マイクくんと逆さ虹の森
「あ、相変わらずリコちゃんは綺麗な声だねぇ。ぼ……僕がここに来たのも、ある意味、リコちゃんの声がきっかけだったし」
「おや、そうなんですか?」
今まで3匹がどうしてこの森に住み始めたかを聞いた今、タキさんは他の動物たちがどうしてここに来たのかを知りたくなって、思わず聞き返していました。
「そ、そうだよ。ぼ、僕ね、昔はクマの森に住んでたんだよ。で、でもね、ほら。僕、怖がりだから」
怖がりだから、何なのか。
それは、マイクくんは言いませんでした。
言わなくても、なんとなく分かりました。
「逃げているうちに、ぼ、ぼく……そうだ、根っこ広場にいたの。その時、僕は遠くに来たんだって気付いたの。その時はただ、どこでもいいから、自分らしくいられる場所が欲しかった。そのことだけを、考えてたんだ」
何から逃げていたのか。
それも、マイクくんは言いませんでした。
でも、みんな想像がつきました。
「……それで、ね、途方にくれて歩いてたらね……そう、橋を見つけたの。で、でも、その時からぼろぼろだったし、水がいっぱいだったし、こ、怖かったから、渡らなかったよ」
「今でもお前、あそこが嫌いだもんなっ」
「しょ、しょうがないでしょ! 怖いんだもん!」
スーくんとマイクくんのそんな会話に、思わず他のみんなは笑います。そして笑われたマイクくんは、ふくれっ面をするのでした。
「そ、その時、ドングリ池を見つけたんだ。僕、ドングリみたいな形の池だから、ふと思いついて、ドングリを入れて、お願いしたんだ。自分らしく過ごせるところに住みたいって」
みんながうんうん、とうなづきます。
「そ、そしたらね、リコちゃんの声が聞こえたの。『ここは逆さ虹の森。誰でも自由に暮らせる森。いろんな不思議が詰まった森。みんなおいでよ、この森へ』って」
「……そういえば、最初に作った森の紹介の歌はそれだったわね」
マイクくんとリコちゃんは懐かしそうです。
「そ、その声を聞いてね、だ、誰でも自由に暮らせる森なら、僕も、ここにいていいかなって思ったんだ。そ、それで南の森で暮らし始めた。と、時々いたずらされたりはするけど、怖い橋もあるけど、でも、ここは確かに、自分らしくいられる森だったよ。願いが、叶ったんだ」
「そういやその時からだったなー、ドングリ池が願いを叶えてくれる森だっていわれるようになったのはー」
トイくんが合いの手を入れます。
「そのあと、冗談だろうと思って願い事を言ってみたら、叶っちまったしな。こりゃあ本当のことだったんだと思って驚いたな」
スーくんもそのあとに続けます。
「……こ、この話はこれでおしまい」
マイクくんがそう言って、話を締めくくります。
「ありがとうございます、マイクさん。さ、コンさんとライさんを探しましょう」
「そうね、どこに行ったのかしら」
4匹と1人は辺りを見回しながら探します。
「ら、ライくん、こ、コンちゃん、どこ?」
マイクくんがそう言って落ち葉の山を踏んだ、その時。
「——い、痛ってーよ!」
落ち葉の山から突如、ライくんが飛び出してきました。
「誰だ、俺の尻尾を踏んだのは!」
「ご、ご、ごめん……!」
「ら、ライさん、見つけましたよ」
どうやら、落ち葉の山に隠れていたライくんを、マイクくんがうっかり踏んでしまっていたようです。
「ま、まあ、俺がそれだけ見つからないように上手く隠れてたってことだろ? 今回は許してやるよ。……にしても、こんな形で見つかるとはな」
ライくんはぷんぷん怒りながらも、許してくれました。
タキさんはそこでおや、と思いました。
昨日の歌では暴れん坊だと歌われていたのに、今のところ、口調は荒いとしても、ライくんが本当に暴れているところを見たことがありません。
どうして暴れん坊だなんて言ったのでしょう?
リコちゃんにこそっとそのことを訪ねてみると、リコちゃんはどうやら、落ち葉の山や森の木相手に暴れているところをいつも見るようで、それで暴れん坊だと歌ったのだといいます。




