月の光の小さなオバケ
秋の夜風がカボチャの森をそっと通り抜けるころ、空にはどこよりも丸く、優しい光を放つお月さまが浮かんでいました。
木々の枝からは小さなジャック・オー・ランタンの飾りがいくつもぶら下がり、まるで夜空の星たちが地上へ降りてきたかのように、あたり一面を黄金色の柔らかな光で包み込んでいます。
そんな静かで美しい森の小道を、真っ白なシーツのような体をした小さなオバケのプーが、ぽつりぽつりと歩いていました。
プーにはまだ生えたばかりの小さな翼がありましたが、どこか心もとなく、ペタンとした小さな手には自分とおそろいの顔をしたランタンがしっかりと握られています。
「あれ、みんなはどこへ行ってしまったんだろう」
プーは足を止め、きょろきょろとあたりを見回しました。
今夜は森の仲間たちと一緒に、誰を一番びっくりさせられるか競争する楽しいハロウィンパーティーの夜のはずでした。
でも、途中で見つけたきれいな光るキノコに夢中になっているうちに、いつの間にかみんなとはぐれてしまったのです。
心細さからプーの体が少しだけ小さく縮こまりそうになったその時、ふわりと温かい気配が頭の上から舞い降りてきました。
それは、森で一番おちゃめで、ちょっぴり物知りな小さなカボチャの精霊でした。
カボチャの精霊はプーの頭の上にちょこんと座ると、愛嬌のある顔でニコリと微笑みかけました。
「あらあら、こんなところで迷子かい? でも大丈夫、かわいいおばけちゃん」
その声は、秋の夜の冷たい空気を一瞬でとかしてしまうほど、優しくて温かいものでした。
頭の上に乗ったカボチャの精霊から、ポカポカとした心地よい光が伝わってきて、プーの心細さはスーッと消えていきました。
「うん、ぼく、一人でも頑張ってみるんだ。みんなに追いつけるかな」
プーが少しだけ勇気を出してそう言うと、頭の上のカボチャの精霊は嬉しそうにゆらりと揺れました。
手元で灯るランタンのオレンジ色の炎と、頭の上のカボチャの光が呼吸を合わせるようにピカピカと優しくまたたきます。
それは、暗い夜道を歩くプーにとって、世界で一番頼もしい道しるべとなりました。
森の奥から聞こえてくるフクロウの鳴き声や、カサカサと落ち葉を踏む音も、今のプーにはまるで音楽のように心地よく響きます。
プーはランタンをしっかりと握り直し、お月さまの光が導くほうへ向かって、ふたたび一歩一歩と歩き出しました。
頭の上の新しい相棒とともに、小さなオバケのプーの温かな冒険は、今、静かに幕を開けたのでした。




