痛いもっとやれ。
内心ニヤニヤしている俺の気持ちにも、勿論気付くことはなく、肘で俺を突き続けている。幸せで上の空になりそうになるのを抑えて、俺はその女子に話しかけた。
「えーと。お、俺達って初対面だよな?」




