眠る森の音楽隊
秘密のランタン工房をあとにしてさらに進むと、あたりはひっそりと静まり返った大きな広場に出ました。
そこには、夜の静けさの中で眠っている動物たちや、大きな木の精霊たちが集まっていました。
いつもなら賑やかなはずの広場が静かなのは、みんな深い眠りについているからです。
「しずかに歩かないと、みんなを起こしちゃうね」
プーが小声でそうつぶやくと、頭の上のカボチャの精霊も小さくうなずきました。
新しくなったランタンの温かい光が、眠っている動物たちの顔を優しく照らし出します。
リスやウサギたちが丸くなってスヤスヤと眠る姿は、見ているだけでプーの心をほっこりとさせてくれました。
しかし、広場の真ん中まで来たとき、ふとどこからか小さなすすり泣く声が聞こえてきました。
声の方へそっと近づいてみると、小さなハリネズミの子供が、切り株の陰で一人だけ目を覚まして困った顔をしています。
「どうしたの?」
とプーが優しく声をかけると、ハリネズミは涙を拭いながら言いました。
「みんなと一緒に歌を歌う約束だったのに、暗くて怖くて眠れなくなっちゃったんだ」
それを聞いたプーは、そっと自分のランタンをハリネズミの近くに置きました。
ランタンのオレンジ色の優しい光と、香ばしい甘い香りがふわっと広がると、ハリネズミの震えていた小さな体がすーっと落ち着いていきました。
さらに、頭の上のカボチャの精霊が、小さく美しい子守歌を口ずさみ始めました。
その歌声はガラスの森の音色のように澄んでいて、夜風に乗って広場全体に心地よく響き渡ります。
「わあ、なんだか温かい気持ちになってきたよ」
ハリネズミの子供は安心したように目をパチパチさせ、やがてコテンと頭を傾けて深い眠りに落ちていきました。
その寝顔を見届けたプーは、そっとランタンを持ち上げました。
誰かを優しくできた喜びが、プーの小さな翼をふわりと軽くしてくれます。
眠る森の音楽隊が奏でる静かな夜のなか、プーは仲間たちの待つゴールへ向けて、ふたたび静かに歩き出すのでした。




