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銀の蜃気楼  作者: トト美咲
12/15

永遠の母〈3〉

ハロルドさん……。参上です!


 ーー待て、 ロト、タクトッ!


 空間の裂け目に造型する“銀色の階段”を踏みしめる寸前、ロトとタクトはその叫びに振り向いていく。


「貴方達は?」とグロディアは二人を背後にして訊く。


「あんたこそ何者だ! 俺達はそいつらを迎えに来た。さっさと引き渡せっ!」

「此れより先の《未来》はこの二人に委ねられます。手を出せば、二度と自身の世界に戻る事は出来ませんよ?」

「脅しのつもりだろうが、道はひとつだけとは限らないっ! 例え回り道しても、手にしたいモノは諦めないと誓う。その《志》を俺は其処にいるタクトにみっちりと叩き込んだっ!」

「名はどう、呼べば宜しいですか?」

「誰にだ? あんたこそ名乗れっ!」

「無駄な対峙は避けたいところですが、そのご様子では仕方ないですね?」

「つべこべは、いいっ! やるならかかって来いっ」


 ーー双方、其処までだっ!其れに、グロディア様。我が子を谷底に落とす獅子のような振る舞い、思い踏み止まる事を申し上げます。


 漆黒の髪、そして同じ色の衣を身に纏う青年が空間より現れて、空かさずグロディアの剣を握り締める手首を掴む。


「ハロルド……。さん?」

「ロト様、今目の前にいる方は間違いなく貴方の母君。ですが、その心は違う方向を見ておられる」

「母上は、けしてそのような方ではないっ!」

「貴方は《母親》に憧れている。心を通わすには余りにも時が短い。その一瞬の情の為に危うく《敵》の巣に連れて行かれそうになったところを其処の少年が救ってくれた。同じく此処にいる彼等も、貴方をこうして追い掛けて来た」

「俺は……」

「では、確めてください。この者達の傍にいる方の想いをっ!」

 羽織るマントを腕で掻き分けるハロルドは、更にその方向に指を差して示す。


 ロトは一度眼差しを合わせるものの、言葉を交わすこともなくタクトの腕を掴むと、そのまま銀の階段を駆け昇っていく。


「判りましたか? 此れが、ロトの意志です」

 ハロルドの掌を振り払うグロディアは、腰に装着する武器の鞘より剣を抜き、刃先をその首筋に押し当てる。


「言っちゃ悪いけど、此方の『お袋さん』もあんたと比べものにならない程、ロトに情を注ぎ込んでいた!」

「バースさん、それはさておきです。産みの母と育ての母、どちらを選ぶのはロトです」

「贅沢な選択だっ! だが、結果的にはあんたを裏切った。其処は激しく頭に来てもいいぞ」


「あの少年も貴方達の為に、袂を分けると決心したのです」

「タクトが? おいっ! 其れを先に言えっ」

 バースの叫びと同時に、ハロルドがグロディアの鳩尾に目掛けて肘を押し込んでいく。


「今ならまだ間に合う。早く二人を追うのだっ!」

 失神するグロディアの身体を両腕で受け止めてるハロルドは、バースにそう促す。


「貴方もご同行しなさい。此処は、私が役目を担います」

「……。宜しいのですか? 結果次第では、ロトと貴女はーー」

「姿を見れた……。其れだけで十分です」


「バースだったな? 急ぐぞ!」


 こうして、ハロルドとバースは銀色の階段を駆け昇る。同じくアルマも後を追っていく。そして、最後の一段を踏み締めて踵を上げると同時にさらさらと、砂が舞うように溶けて消えていった。



 ★○★○★○★○★○★○



 辺り一面灰色の霧が視野を遮る。その中をロトとタクトはぽうっ、と瞬く朱色の光を目指し、亀の歩みを行っていた。


「ロトくん、具合が悪いの?」


 タクトのその言葉にロトは我に返る。そして、間を置くとこう口を開いていった。

「タクト。こんな時に訊くのは悪いが、おまえにとっての母親はどんな存在だ?」

「え? 咄嗟に訊かれても……」

「悪かった! 次に訊かれた時に、その答えを考えとくのだ」

「待ってよ! ロトくん、さっきバースさん達の傍にいた女の人を見たとたん、かなり思い詰めた顔をしていた」

「余裕綽々だな?」

「真面目に訊いてるのだよ? 其れに……」

「ああ、話を戻そう。あの人は、俺の……。もう一人の母だ」

「そんな! どうして、あの時黙ってたの?」

「俺が『母さんっ!会いたかったよ』と、万歳しながら駆けて行く質に見えるか?」


 興奮気味のロトにタクトは「ぷっ!」と、吹き出し笑いをする。

「何が可笑しい?」と、ロトは頬を朱色に染めて顎を突き出す。


「《あの時》の僕と同じかな? でも、ロトくんの場合は事情が違う。余計に感情を抑え込む情況になったのだね?」

「ああ……」

「それでも、キミは《運命》を選んだ」

「全てを護る為にだ。タクト」

 そう言って、ロトは視線を前方に向ける。するとーー。


 霧が瞬時に黒煙の如く闇に変わると、がしゃり、がしゃりと鋼がぶつかり合う音が響く。


「タクト、敵は《闇》を武器にしている。中途半端な“光の力”では太刀打ち出来ない」

「大全開させるよ。皆の未来を思えば恐れなんてないっ!」


 ーー銀と蒼。我らが目指す《世界》に必要な“力”が漸く手に入る。おまえ達は永遠にその動力として使われる……。


「随分と回り道した入手方法だ。何故、直接俺達を捕まえなかった?」


 ーー刷り込ませる材料を蓄えさせる……。先ずは《時》と《世界》を繋げる。其処で幾度もその“資源”を吸収させていった。おまえ達はまさにその〈器〉として、役目を担ったのだ。


「僕とロトくんだけ?」


 ーー配送役に此方から二名選ばせて貰った。折角の〈器〉が壊れたら大損害だからな。


「まんまと貴様らの蟻地獄の巣に、あの二人も巻き添えにしていたっ!」


 ーー動く〈器〉の躾をよくやってくれた。我らがその栄誉を讃える。


「まるで〈物〉扱いだっ! 僕達は、いや【国】で働かされた人達もそれとまったく同じだよ。ロトくん」

「壊滅させても次々とこうして、利益追求の為に繋がった世界で生きたあいつらも利用されていた。そうだろう? タクト」

「此処で全部空っぽにさせようっ! どう使うかは、僕達の勝手だよ」

「かなり、反動がくるぞ?」

「構わないっ!」

 タクトは全身を蒼く輝かせる。しかし、その“光”は立ち込める黒煙に吸い込まれるように消えていった。


「まずいっ! タクト、おまえは手を出すな」

 ロトは叫びながら“防御壁”をタクトに被せる。


「どうして? たった今、空っぽにさせようと誓ったのだよ」

「《闇》が想像以上に強大なのだ! 此処は俺が食い止める。タクトは《時》と《世界》を繋ぐ動力炉を壊滅させろ」

「待ってよ! 例え僕だけ此処を突破しても、こいつみたいな悪党がうじゃうじゃ居る筈だよ。其れに、僕はーー」


 ーー友達を護る……。あの人も、きっとそうしろと言うに決まってるっ!!


「タクト? おまえ、何で泣いている」

「悪いの? 僕は、キミが大切なんだよっ! 一緒にいて凄く楽しい。バースさんと違う何かを持っている。そう、思ったんだ」


 ーーロト、俺も礼を言う。おまえがタクトの《宝》になってくれた事になっ!


 空間に“橙の光”が眩く照され《闇》が掻き消される上空に浮かぶ光の球体より人影がゆらりと映ると、それは形となって舞い降りてくる。


「間に合った。この、馬鹿息子達めっ!」

 タクトの額にごつりと拳を押し当てる……。アルマが涙ぐみながらそう言った。

「もうっ! アルマさんまで連れてくるなんて、バースさんも酷いですよ」

「黙っても引っ付いて来るに決まってる。其だけタクト、おまえに世話を焼いてるのだっ!」

「じゃれるのは後でゆっくりとしろっ!」

ロトが声を詰まらせながら、押し問答の最中のバースとタクトに向けて言う。


 ーーロト様、私も貴方に忠誠心を誓った。今度こそ、その役目を果たさせて貰います。


「俺より護る人がいるのでは?」

「此れが終われば必ず迎えに行きます」

「……。判りました、ハロルドさん」


 集うロト一行、輪になり其々の掌を重ねていくと、前方に佇む黒衣の仮面の〈象〉を一斉に凝視する。


「地味な格好だよ。そう思わないか? タクト」

「バースさんの口の悪さが原因で、凄いことになったの忘れたのですか?」

「あいつら、今頃スキップしてる筈だ。な、アルマ」

「束の間とはいえ、友好も深めた。其れも思い出だ。バース」

「誰の事だ? タクト」

「皆、キミの記憶の中にいるよ。ロトくん」

「援護はこのハロルドが務める。心置きなく、いや、存分に対峙致せっ!」


 ーー了解っ!


 其其より“光”を解き放し《闇》の〈象〉に駿足するーー。

ぶぁっさぁああっ!⇒マントを翻す効果音。

やったよ~♪

……。

グロディアさんを気絶させてごめんなさい!

待て、次話!!


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