リコちゃんと逆さ虹の森
「で、みんなは何の話をしてたのかしら?」
「んー? 何でこの森で住み始めたかーって話だよー」
「そうなの? じゃ、私も」
そう言うと、リコちゃんも語り始めました。
「私はね、昔はコマドリばっかりいるところに住んでいたのよ? みんな歌が上手だったわ。でも私は特に歌が大好きでね、いつでもどこでも歌っていたの。でもねえ、あんまりにも歌い続けたからみんなにうるさいって怒られて。だからね、家出したのよ」
家出!
タキさんはびっくりしましたが、リコちゃんは満面の笑みを浮かべています。
「でね、自由に歌ってもいい場所が欲しくて私は旅をした。そして見つけたのがこの森、逆さ虹の森だった」
リコちゃんは幸せそうに笑います。
「最初は不思議な逆さ虹を見つけて、それをもっとよく見たくて来たのね。そうしたら、だーれもいなかったのよ。それもそのはず、私がたどり着いたのは南の森、そしてスーくんやトイくんが住んでいたのは北の森だったもの。それで、誰もいないなら自由に歌える! って思って、ここに住み始めたのよ」
そして、リコちゃんは幸せそうにさえずりました。
「そのあと北の森まで飛んでいって、ようやく2匹にあったのよね」
「そうそう。仲間が増えたのがすっごく嬉しかったなぁ」
「じゃー話も終わったしー、みんなを探そうかー」
「そうですね」
こうして3匹と1人は森の中を散策しました。
「……ねぇ、タキさん」
リコちゃんがタキさんの耳元でさえずります。
「私ね、心の中でこう思ってるの。
——この森は逆さ虹の森。ちょっと変わった動物が集まる、ちょっと変わった場所のある、ちょっと変わった虹のかかる森、ってね」
他のみんなには聞こえないように、小声で、美しい声で、そう言ったのでした。
あちこち探し回りましたが、広い森のこと、すぐには見つかりません。と言うか、今までトントン拍子に3匹が見つかったのが奇跡的だったのです。
「つ、疲れたなぁ……あ、こんなところに岩がある」
歩き疲れたタキさんは、不意に大きな岩を見つけました。
「うーん……こんなところに岩なんてあったかしら?」
不思議そうにリコちゃんが言いましたが、
「……ちょっと一休み」
そう言ってタキさんは近くにあった岩に座り込みます。しかし、その瞬間、
「……わっ!」
タキさんは慌てて立ち上がります。
岩に見えたそれはふわりとして、あったかくて……。
「う、うわぁ!」
……喋り、動きました。
ええ、これは岩ではありませんでした。
「び、びっくりしたぁ……」
そう。それはクマのマイクくんでした。
丸まって岩のふりをしていようという魂胆だったのでしょうが、まさか座られるとは思っていなかったようです。
「見つけましたよ、マイクさん」
「うう、見つかったぁ……」
あまりにもしょんぼりしているので、リコちゃんが明るい歌を歌い、マイクくんを元気付けてあげていました。




