ライくんと逆さ虹の森
「あとはコンさんだけですね」
タキさんがそう言うと、みんなが盛り上がります。
「よーしっ! みんなでコンを探すぞーっ!」
スーくんの掛け声に、「おーっ!」と答えたこえは、ぴったり揃っていました。
「探しながらさー、ライくんがここに来た訳も聞きたいなー」
不意にそんなことを言い出したトイくんに、
「なっ、なんでそんなこと言われなきゃなんねえんだ!」
と抗議したライくんでしたが、
「今まで私たち、なんでここに住み始めたのかを話してたのよ?」
とリコちゃんが言えば、ライくんも話さないわけにはいきません。
「うっ……しょーがねーなー」
ライくんは、いやいやその訳を語り出しました。
「昔はなぁ、俺はアライグマのいっぱい住んでるところにいたんだ。でもなぁ、昔は仲間にも乱暴働いてたんだ。でも俺があんまりにも乱暴すっからよぉ、追放されてな。そんでようやく気付いたんだ。動物相手に乱暴はいけねぇって。でも暴れたくてしょうがなかった。動物相手でなくても、暴れたくなるなら里には帰れねぇ。それで途方に暮れていたらこの森についたんだ。その時、リコの声が聞こえた。ここは誰でも自由に暮らせる森だって歌ってた。だから聞いたんだよ。『ここは本当にそんな森なのか』って」
「そういえばそうだったわね。もちろん、私は『そうよ』って答えたの。『私もここに来たから、こんなに自由に歌えるようになったのよ』って」
リコちゃんがそう言うと、ライくんが気まずそうに笑いました。
初めてでした。
タキさんがそんなライくんの表情を見たのは。
「正直その真偽は分かんなかった。だから住んで確かめようって思ったんだ。そして住んでみたら……リコの言う通りだった。そのことが、無性に嬉しかった……それだけさ、この森に住み続ける理由はよ」
ああ、だからなのか、とタキさんは納得しました。
ライくんが暴れん坊と言われるのに、仲間を傷つけることなく、木や落ち葉の山にだけ乱暴を働くのは、そういう理由があったのでしょう。
「……にしても、コンのやつ、どこ行ったんだよ」
ライくんが忌々しそうに言った、その時。
「ふふ、意外と見つからないものですねぇ」
——コンちゃんの声です。
しかも、かなり近いです。
「こ、コンちゃん?」
「おい、どこにいるんだ!」
「コンちゃーん、どこだーい?」
「コンさん、どこですか?」
「早く出てきてちょうだいよ」
「コン? どこだ?」
「ここですよ、こーこ」
そして、次の瞬間。
いつくっついたのでしょうか、タキさんの体についていた落ち葉が、はらり。
そして。
「わっ!」
「ごめんなさい、今回だけ、ズルをしました。落ち葉に化けてたんですよ」
コンちゃんが突如、現れたのです。
「……次からはいつつめのルールとして、化けるの禁止を盛り込んだほうがよさそうね」
リコちゃんが静かに怒ったような声で言って、
「珍しくずるいぞ、コン!」
スーくんが抗議をし、
「まーまー、コンちゃんも見つかったしー、めでたしめでたしだねー」
みんなが騒ぎ出したせいで収拾がつかなくなったその場を、トイくんが収めます。
「それもそうだな。もう日も暮れてきたし、帰るか」
ライくんが解散を提案し、みんなが賛成します。
そして、みんなで別れて帰っていきました。
かくれんぼの続きは、明日に持ち越しのようですね。




