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胡蝶の夢 ~帰蝶転生記~  作者: 猫丸太郎
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斎藤と土岐とで

「……そうだ、頼純様」


「……ん? なんだい?」


「その……明智家の方々と、久しぶりに会いたいなと思いまして。宜しいですか?」


「明智……ああ、お前の母方の実家か。……まあいいだろう。ただし、侍女は侍らせておけよ」


「ありがとうございます! それでは!」


 よかった、あっさり許可を貰えた。

 てっきり警戒されるかもしれないと思っていたけど、まあ私なら変なことはしないと信用してくれているのか。

 実際変なことはするつもり無いし。


 さて、明智家の2人は……よかった、まだ大桑の城の中にいるな。


「おーい! 伯父上、十兵衛!」


「ん? この声は……おお、帰蝶様! お久しぶりでございます!」


「ご健在なようでなによりです、帰蝶様」


「はい。2人も元気そうでよかったです」


「しかし……どうですか? この大桑での生活は? 何か不都合はありませんか?」


「大丈夫ですよ。旦那様にはよくして頂いてます」


「おお、旦那様と……そうか、本当に帰蝶様は嫁がれてしまったのか。なんだか寂し……」


「守護様と上手くやれているのならばよいでしょう。帰蝶様が土岐と斎藤の間を取り持てば、美濃も平和になるというものです」


 なんだか光安さんは1人で感慨に耽《ふけ》っているけど、光秀はそんな光安さんを無視して話を進めてきた。

 多分光安さんはこうなると長いんだろうな。まあ気持ちは分かるけど。


「……うん、いつまでも美濃の国内で内紛を続けるわけにはいかない。土岐と斎藤で争うよりも、協調した方が絶対いい……はず」


「自信を持ちなされ、帰蝶様。外敵を抱えている中で内紛を続ける愚は皆分かっております。大殿様も、もう守護様とは戦はしないと申しております故」


「本当!? あの父上が!?」


「ええ。まあ、尾張の織田がどんどん勢力を伸ばしている状況では、流石の大殿様も守護様と争う余裕はないのかと思われますな」


 光安さんが復活して話に入ってきた。

 しかし、織田という外敵の存在が道三を土岐に歩み寄らせる要因になるとは……


「……そっか。じゃあ、父上の方から仕掛けることはないのかな?」


「ええ。……もっとも、守護様は大殿様をどう見ているか分かりませんが」


「……旦那様が……」


 確かに……頼純様はまだ道三を警戒している。

 道三を排除するために動いたとしても不思議じゃない。

 ただ、もしも頼純様の方から仕掛けたとして、道三が黙ってやられることはないだろう。

 私はこの辺の史実に詳しいわけじゃないけど、頼純様じゃ道三には勝てないのは分かる。


 私は頼純様にも死んでほしくはないから……そのためには、なんとかして道三と頼純様の間を取り持たないと。


「……旦那様に父上は殺させないし、父上に旦那様を殺させもしない。絶対に」


「……それが、帰蝶様のお望みですか?」


「うん。私の近しい人は、できれば誰も死なせたくないんだ」


「……分かりました。帰蝶様がそう望むのなら、私もその理想を目指しましょう」


 光秀は丁寧に頭を下げ、私に従う意思を示した。どうやら彼も、私の考えに同調して力を貸してくれるようだ。


「……ありがとう十兵衛。あなたが力を貸してくれるなら有難いよ」


「私の命は、帰蝶様と共にあります。帰蝶様のお力になることこそが、私の使命故に」


 ……やれやれ、まさかあの明智光秀がここまで私に尽くしてくれるとは……きっと帰蝶さんは、光秀にとってそれだけ尽くし甲斐のある人だったんだろうな。


「私も、微力ながらお力添えしますぞ。今は国内で内紛を繰り返す暇はありませんからな」


「光安さんも、ありがとうございます。今の私は斎藤家にはあまり口出しできないから、そっちは明智の面々に任せてもいいですか?」


「はい。叔母上とも連絡を取り合い、大殿様の動向は逐一調べましょう」


「助かるよ。それじゃあ私は……旦那様が父上に喧嘩を売らないように、ちゃんと見張っとかなきゃ」


 道三も頼純様も死なせない。

 2人の性格と野望を知っている以上、それが難しいことなのはよく知っているけど……それでも、死んでほしくないと思うのは仕様がないじゃんか。


 たとえ戦国時代だとしても……せめて、家族の中で殺し合うなんてことはしないで欲しい。

 甘ちゃんだとか言われようとも、それが現代人である私の理想なんだよ!

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