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銀の蜃気楼  作者: トト美咲
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永遠の母〈4〉

用意、スタートッ!

 空間はロト達が解き放つ“光の力”で閃光を轟かせながら銀河を彷彿させる色に染まる。

 《闇》も激突していくと其処に時計回りの渦が現れる。


「撃ち方止めっ!」

 バースがそう指示をすると、一同はその手を一斉に停めて更に1ヶ所に集合する。


「あの〈人形〉が妙なモノを呼びつけやがった。絶対に近付くな!」

「此のまま足止めするつもりか?」

「うろたえるな、ロト。俺が今からその手本を見せてやる」

 バースはニヤリと、歯を見せて笑みを湛えると、その方向に目掛けて“橙の光”を砲弾させる。すると、それは旋回しながら渦の中心に光の粒を撒き散らしながら吸い込まれていった。


「見事だ。バース殿」

 ハロルドの讃える言葉にバースはきっ、と感情を剥き出す形相を示す。


「不愉快なのか?」

「そんなもんじゃねぇよ」

「僕達の攻撃が効かない。さっきロトくんも判断していたのです。ハロルドさん」

「……。ロト様。もし、貴方ならこの危機をどう、回避致しますか?」

「《闇》に対抗出来る手段を考えます……。例えば、其れの根源となった経緯を辿る等をーー」

「時間を遡るとでも言うのか? それはある一族が備えてる“力”でないと不可能だ。そもそも半ばお伽噺として我々の世界では伝えられている!」

「アルマ、余計な事を喋るな!」

「其れが、バース殿。と、言うのでしょうか? アルマさん」


 ハロルドはマントを翻し、コツコツと靴を鳴らしながらバースの傍に歩み寄る。すると、その腕を掴み身体を正面に向けていった。


「おいっ! 言っとくが野郎には全くもってその気はないぞ」

「とんだ、しかもふしだらな勘違いをするのではない」

「何をする気なんだよっ!」

「心を静かにされろ。直ぐに終わる……」


 ハロルドはバースの腕を握り締めたまま、目蓋を綴じて思考を張り巡らすような形相を剥き出していく。そして「ふうっ」と、深呼吸をすると、口を開き始めた。


「バース殿の“力”は特殊だ。過去に《闇》に向けて“力”を開放させた。運悪くそれは回収されてしまい、今まさに目の前で〈道具〉として使われている」

「この野郎、俺の思念を読みやがったな?」

 バースはハロルドの掌を振り解くと、ある方向を目指して駿足する。


「バースさんっ! 何をされるのですか」

 タクトは驚愕してバースの後を追うように“加速の力”を発動させるものの、それは《闇》の渦に吸い込まれてしまう。


「タクト、無駄に“力”を使うなっ!」と、アルマは苛立ちを剥き出すタクトを全身で受け止める。

「離して下さいっ! バースさんをほっとくなんて、あんまりです」

「奴は心配要らないっ! と、言うより私達ではどうする事も出来ない」

「どうしてですかっ? バースさんが、バースさんがーー」


 ーーいいんだよ、何れこうなる事は知っていた。さて、みっちりと説教をぶっかましてやるぞ。



 本物の俺に、な……。



 どすり、と、バースと《闇》が衝突すると空間が夕焼けのように染まる。そして、衝撃波が発生してその風圧がロト達に向けて襲い掛かる。


「タクトッ!」

「ロト様っ!」

 アルマとハロルドは咄嗟に其々に覆い被さり、吹き荒れる風から身体を阻止させる。


 それは竜巻のように空中を旋回する。すると《闇》の渦も吹き飛び、つむじ風を残して消滅していく。


 ハロルドはロトを支えながらマントを翻し、残る渦の欠片を払い落として踵で踏みつける。すると煙が立ち上ぼり、灰色と彩った空間に溶けるように消えた。


 地面を滑るようにきらりと光る固体が、アルマに押さえ付けられているタクトの顔の正面で止まる。そして、タクトが空かさず握り締めると「アルマさん、もう、いいですよ」と言ってゆっくりと立ち上がっていった。


「バースさん、此れって《闇》が持っていたのですね?」

「悪い、おまえが弟に御守りだと言って持たせたのだったな?」

「僕もたった今思い出しました。もう一人、弟がいた。でも、いなくなっちゃった」

「偶々、ピクニックに行ったその場所でだろう? まさか【団体】の実験場近くだったとはな!」

「もう、それ以上言わなくて結構です」

「思い出しちまったから仕方ないだろう?〈あれ〉は俺の本来の《時間》の〈象〉だ。身体だけ過去に飛ばされた」

「……。もし、今の時間だったらバースさん何歳でしょうか?」

「12だよ……。タクト」

「名前は?」

 タクトは声を震わせてそう訊ねると、バースは《闇》の仮面を掌で払い除ける。その顔に、一同はあっ、と驚愕するのであった。


「おいっ! 久し振りに〈兄貴〉と対面してろくに挨拶も出来ないのか?」

「……。おまえ、嫌いだ」

「可愛くねぇなっ! ふて腐れるなら、このまま消してやっても良いのだぞ?」


 喧々諤々と双方のやり取りを呆然として見つめていたアルマが、我に返るように口を開き始める。

「妙な組み合わせだ。其処の少年は丸っきり……。いや、こんな現実があって堪るかとしか言いようがないっ!」

「バースが縮んだような姿だ……」

「ロトくん、この子は【団体】の実験の事故の後遺症でこんな目に合った。そして、其れに関係する事に捲き込まれてしまった」


「停戦だ。貴様達、いい加減に争いを止めないと、このハロルドが成敗致すっ!」

 ハロルドはこめかみに青筋を浮かべながら激昂するものの、双方は同時に「あっかんべーっ!」と舌をぺろりと出す。


 ーー廊下に立ってろっ!!!!


 ハロルドが怒りを膨らませて、少年とバースの頭部に拳を激しく押し込めていった。

ハロルドさん……。学校の先生?

と、言うことで、次話に続きます。

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