第十九話『あの日見た私の姿を徹はまだ知らない』
「……徹くん?」
またもや徹くんだ。本物だろうか少し不安になる。でも、徹くんは私の気持ちを悟ったかのようにこう言った。
「大丈夫だ。俺は正真正銘の北岡徹。……それで、何で俺を知っているんだ?」
やはり記憶がないのだろう。なら何故、徹くんは私に声を掛けたのだろう。なんで見知らぬ私に声を掛けたのだろうか――
「何で知らない私を――」
「……なんか前から知っているような――そんな気がするんだ」
徹くんの真剣な眼差しが私に向けられる。
こんな奇跡――あり得るのだろうか。私はこんなにも幸せで良いのだろうか。
私は、感動や、衝撃、喜びなどの感情ががグチャグチャと頭の中で入り交じってしまい、言葉に行き詰まり何も言えなかった。
すると――徹くんは私の頭に手を添え言葉を紡ぐ。
「……守ってみせるよ。お前の世界を――」
「……わ、私は――」
「おい、無視するなおッ!!」
何か言葉を返そうと口を開けた途端、キモ男による大きな罵声が飛んできた。
そこには、自己崩壊にさせられ、憤怒の渦に呑まれた悪魔の姿があった。
「う……がぁ」
視界に揺らいだ悪魔は一瞬の内で世界の圧力を操作している様だった。思わず圧巻の力に足が崩れ落ちそうになる。
背骨から中心に広がる壮絶な痛みが私達を地面の底へ押しつぶそうとしている。
コンクリートか何かで頭蓋骨までもが粉々に砕けてしまいそうな程の痛みで気が狂いそうだ。
反則級で理不尽で、世の理の支配など造作もない彼は絶対的な【権限】を手に入れていた。
――それでも、私はひれ伏すことはない。
どんなに非力でも、無防備で初めから「あなたが負けだ」と宣言されているような試合でも――
常識は――覆すことが出来る。
「――うっ、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおァおあああああああああ!!」
刹那、北岡徹という最高にバカで主人公している少年が、天を見上げ吼える様に立ち上がった。
きっと――彼は、どんな理不尽な状況であっても、決して負けない強い意志がある!
「――これを飲んで」
「この世界を――救って下さい」
徹くんはキョトンとした顔で私と怪味天命水を交互に見た。そして苦笑を交えながら徹くんはいつもの、優しくそして力強い声でこう言った。
「――やってやるよ……。丁度、ストレスを解放したかったしなッ!!」




