ーフェルネスの帰国ー(本編呼び戻された第二王子直後の話)
番外編ーエルドリアにてーの後編のはずでしたが、きつい描写の真ん中にいれるのには、どうかと思って後にしました。
短いので前作と同時公開にします
そして数日後、リチャードは約束通りフェルネスを連れて帰国した。
「立派になった……息災であったか?」
国王の執務室に通されたフェルネスを見て、王太子の目から涙がにじむ。
「国王陛下が危篤だと伺い、皇帝陛下のご命令で様子を見に参りました」
フェルネスの肩を、王太子はぽんと叩いた。
「会わなくてもよい。そなたにとっては、記憶にない相手であろう?」
「まあ……そうですが、皇帝陛下のご命令で……」
と言いかける。
フェルネスにとっての王太子の記憶は、「父王に逆らえず、頭の上がらない頼りない姿」のままだった。
父王が倒れた今、王政を背負うには力不足なのではないかという危惧があった。
リチャードが王太子に手紙を差し出す。
「グランディル帝国皇帝陛下からの親書でございます」
王太子はそれを受け取り、中身を取り出して目を通すと、フェルネスへと渡した。
そこには、
「フェルネスを皇帝側近の任から解く。母国での身分を回復させ、エルドリアとの国交樹立に尽力させよ」
という旨が記されていた。
(やはりな……)
フェルネスは内心でそう思う。
「フェルネス。そなたは今より、私の弟として第二王子に復することを命じる。よいな」
「はい! 皇帝陛下のご命令に従い、母国のため尽くします!」
「それはいい」
王太子は軽く手を振った。
「そなたには、もっと肩の力を抜いて生きてほしいと、兄として願っている。
邪魔者はもういない。あれは生きた屍となった。
何も気にせず、もっと兄弟として親しく接したい」
国政の助けを求められるのだろうとは思っていた。
だが、目の前にいる兄は、かつてのように父王の顔色をうかがう人物ではなかった。
あまりの変化に、フェルネスは戸惑う。
「どうした?」
王太子が問いかける。
「いえ……王太子殿下、ずいぶんと雰囲気が変わられたように思いまして……」
「兄上と呼べ。腹違いで年は離れているが、私とそなたはれっきとした兄弟だ」
「あにうえ……」
その言葉に、一瞬、亡きエリアスの顔が脳裏をよぎる。
かつて「自分のお兄様は一人だけ!」と癇癪を起こした姪の姿が、ふとよみがえった。
「そういえば、ロザーリアの娘はどうしておる?
アルフレッドから、帝国の皇帝の身内に養女に出されたということしか聞いておらぬ」
「はい。帝国にて、息災に暮らしております」
「あちらでは、黒髪が嫌われるということはないのだな?」
王太子の表情は真剣だった。
(黒髪が皇族の証であるのに、嫌われるはずがない)
フェルネスは吹き出しそうになるのを必死でこらえ、真顔で答える。
「まったくございません。実の娘以上にかわいがられ、大切にされております」
だが同時に、帝国の情報がここまで届いていないことに強い驚きを覚えた。
「そうか……それならよかった。クラウスは黒髪というだけで、最初の頃は差別を受けていたからな」
「そうだったのですか?」
「そなたは幼かったから覚えておるまい。あれは実力だけで兵たちに慕われ、騎士団長の地位を得て、ロザーリアの心を射止めたのだ」
久しぶりに再会した兄弟は、夜遅くまで語り合った。
王太子の口から語られる「国を独立させたい」という熱い情熱が、ひしひしと伝わってくる。
クラリスはあと数年で成人する。
自分の役目は、もう終わりに近い。
――ちょうどいい引き際だ。
そう感じた。
「このまま、ここに残りたいと思います。兄上」
その言葉に、王太子の顔いっぱいに笑みが広がった。
フェルネス王子第二王子復活!
フェルネスに第二王子の正装をさせたいがゆえに、兄の王太子とアルフレッドに父王を裏切らせました
まあ、国王もひどい復讐されても仕方がない事をしてきたのですけど・・・




