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ニセモノの悪役令嬢の私は悪魔に洗脳され、王子様に溺愛されます。  作者: かたりべダンロー


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怒りと嫉妬

「気にするな、俺の推測からは何も逸脱してはいない。全て予定通りの展開だ」


 ダヴィ−ドは私を励ます。その言葉で私も少し落ち着きを取り戻す。私は相棒の”洗脳の悪魔”に言葉を返す。


「そうね。王子様がこちらに攻撃を加えれば貴族の称号を剥奪すると言ってくれたわ。彼等もそこまでのリスクは負わないでしょ」


「いや、奴等はそんなことでは退かない。戦いは終わらない。むしろ今からが本番だ」


 ダヴィ−ドは苦言を呈する。


 また同じなの? 殺し合いは終わらないの? 誰かがまた死ぬの?


 苦しくなり、私は両手で胸を押さえる。そんな私の気持ちとは一切関係無しに王様は会を締めに入る。


「皆の者、ご苦労であった。それでは、この会は解散じゃ。ヴァシリーサとオガルコフ家の者は少し残ってくれ。話がある」


 他の家の貴族たちはこの場から立ち去って行く。彼等の足取りが重い。まさに負けた者達が敗走していると言った感じだ。一方、残ったオガルコフ家の面々は馬鹿騒ぎ中だ。貴族間で明暗を分けた状態になっている。


 私は敗れた二人が気に掛かり、彼女達を見る。


 ファシーお嬢様は無言でトボトボと帰っている。相変わらず元気がない様子だ。一方、アゲリーナお嬢様は拳を握り締め、こちらを睨みながら歩を進めている。私に対する殺意が伝わる。


 他家の帰路についている姿を見ていると、王様と王子様がこちらにやって来る。王様は王子様と私をチラリと交互に見ると話を切り出して来た。


「おめでとう、ヴァシリーサ。さすが我が息子カイルが選んだだけのことはある。素晴らしいご婦人だ」


 私は照れてしまい、下を向く。いつの間にか私の隣にはダヴィ−ドではなく、ニセモノの父サーガが居る。サーガは念願の王族入りが果たせるとあってか終始お祭りムードで浮かれている。


 王様はそんな私達を見ながら、淡々と話を進める。


「挙式は急な話なのだが、一ヶ月後に行おうと思う。めでたい席で申し訳ないのだが、我が国も政治的な問題を色々抱えているゆえ、そればかりに気を取られている場合ではないのでな」


 え、一ヶ月後? 確かに早い。私の気持ちの整理が追いつかない。


 そう思ったが、拒否出来るわけもなく、私は笑顔で返す。すると、王様の隣に居た王子様が私に声を掛けて来る。


「君のことは私が護るから、何の心配もしなくていい。万が一、彼等が襲って来た場合に備えて、王族お抱えの騎士達に護衛させよう」


「ありがとうございます、殿下」


「殿下はもうよしてくれ。君と私は婚約をしたのだ。私の事は名前で、カイルと呼んでくれ」


「では、カイル様で」

 

 私は笑顔で応える。王子様の顔を見ていると、悩みや不安が一気に吹き飛んでしまうのだ。


 王子様、いやカイル様も安心した様子で話を続ける。


「挙式前までに君とまた会いたい。時間を取ってくれるかな?」


「はい、もちろんです」


 即座に私は返す。断る理由などない。


「では、私達もこれで失礼するよ。ヴァシリーサ、君と婚約が出来て本当に良かった」


 カイル様は挨拶をすると私に背を向ける。私は彼が帰って行くのを見守っている。王子様が見えなくなるまで私はずっと彼の背中を見ていた。


 ここでふと、あることに気付く。私の隣で片時も離れることがなかったダヴィ−ドの姿が見えないのだ。


 おかしい。いつから居なかったの?


 私は記憶を手繰り寄せ、今までの出来事を振り返る。


 そうだ。王様と王子様が来た辺りから姿が見えなかった。あの時くらいからダヴィ−ドの代わりにサーガが居たのだ。


 護衛の悪魔のことが気になり、辺りを見回す。すると、遠くの方からゆっくりとダヴィ−ドが帰って来る。私は彼に駆け寄り、文句を言い始める。


「ちょっと、どこに行ってたのよ? 護衛のあなたがいなきゃ誰が私を他の悪魔から護るのよ」


「あぁ、それなら心配ない。奴等の所に行って来たからな」


「え、どういうこと?」


 私は首を傾げる。ダヴィ−ドはまた私をバカにするように笑みを浮かべる。


「アイツ等も戦いをやる気満々だったから、こちらから先に仕掛けておいた。宣戦布告ってやつだな」


「ちょっと止めてよ。何でこちらから戦いを仕掛けるような事をするのよ」


 相変わらず私の気持ちを理解しようとしない悪魔に腹を立てる。ダヴィ−ドは私の言葉など気にすることなく、涼しい顔で話を続ける。


「あの二人のお嬢さんはどうあってもアンタを許さないだろう。だから、明日にでもアンタの命を狙いにオガルコフ家の領地に攻め込んで来るはずだ」


「王子様に注意されても? 貴族の称号を剥奪されるんでしょ」


「あぁ。奴等は悪魔が勝手にオガルコフ家を襲ったと言い張るだろう。だから、当家とは何ら一切関係ありませんと」


 そんな嘘、明らかだ。誰にでも分かる。でも、汚い貴族たちなら、嘘ではないと押し通してしまうだろう。例え自分たちが指示して悪魔を仕向けたとしても、我々は知りませんでしたと。それが通用する理不尽な世なのだ。


 私は拳を握り締めながら、語気を強める。


「確かにあなたの言う通りだと思うわ。でも、何で宣戦布告なのよ」


「このままだとオガルコフ家領の町の住民や使用人、騎士達、関係者はみんな殺されてしまう。それが嫌でアンタは王子に断りに行ったんだろ?」


「うん……。そうだけど」


「だから、今から挙式までの間、俺とアルダはオガルコフ家領を離れて、別荘で過ごすから。と、奴等に言って来た」


 私の身体は固まってしまった。

 




 




 

読んで頂きありがとうございます。

読者の皆様には助けられてばかりです。

今後とも宜しくお願いします。

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