第一章 第12話 初めて魔法を使ってみた結果・・・ その4
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はい、そんなわけでね。
もう、敵とはやらない。
やりたくない。
勝てる気がしない。
つーか死ぬ。
そして、かなみとの約束だけど。
いま、かなみんとこ行って「か~なみちゅわ~ん!」ってどっかの◯パン三世みたいにベッドにダイブしたら、多分、ごく普通に、事も無げに、「キャア」とも言わず、あっさりさっぱり確実に撲殺され、地獄に落ちる事請け合い。
そして、七十年くらい経って、かなみも天珠を全うした後、あの世でもう一度殺されると思う。
あっちは天国で、こっちは地獄で、雲の上から逃げ惑う俺に雷を落とすんだよ。
地獄の亡者である俺は、死んでもすぐに復活して、また雷の的にされるんだよ。
「ちょっとかなみ先輩、カーソル合わせるの下手ですよ! 代わってください!」とか言って、隣にいるナギちゃん(故人)がコントローラー奪って、またもバシバシ落とすんだ。
かなみと違って、軽い雷で牽制しながら徐々に追い詰めて、逃げ道なくなってからマックスパワーのやつを落とすんだよ。あの娘。
でも一番命中率がいいのはきっと瑠璃(故人)だね。
無表情に、一定間隔で、俺の回避行動を先読みして確実にドッカンバッカン当ててきそう。
「目標をセンターに入れて、スイッチ。目標をセンターに入れて、スイッチ。・・・にぃに・・・逃げ方わかりやすい・・・簡単」とか言ってな。
で、ひとしきり俺を雷撃殺した後には、フワフワの大きな翼をはやして白い貫頭衣みたいな布をまとっただけのボバーンなセクシーエンジェル・マコ姉が現れて「ご褒美よ~」とか言ってアイスくれたりするんだぜ?
雲の上でキャッキャウフフって、みんなでアイスタイムだよ。
焼け焦げた俺はそれを地獄の底から恨めしそうに見上げるんですよ。
アイス食べたいよぉ・・・って思いながら。
そんな俺に、ナギちゃんが雲の上からヒョイと顔を出して、
「アイスのフタ、いりますぅ?」
なんて言ってポイっと投げてよこすんだよ。
おお、アイスのフタ・・・。
子供の頃、本体よりもフタについたアイスを舐めるのが好きだった・・・。
・・・って言うヤツいるけど、何なん?
そりゃフタについたアイスも木のヘラみたいなスプーンで小削いで食うけど、絶対アイス本体のほうがイイに決まってるだろアホボケ!
それでもなおフタの方が・・・って言いはるヤツは今すぐそのアイスをドブに捨てろ!
一生フタだけ食ってろ!
でも地獄に落ちて以来、甘いものなんかついぞ食べたことがない・・・懐かしき思い出の・・・エッ◯ル・スーパーカップの・・・フタァ・・・フタでもいいぃぃぃ。
なんて生きてた時の記憶を懐かしみながら、フタ拾い上げたら、最近のスーパーカップはフタにアイスがくっつかないように内側にフィルムがついてるわけ!
フタにアイスなんか、まったくついてないわけ!
それ分かっててフタ投げてよこしたわけ!
ナギちゃん(故人)は!
鬼や!
鬼やで! あんたら!
残酷すぎるやろ!
落ちろ!
みんなまとめて地獄に落ちろぉォォォォ・・・・。
なんて言って、あの娘らが、地獄に来たら来たで、どうせもう一回、ボッコボッコにフクロにされるだろ? な?
普段は怖い地獄の獄卒たちも、ガクブルでその光景を見てるしか無いわけですよ。
助けろ! 赤鬼! 青鬼! 天国のヤカラが地獄の亡者に暴行してんだぞ!
戦えよ! お前ら、天使とか敵だろ?
俺たち亡者の人権を守る義務があるだろうが!
なんで瑠璃にひと睨みされたくらいでビビってんだよっ!
そこ!
マコ姉にクッキー貰って、ヘコヘコなびいてんじゃねぇ!
青鬼のくせに顔赤くして、胸元のぞいてんじゃねぇ!
それは俺のだ!(※違います)
赤鬼も、「ど、どうぞお殴りください」とか言って、金棒貸してんじゃねぇ!
ほら、ナギちゃんが意気揚々と受け取ったじゃねぇか!
なんか素振りが・・・すげぇうまいよ! ナギ天使!!
天使なのに、神スイングだよ!!
やべぇ次の一撃は、きついのがクル-----ッ!
・・・。
・・・・。
・・・・・。
ま、そんなわけだから、かなみのベッドに凸するのは、もう少し時期を見計らうべきと、クールガイ・灰谷真太郎は愚考する次第でありますよ。
今までの一連の妄想自体が愚行の極みという意見にはにべもなく従います。
その5につづきます。